ショッピングセンターの喪服売り場で働くあなた。

たくさんいる従業員とはなかなか打ち解けないけれど、フードコートに来る女子高生と、ゲームセンターで働く若者の多田とは休憩時間に親しくしている。

若い彼らと話すときは、かつての若い自分を思い出して話すあなた。
思い出すことは、かつて幼かった娘2人とショッピングセンターで過ごした日々。成長した娘たちとの今の日々。

かつて慌ただしく過ぎていった日々を、懐かしく思い出させてくれる本だなあ。

主人公を「あなた」という表現で書かれているので、なんだろうという感じで読み進めて終わった感じ。

更に帯に静かな感動とか書かれているから、妙にそれを意識してしまって感動は起きず。

でも読み返すと、ああこれはかつて若かった自分が思っていただろう些細な苦悩とか、
幼い子供の世話にいっぱいいっぱいだった日々を思い出させてくれることの連続だなあと思うと、じーんとくるね。

他2つの短編。家を建てるために展示住宅に一人で泊まる話と、叔父と叔父の友達親子と泊まる話。

読み返すといい本。また読みたい。

2024年5月13日

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読書状況 読み終わった [2024年5月13日]
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両親と弟と車中泊をしながら祖母のお葬式の場所まで向かった。

父は幼少期に家族に恵まれず孤独な日々を過ごしてきたが学力で努力して自立していった。
父の勉強術で兄と弟とかんこは、たくさん勉強して、かんこは私立の中学に入り志望校にも合格できた。

だけど、高校生になって学校についていけなくなったかんこ。
酒を飲むと悪酔いし、脳梗塞で体のマヒが残る母と、怒ると人の内側を言葉でえぐり殴る父。
何度も喧嘩した日々。互いを傷つけながらも必要としている家族。

祖母のお葬式から帰ってきてから、かんこは家に入れず車の中で生活するようになった。

いびつな依存しあう家族。
その違和感をはっきりとは書かない感じがリアル。

2024年5月7日

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読書状況 読み終わった [2024年5月7日]
カテゴリ 2024

認知症のおばあさんの長い人生。

デイサービスのみっちゃんや訪問介護のみっちゃんたちは明るくて優しい。

時々様子を観にくる嫁は、うなぎを食べて長生きしろと言いながら、相続がどうとか言っている。

一人息子の健一郎はなかなか会いにきてくれず、嫁に聞くと2年前に自殺したと何度も教えてくれる。

乱暴だった父、耐えて耐えて死んでいった母、イカサマなパチンコ屋をやっていた兄と、兄の女だった広瀬のばーさん。

貧しい生活のなか、ミシン仕事に集中していた日々。
たったの3歳で死んでしまった、娘のみっちゃんこと、道子。

なんとか書き終えた遺言書と、目の前に広がる花の光景。

面白かった。
男性は先に死んで、残された女性の人生って、なんなんだろう。介護やだ。するのもされるもの。。。人生は果てしなく長いのかなあ。

2024年5月1日

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読書状況 読み終わった [2024年4月30日]
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気がついたら草むらに横たわって手足はあらぬ方向に曲がり、頭からは脳みそが吹きこぼれる状況で、ララは宇宙人に会った。

宇宙人は何度もララの過去に戻って人生をやり直しさせようとする。
それなのにララは、どうしても同じ人生を歩んでしまい、何度目かのやり直し人生の場面で、気づいてしまった。

高校生で出会って恋人になった健吾と過ごしてきた日々。

健吾と一緒に乗っていたバイクで事故に遭い、ララは瀕死の状態。

健吾は宇宙人となりララが死なないように人生をやり直しさせて自分の命を交換することを試みるが、うまくいかない。

ララが、健吾を心から大好きでいたから。
不思議な語り口調の、恋愛小説。

2024年5月3日

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読書状況 読み終わった [2024年4月28日]
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死を経験しない一族の悲しき話。

その一族の祖先は、海からやってきた。
付近で暮らす人々に崇められ、そして軽蔑され、その人はいろんな場所を放浪した。

それぞれの場所で大切な人を見つけ、そして彼らの最期を見届けた。小さな光る蟲のような細かい集まりによって、怪我も病気も治すことができた。

現代になり、一族は人々の怪我や病気を蟲の力で治すことを密かに行うようになる。
普通の人とはかけはなれた生活。
そこで出会った一族と一般人のハーフの人間よんと、女子高生。

