NASAの火星探査プロジェクト〈アレス3〉に参加した宇宙飛行士のマークは火星で事故に遭い、彼は死んだものと思った仲間たちは地球への帰路についてしまった。NASAともロケットとも交信するすべのない状態から、マークはいかにして生き延びるのか。火星サバイバルSF。映画「オデッセイ」原作。
初っ端からめちゃくちゃハリウッドっぺー!しかも90年代っぺー!ので、映画化されたのも納得。“アメリカ人が理想とするアメリカ人”的なマークのキャラクターと、NASAの面々が地球で繰り広げるジョークの応酬がマジで30年前の映画っぽいのでなんなんだよと思いつつ、ここまでポジティブな小説を読むのも久しぶりだなぁと思った。
マーク本人が「NASAに頼らず一人でなんでも決めてたころが懐かしい」とこぼす場面もある通り、NASAのターンよりマークの一人語りの方がずっと面白く、通信不可能になるたびに喜んでしまった。マークのログは火星でのHow to サバイバルになっていて、それが全然知らないキャンプ知識を語っているユーチューバーの動画を見るような楽しさなのだ。
キャラクターはルイス船長とフライトディレクターのミッチが好きかな。マークと同じく二人ともリスクをとって生存に賭けることができ、他人を信頼し自分の責任をきっちりとれる人物。ルイスみたいなキャラが70年代ディスコのファンだと面白い、って感覚は古臭すぎると思うけど。ヨハンセンが若くて可愛いという理由で男性陣からハラスメントを受けるのも嫌。
そんなわけで、小説としてはノリきれないところもありつつ、空想科学読本としてはとても楽しかった。作中、「火星にくること自体、不必要な危険でしょうが」とルイスが言う通り、そもそも宇宙に行こうなんて思わなければ火星でサバイバルすることだってない。NASAのプロモーションかよ、と鼻白む気持ちもありつつ、やっぱり宇宙飛行士は人類の夢を背負っているのだなぁと思いました。
- 感想投稿日 : 2020年9月14日
- 読了日 : 2020年8月21日
- 本棚登録日 : 2020年9月14日
みんなの感想をみる