- Amazon.co.jp ・本 (53ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000094351
作品紹介・あらすじ
広島に落とされた原爆によって家族を失った悲しみ、戦争への怒り、そして平和への願いから生まれた不朽の名作『はだしのゲン』。いかにしてヒロシマの記憶を未来の世代へと語りつぐのか?著者が積年の思いを伝える。
感想・レビュー・書評
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この本は非常に薄いですが、書かれている内容はやはり非常に重い。『はだしのゲン』は小学校の図書室にありましたが、怖くて読めませんでした(今なら読めます)。そういう記憶のある人は多いと思います。
中沢さんのところに当時の親たちから、子どもが怖がるからと”クレーム”がたくさん届いたそうです。返事を出したそうですがその中で、子どもたちは原爆の怖さを正直に感じとってくれたと、子どもたちを褒めました。
若い人たちは戦争とか原爆とか考えたくないんじゃないかと、世間は思っているみたいだけど、実は大人のほうがそういう傾向があると中沢さんも感じていました。つまりちゃんと伝えていない。広島に住んでいる人たちさえ、知識としてすら知らない。
本書の最後に若い人たちへのメッセージが語られますが、ご本人もいつ原爆症が現れるか、死への恐怖とともに生きてこられたので、まるで遺言のようです。今となっては、本当にそうなってしまいましたが……。
中沢さんは漫画とは、本来楽しいものだ、面白いものだとおっしゃっています。そんな彼がなぜ原爆をテーマに漫画を描くことになったのか?そのきっかけが彼にとって大変衝撃だったのは、その後の姿勢が一貫していることでもわかります。怒り、悔しさ。しかし中沢さんの凄いところは、その感情に流されることがなかったところです。マイナスの感情の中で、何もする気が起きず終わってしまうかもしれません。何かに依存して人生を駄目にしてしまうかもしれない。中沢さんを突き動かしていたものは何だったんでしょうか?「伝えることは難しい」とおっしゃっています。それでも、「しつこく、しつこく伝え続ける」 -
「はだしのゲン」の作者がゲンを描くに至った思いを綴っている。
戦争や原爆の事実をしっかりと伝えて行かなくては・・・。 -
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ゲンはぼく自身なんです。
『はだしのゲン』では徹底的に描いてやろうと思ったんです。ぼくの目に焼き付いている原爆の姿を表現してやるぞ、と。『はだしのゲン』のなかでは、戦争で、原爆で人間がどういうふうになるかというところを徹底的に描こうと思ったんです。
しかし、読者から「気持ちが悪い」という声がありました。ぼくは本当は心外なんだけれども、読んでくれなかったら意味がない、どうにもならないと思って、かなり表現を緩めて、極力残酷さを薄めようという気になりました。
だから『はだしのゲン』で表現されている状態というのは。それでも薄められた状態なのです。ほんとうはもっともっと・・・。
被爆者は必ず、表現されたものを見ても「あんなもんじゃありませんよ」といいます。それと同じです。
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小学生のとき、『はだしのゲン』を読んで、「死ぬ」ということの恐ろしさを思い、なんだか分からないけれどもとても怖くて怖くて、その怖さからどうしても逃れられなかった記憶がある。
『はだしのゲン』は確実に僕のなかでトラウマになった。
映画やフィクションでのホラーではなくて、60年前の「ヒロシマ」で実際にあった出来事なのだ。
『ゲン』に描かれているあのトラウマになる描写は、事実よりももっともっと薄められたもの。
戦争って、そういうことなんだよ。決してカッコいいものでもないし、美化されるものでもない。
人間の肌が溶け、放射能で血を吐き苦しみ、街は死体と蝿で溢れかえる、そういうものなんだ。
大人になって読み返すたび、ゲンのバイタリティや、正しいと思ったことを貫くことの大切さというようなことも学ばされる。
去年の夏、ヒロシマに行った。
今は大都会だが、あの川の底には今でも骨が埋まっているという。中沢さんは、今の都会を見ても、やはり60年前の「何もなかった光景」「川を死体が行き来していた様子」が頭から離れないという。
平和の大切さを強く心に留めたい。
戦争を知っている世代の人よ!戦争に向かおうとしている現代に対してもっと語ってください!
そして、永遠の平和を祈りつつ、現代の我々にできる「供養」とは幸せな今を生きること、それをつくっていくよう努力することではないだろうか。
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読後に作者の中沢啓二さんが亡くなりました。
あらためて「はだしのゲン」を後世に伝えていかなくては、と思いました。 -
「はだしのゲン」の作者がゲンを描くに至った思いを綴っている。
戦争や原爆の事実をしっかりと伝えて行かなくては・・・。 -
はだしのゲンの作者、中沢啓治の言葉。
体験者として伝えたい、知らせたい、そして二度とおきて欲しくないという強い思いが、穏やかな口調で語られる。
テニアン(エノラ・ゲイの出発地)の高校生が広島に来て、自分たちの住む場所からあんなものが飛んでいったなんてとショックを受けていた(という報道を見た)というエピソードが印象に残った。
先日見たドキュメンタリー映画で、沖縄の人が同じことを言っていた。自分たちの島からイラクへ爆弾を落としにいく飛行機が出発していくのをやめさせたいと。
認識するのが容易な被害さえも忘れがちな社会では、間接的な加害者になることはもっとたやすい。
うかうか加害者になるのも被害者になるのも嫌だから、まずは知るところから始めないと。