ライトノベルみたいな感じ。

2024年5月7日

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読書状況 読み終わった [2024年4月28日]
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お嬢様系の女学院で美術教師として働けることになったのは、
かつて美術界では有名だけど学生たちの作品と自尊心を容赦なく傷つける真壁教授のおかげだった。

甘やかされた少女たちのわがままを聞きながら過ぎていく日々で、
今は亡き卒業生が描いた絵に不思議に惹かれていると、真壁教授の娘は突然現れた。

亡くなった生徒と真壁教授の娘である小波との関係。
次第に小波に惹かれる萩原。真壁教授と小波の妙な関係。

真壁教授がかつて愛した女性、彼女が産んだ娘が今度はほしくなり、妻を追いやり小波を自分だけのものにした。

小波を自分だけのものにするために、真壁教授を殺した萩原。
だけどそれを仕向けたのは、手を下すことのない小波だったのかもしれない。

自分に起きたことは周囲のせいだという思い。
本当は自分自身が周囲をそうさせているのに。

何も知らない男とのおままごと生活の日々から、彼も巻き込んでいく様子。

授無意識でやってのける悪い女は怖いなあ。
病的なものを感じた。

2024年4月28日

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読書状況 読み終わった [2024年4月28日]
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E高校を舞台にショートショート。

いくつもの自分の層を持つ同級生の分身の術。
数学アレルギーの薬を開発した数学教師。
埃が降る日に古い出される感情。

燃える男が燃え尽きると赤ちゃんになってしまうこと。
青葉の青春のお酒と落葉のお酒で混じる記憶。
水の子供を育ていっしょに過ごした夏の日。

運動会でいつまでも高く積み上げられるヤグラ。
自転車がペットのように意志を持ち青春を駆け回ったこと。
教科書の文字を食べる友達の勉強法。

同じ窓を見て勉強をした卒業生たちの同窓会。
頭にお花畑を思い浮かべることで変わった日々。
強靭なバネでバスケ部を導いた日々。

授業中に居眠りしたことで突如学校中を移動する生徒たちを誘導する先生。
面白い花火を仕入れてくる友人が持ってきた、宇宙まで行けるロケット花火。
椅子人間たちのインタビュー。

テニスコートの芝部工事ではなくテニスボールに天然芝をくっつけたテニス部たちの熱意。
物理的にテストの穴を埋めるテストで最高点をとったこと。
亡くなった人の思いで音楽を奏でる楽器たちの演奏。

すぐ読めるショートショートのよさ。
改めて星新一を読みたくなったなあ。

2024年4月21日

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読書状況 読み終わった [2024年4月21日]
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ハルーン国と自治国テルンとマケラ国の戦争によって難民を受け入れるスサ島。
そこで教師として働くアギー先生と孤児の子供たちとの交流。

何人だからとか、そういった国に囚われた結果起きた争いが、子供たちにも影響を見せるなか、
アギー先生や他の先生たちの教育で彼らが力を合わせてお祭りに向けて頑張っていること。

語り継がれる消息不明のテル・ナキという踊り子のこと。

ハルーンにマケラの軍人たちが、アギーとテル・ナキが何らかの関係があるとアギー先生の周りをうろつくようになる。

アギー先生の過去。踊り子として全てを捧げ、踊ることで軍人を鼓舞し、自分も間接的に戦争に加担していたこと。

孤児で踊りの才能があるラキに、自分とは同じ道を歩んで欲しくないという思い。
軍人たちから逃れるために命がけで決行した祭りの夜。

小学生が読んで理解できるかな?
ちょっと難しいかも。

祈りが平和につながるまで、希望を捨てない人々たちの願い。

2024年4月21日

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読書状況 読み終わった [2024年4月17日]
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婦人系の病気を患い、恋人とのセックスをしなくなってからの日々に何も疑問を感じなかったのに
郁也は他の女性との間に子供ができたと告げられた。

ミナシロさんは子供を堕ろすのは嫌だけど、育てるつもりもないので、もらってほしいと言われ
自分が将来妊娠できるのかもわからない体と、田舎にいる両親のことなどが頭にちらつき、揺らいだ気持ち。

