- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000022316
感想・レビュー・書評
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伊藤野枝の伝記。
驚いた。タイトルもだけど、伊藤野枝という人の思想にも行動にもだけど、
それよりまず、伝記って、今はこんな語り口でもアリなんですね。岩波書からでてて、うん、すごい。一気に引き込まれて読みました。
1895年に生まれ、それまでの結婚制度や社会道徳に、女性が(自分が)犠牲になることに我慢などせず、自由に奔放に生きた。平塚らいてふ『青鞜』に参加し、編集・発行人にもなる。
自身は親たちが勧めた結婚から逃げ出し(一度は結婚を承諾して、学費を出してもらったのに)、高等学校の教師だった辻潤と結婚し(おしかけて無理やりだったし、辻潤は辞職し、そのまま定職に就くことはなく、野枝が青鞜で働いて家計を支えた)、それなのに辻潤の浮気もあって、妻帯者だった大杉栄と恋愛関係になる。大杉と雑誌『文明批判』や『労働運動』を創刊。辻とは2人、大杉とは5人の子どもをもうけ、極貧ながらも、「なんとかなる」と、頼れる人とみると無心し、助けてもらい、頼られると自分たちのなけなしの金も渡してあげるような太っ腹な夫婦だった。
しかし1923年、関東大震災の後すぐ、大杉と大杉の甥っ子とともに甘粕正彦ひきいる憲兵隊に拘束され、3人とも虐殺された。野枝・28歳だった。
今現在においても、野枝の故郷・福岡の今宿では、野枝は偉人ではなく、淫乱女呼ばわり、墓には祟りがあるとささやかれている。自分の心のままに生きた野枝。
過去の女性の立場を、今現在のものに変えてゆくには、これぐらいパワーのある人がいなければダメだったんだろうと思う。 -
2016.7.29「本嫁の会」で紹介。
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ターゲット層に向けた意図的なものなのでしょうが、文体がどうしても受け付けず読むのを断念。
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小説エッセイではよくあるけれど評伝では珍しい文体 読みやすい
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大杉栄とその甥とともに、まったく理不尽にも憲兵隊に虐殺された伊藤野枝(享年28歳)。その疾風怒濤の短い人生を、独特の語り口で、勢いよく描き切る問題作。著者は1979年生まれ。まだ、30代。でも、野枝は30歳を迎えることができなかった。どう受け止めればいいのだろう。
伊藤が殺されたのは1923年。
今から、まだ100年も経ってない。それが現実。 -
すばらしい! 「権力にたてついた人の伝記」という先入観をきれいに払拭してくれる、教条臭のいっさいない痛快な記述だ。彼女の自由な生きざまをポップな文体でヴィヴィッドに描き出している。
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伊藤野枝という人… 読むまではもっと過激で友達になりたくない女だと思っていたのだが、意外と共感できる部分もあった。
人間は機械(ミシンらしい)であれ。
それぞれの部品が独自の動きをしているが、おのおの連絡をとりあって、歯車を噛み合わせると単体ではあり得なかったような動きをするようになる… ナルホド。 -
こんな書き方があったとは...アナキズムの理想の伝記。永年遣る瀬無い結末に欝々としてきたけれど、微笑む写真に勇気づけられました。いざとなったら、なんでもできる。やちまいな。
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伊藤野枝は、日本の婦人解放運動家、無政府主義者、作家で、関東大震災後の混乱に乗じた憲兵隊に、同棲していた大杉栄とともに虐殺される(いわゆる『甘粕事件』)。その伊藤野枝の生涯を当人に対する熱い共感で綴った評伝。自己の欲望のままに生きる野枝の姿がまぶしいほどにたくましく描かれている。周囲の前近代的な女性観に対し真っ向から対抗する伊藤野枝は今では「自由恋愛の神様」とあがめる女学生もいるらしいが、その出生地では未だに野枝の話をしたがらないという。思うに、種を保存するために人間は子供を育てるシステムとして家庭や社会を作り出し、それを破壊するような者は厳しく排斥しようとする。野枝は100年早く生まれすぎたのだろう。甘粕事件で虐殺された野枝の遺体は肋骨が何本も折れており、激しい暴行を加えられたあとがあったという。その上、畳表で巻かれ、古井戸に投げ捨てられていた。野枝28歳。巻き添えを食って殺された大杉の甥はわずか6歳だった。野枝の情熱は一般の常識人からは狂気と見えなくはないが、これを排除した時の権力(憲兵隊)の狂気こそ、受け入れることがあってはならない狂気だと思う。