Amazonのレビューに書いてあってハッとしたけど、確かにこの小説、今流行りのクラウドの概念を、50年前にして見事に描き出してしまっている。SF作家の想像力というのは本当に恐ろしい。
我々は自分の人生を完全に操作することはできない。「偶然」といったり「運命」といったり、そうしたよくわからないものに翻弄され続けるしかないーーー作品に通底するのはそうしたニヒリズムで、と同時にそれを乗り越えようとした小説だった。
何万光年を反復横跳びするかのような場面転換が次々に繰り返され、ともすれば物語としての力強さを失ってしまいがちだが、強度を失わずに保たれていたのは、それぞれの場面にちりばめられた印象的なイメージと魅力的なフレーズのおかげだろう。訳が本当に良いということでもある。
「単時的な意味において、さようなら」という言葉が妙に気に入った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2020年7月18日
- 読了日 : 2020年7月18日
- 本棚登録日 : 2020年7月18日
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