無茶な話、、子供をもらう決心をした矢先、やっぱりやめると言われるのは、なんだかストーリー的に展開が見えてしまったなあ。
ミナシロさんって自分勝手、でもそう言う自分勝手な人が、生き残るんだろうな。。。

2024年4月21日

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読書状況 読み終わった [2024年4月17日]
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ウメは貧しい村で産まれ、両親と別れいくつもの山を超えて、山師の喜兵衛と出会った。

喜兵衛は銀を掘る人々をまとめる役で、銀が取れるその村は豊かだった。

銀を掘るためにできた穴、間歩は、ただただ闇だけが広がる空間で、夜目が効くウメすらも恐怖を覚えつつ、銀堀に魅せられた。

男たちに混じりながら間歩を行き来して働くウメ。
自分もいつかは喜兵衛のような山師になると夢見ていたが、体はいつの間にか女として成長し、戸惑っているうちに間歩からも遠ざけされた。

女に暴力を振るう男、ウメをどん底から掬い上げてくれた喜兵衛、ウメを好きだと言った隼人、銀を求め命を削って働く男たち、子を産む女、身を削り働く女たち。

男からの侮辱、傷つき、それでも男を愛し、石銀の村で生きたウメ。

生々しい、そこで生きたたくさんの境遇を持つ人たちの足跡。

直木賞だったのね。
島根に石見銀山っていうのがあるんだね。知らなかった。
そこで暮らしていた人々のことを、思えた。

2024年4月7日

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読書状況 読み終わった [2024年4月7日]
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両親の都合で祖父母の住む島にやってきた小学生だった葉。

慣れない島の言葉や、女であるというだけで男と見えない境界線へと追いやられる違和感に戸惑うなか
皆から敬遠される真以だけが、真っ直ぐに葉を見つめて、自分が正しいということに忠実だった。

真以が葉の光だった。彼女がいたから、島で一人ぼっちにならずに過ごせた日々。

ある日脱獄犯が島に潜んでいるという噂が広がり、真以の住む近くに彼が潜伏していることを知った二人は食事を運び、
そして真以は葉に何も言わずに、脱獄犯と一緒に、島を出てしまった。

どうして真以は葉を置いて、脱獄犯と一緒に島を出たのか。

大人になって、上司のパワハラに向き合う気力もないまま過ぎていく日々を過ごす葉が悩むなか、
偶然真以の居場所を知った葉、再会した彼女が、子供の頃抱えていたこと。

真以の祖母は慰安婦だったことから、島の住民から軽蔑や差別を受けていたこと。
女である前に、真以は葉も、全ての人は性別じゃなくて、ひとりの人間だということ。

最後、パワハラ上司にたいして強い姿勢で反撃した葉が気持ちいね。
友達の愛。女であることは大変なんです。
それでも人間として生きる。

2024年4月7日

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読書状況 読み終わった [2024年4月3日]
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ミヒャエルエンデ短編集。

・本を読むことに夢中になる大人、子供、動物たち。

・魔法の学校での様子。
本当の望む力がある子供たちだけが使える魔法。
自分の本当の望み。
ムークとマーリの兄妹が魔法で出した奇妙な動物のこと。

・両親の言うことを聞きたくないレンヒェンが、魔女に頼んで両親がレンヒェンに逆らうたびに小さくなる魔法によって、二人の大切さを知ったこと。

・威張ってばかりの乱暴なサイに逃げ惑う動物たち。
小さな鳥の知恵のある言葉によって、サイ自身がドウゾウとなってずっとずっとじっとしていた結果。

・気にしない気にしないと言いながら次々を大変なことをやらかすでかい子供。

・島で離れて暮らす兄弟は、兄とは会えるが別れた途端に誰もが彼を忘れてしまい、弟とは会ったことがいつも後にならないとわからない不思議な存在の二人だった。

・スープ鉢とスプーンが揃うことで美味しいスープが溢れてくる魔法の道具をめぐり、二つの国の揉めごとと両国の王子と姫によってハッピーエンドになるまで。

・何のために生きているかを出会う生き物に聞いて回った古びたテディベアとわかったこと。

・ヘルマンが学校をサボって想像と現実の冒険に出たこと。

・居場所のない影たちを引き取り、いつしか影のお芝居をするようになったオフェリアさんの一生。

モモの方が読みやすかったかなあ。
佐々木田鶴子さんの翻訳が一番読みやすかった。
魔法の学校はなんだか奥深い。

2024年4月3日

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読書状況 読み終わった [2024年3月31日]
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両親が残した喫茶店で、朝昼晩をそれぞれ店を営む三姉妹。

朝はモーニングを大学院生の三女が、昼は小さい子供を育てる次女のうどん屋、夜は長女のスナックとなり、常連からは三人屋と呼ばれている。

そこに通う常連さんたちの悩み事。商店街の確執。
三女それぞれの思い。

みんな自分勝手だなと思うところも、人間ってそういうもんだったなと、自分も含めて気付かされたわ。
うどん、食べたいなあ。

2024年4月3日

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読書状況 読み終わった [2024年3月29日]
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浅草にあるカフェ「カラブランカ」で起きる毎日のこと。

カラブランカを営む富子と士郎。
常連の藝者で人間国宝になった澄江とお弟子さんの菊江。
すき焼き屋を営む文造。
医大生になったヒカル。

富子が若く藝者だった頃に出会い、逃げた男との子をお腹に宿し、全てを知りながらも生真面目で寡黙な前科持ちの士郎と結婚したこと。

自分の性別に違和感を覚えながらも、母に理解されない歯痒さと医師になるべく授業をこなすヒカル。

贔屓にしてくれていた旦那さんに捨てらた澄江の過去、借金に悩む文造さんとの今も続く友情。

高校教師との恋愛の末に子供を故郷に残し、藝者として再出発を誓った菊江の迷い。

さまざまな事情を抱える登場人物たち。
どうしようもできない過去も、全部受け止めて、思い出と一緒に生きていく、浅草で暮らす人たち。

浅草っていいよねえ、数回しか行ったことないけど、海外の人だけじゃなく、立派なお寺があってお店がひしめき合って賑わっている様子っていうのには、日本人だって惹かれるよね。

2024年3月21日

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読書状況 読み終わった [2024年3月21日]
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太平洋戦争が終結する4か月前、沖縄の西表島の近くにある鳩間島で起きていたこと。

日本人の父と日系アメリカ人の母との間に生まれ、幼少期をアメリカで過ごした洋海。

母と兄はアメリカに残り、父と帰国して、父は仕事の都合で長崎へ、頼った叔母は空襲で亡くなり、今はたった1人で流れ着いた鳩間島で暮らしている。

牛乳瓶に海の星の砂を集める日々を日課にして過ごしていると、海岸の洞窟に暮らす脱走兵の日本人の岩淵さんと、同じく脱走兵のアメリカ人のボブに出会った。

岩淵さんとボブに、海で獲った魚をわけてあげたり、岩淵さんのおじさんの家から物を届けて、洞窟で暮らす彼らと洋海の交流。

足を怪我した岩淵さんの兄が加わり、このまま終戦を迎えるまで密かに生活できたら、どんなによかったか。

洞窟で見つかった3人の遺体。
そこに置いてあった洋海の日記。

戦争が人をおかしくする。
殺さなければ臆病者。逃げれば非国民。

ネタバレ。ボブはマラリアと赤痢を患い、洋海が訪ねて行った日に、脱走兵の2人を軽蔑し殺意を抱いていた岩淵さんの兄が松葉づえで頭を殴ったことで、亡くなっていた。
岩淵さんの兄が、松葉づえで困惑する岩淵さんを刺し、洋海はもっていた竹槍で兄を殺した。

岩淵さんは1週間後に亡くなり、洋海は3人の遺体を残し、洋海は終戦を迎え、長崎にいる父を看取り、京都に移り住んだ。

それから鳩間島にいた頃の日記を書いて、再び鳩間島に戻り、洞窟に眠る3人の傍に日記を置いてきた。

生き残った16歳だった洋海。長い年月を経て、誰にも知られることのなかった洞窟でのことが知られる。

長くなっちゃったー。

戦争と沖縄のセットの話はつらいよね。
でもこんな悲しい話がたくさん現実に起きていたと思うと、私たちは決してそれを受け止めていかないといけないね。

2024年3月14日

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読書状況 読み終わった [2024年3月13日]
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町の人たちに愛されるモモという少女。
道路掃除夫ベッポと観光案内ジジという友達と、いつも想像力豊かな遊びをしている子供たち。

楽しかった人々の時間が、灰色の男たちによって時間を奪われ、モモは一人っきりになってしまう。

そこに現れたカメのカシオペイアに導かれて、モモはマイスター・ホラがいる空間にたどり着き、灰色の男たちに奪われたみんなの時間を取り戻すために、勇気を出して立ち向かうまで。

現代に十分当てはまる深い話だった。
時間に追われる私たち。
子供が読んでももちろん、大人が読んだって十分楽しめる本だった。読んでよかった。

2024年3月11日

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読書状況 読み終わった [2024年3月11日]
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餅湯という観光地に暮らす高校生たちの青春。

玲は物心ついたときからお土産屋の母と、桜台の豪邸に仕事の合間を縫って帰ってくるもう一人の母がいて、
2つの家を行き来しながら生活していたが、進路のことをどう相談するか悩んでいた。

美大を目指す人、旅館の跡取りにスポーツ筋肉バカな個性豊かな同級生。
餅湯の博物館から土器が盗まれたという事件も続き、犯人探しと、玲の父親の存在や、将来のこと。

青春だった。

2024年3月8日

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読書状況 読み終わった [2024年3月8日]
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紅雲町で和食器とコーヒー豆の小蔵屋を営むお草さん。

一度手放した筈の帯留めをまた手元に戻せることになったと、アンティークショップの海図から連絡が来て、お草さんは京都に向かう用事のついでに東京駅へと向かう。

海図の周辺で、怪しげな犯罪に関わる危ない男の息子であるユージンとの記憶。
土産の食べ物を渡す程度の関係だったが、少年だったユージンが、お草さんの幼くして亡くなった良一と重なった。

大人になったそのユージンが殺されたという話、自分が死んだらと頼まれていたこと、彼の店から二千万を運び、京都に向かう新幹線で出会ったキョウカとジュン。

室橋に追われる2人、キョウカは何者かに刺され、お草さんは残された少年のジュンを、京都に送り届けることになる。

紅雲町でニュースの情報からお草さんが何かに巻き込まれていると感じた、従業員の久美と恋人の一ノ瀬、常連の寺田。

贔屓している取引先に助けてもらいながらも、知らない土地で、自分の勇気づけるお草さん。
紅雲町に帰ろうと思うだけで、力が湧いてくるお草さんと、彼女を守ってくれる味方たちの存在。

ネタバレ。
新幹線の中で身の危険を感じたキョウカは事件を装って自らを刺す。
室橋の取引に使われている二千万を横取りして偽造パスポートを作り、ユージンは自分が死んだように見せかけ先に大阪に渡り、
ジュンが離さなかったキョウカのバッグに仕込まれたGPSを頼りに、迎えにくる。
室橋の異母兄弟たちは、偽造パスポートで自由の身を求めて海外へ。

良かったわ。
悲しい記憶もつらい記憶も、自分を勇気づけてくれる。
一人じゃない。

お草さんシリーズはどれも面白いけど、
おそらくシリーズ初の紅雲町を飛び出してのドキドキする話、面白かった。

この面白さを味わうには最初の方の話から読まないとならないなあ。

シリーズ史上一番だと思った。
そしてまだ最新刊がある楽しみまである。
これだから読書はやめられない。

2024年2月15日

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読書状況 読み終わった [2024年2月15日]
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30年前に何者かによって殺された小学生の少女。
犯人は捕まったが、冤罪を主張したまま裁判中に病死し、事件の真相は謎のまま。

その町で、祖父の農作業を手伝いに来てくれる季節バイトの青年と、小学生の少女との交流。
恋する中学生の少女が母から知ることになった、30年前の事件のこと。
新聞部の高校生の少女が、30年前の事件の真相に迫る。

政治と金が絡んだ人物が起こした事件だっ

最初に出てくる小学生のコトちゃんと、30年前に殺された少女は別物だけど、同一人物みたいな書き方をしていて、見事に引っかかりました。

なんか読みづらいなあと思っていたのは、そのせいだったのかもしれない。

2024年2月13日

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読書状況 読み終わった [2024年2月13日]
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造園業を独立して一人で切り盛りする祐治。

震災が起きて、津波で何もかもを失った街。

それから妻を病気で亡くし、幼かった息子はもう中学生になろうとしている。
再婚相手の知加子との間に出来た新しい命はこの世に生まれる前に流産し、知加子は祐治の元を去っていった。

かつて子供時代に一緒に遊んだ明夫は、震災で妻子を失い、職を転々として病気に体を蝕まれ、密漁に手を出し、自ら命を絶った。

色んなことがあった。失って、再建されていく街。

陰鬱な雰囲気で、ああやだなーやだなーと思いながらもすいすい読んでいた。
人生の苦労と悲しみと、幸せ。

象の皮膚の作者と一緒だったとは!

2024年2月5日

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読書状況 読み終わった [2024年2月1日]
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アトピー故に幼少期からその見た目を非難され続けてきた凜さん。
両親ですらアトピーのことを気合が足りないせいと理解してもらえず、兄弟からもからかわれ育ち、現在凜さんは非正規雇用の書店員として働く日々。

癖の強すぎる書店の社員とパートたち。
入り組む男女関係にちょっとだけ巻き込まれたこと。
震災が起きて、書店の復旧まで、大変だったイベント。
全て肯定してくれるバーチャル彼氏。

凜さん、現実を一生懸命生きてる。

アトピーといえば、昔ディズニーランドでイッツアスモールワールドに並んでいるときだったか、
並びながら一緒に来ている友達としゃべっている男の人が、首筋をずっと掻いていて、赤くかさついた皮膚とか、印象的。アトピーって大変だな。

2024年2月5日

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読書状況 読み終わった [2024年2月1日]
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エッセイ。井上さんの作品は結構読んできたつもりだけど、著者自身については猫を飼っているくらいしか知らなかったので、そうなんだあという感じ。

「あちらにいる鬼」を読んだ後だったので、井上さんのお父さんのこととか、お母さんのことも親しみやすかった(?)なあ。
「荒野」と同じくらいインパクトのある妹さんの名前も知れたし。

へとへとになるくらい仕事をしたあと、頑張って自分で美味しいご飯を作るかどうか、料理が不慣れな夫に任せていまいち(?)なご飯を食べた後のもやもや感、些細だけどわかる。違うところは、私は料理が得意ではないということ。。。

飼っている猫の呼び名が原形をとどめないほど変化するの、すごい共感して、旦那さんの「誰だそれ」のつっこみも面白くて、思わず笑った。

松太郎さん、つぶちゃんの思い出と一緒に長生きしてね。

2024年2月1日

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読書状況 読み終わった [2024年1月29日]
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井上荒野さんの父である井上光晴さんと瀬戸内寂聴さんの関係を書いた話。

女流作家として活動する寂聴さんが地方の講演会で出会ったのが、井上光晴さんだった。
単なる同業者としての初対面の認識から、別れる頃にはこの人と長い関係になるという確信に変わるまで。

嘘つきの夫の言動を冷ややかな目で見ながらも、彼から決して離れることはしなかった妻の存在。

だんだんと関係の終わりが見えそうで見えないことに不安と疲れで、出家をしてからも交友関係をつづけた二人と、彼の妻、そして娘。

わからん。不思議な世界である。それなのにフィクションではないという事実が、すごいねえ。
どこまでも女にだらしない井上光晴さん、しょうがない人だねえ。
それでも愛想つかせずに傍にいることを望んだ女性たち、人間っていうのは、しょうがなくて愛しいねえ。

2024年1月11日

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読書状況 読み終わった [2024年1月11日]
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11の短編。
病気に伏せる男友達言いながらも思いを寄せる彼の不倫相手を妻の目を忍んで会わせるために策略を練る私の悪趣味。

何も知らないのんきな夫との不自由のない生活と、昔の恋人からの懇願する電話に揺れる思い。

お金も自由も不倫相手も、全て持っている大人の女性が、猫との出会いによって更なる幸福を手にしていくまで。

亡くなった姉が幽霊となって妹の前に出てきて、遺品整理の際に知り合いに見られたくないものを先に処分してくれと頼みにきたこと。

オトナだねえ。
終活に限らず、人に見られたくないものは早めに処分、だね。。。

電子書籍じゃなくて紙で読んだんだけど、検索に出てこなかったよ。

2024年1月2日

読書状況 読み終わった [2024年1月2日]
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