経済成長がすべてか?――デモクラシーが人文学を必要とする理由

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000227933

感想・レビュー・書評

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  • ヒューマニティーズにおける重要な視点が書かれていた。

  •  本書ではデモクラシー(民主主義)における人文学と芸術の必要性が説得的な仕方で論じられている。平田オリザの主張にも通じるところがある。ただ、平田が人文学や芸術の必要性を現在の資本主義経済システムの中でも利益(ベネフィット)があるという仕方で提示するのに対して、ヌスバウムは必ずしもそうした仕方で人文学や芸術の経済的価値(プロフィット)を強調することはない。少なくとも本書の原題が"Not for Profit"であるように、ヌスバウムは経済的な利益(プロフィット)ではないものについて論じているのであり、人文学と芸術を学ぶことによって涵養される批判的思考や共感の能力ないし想像力がデモクラシーにとって必要不可欠なものであるということをさまざまな事例に基いて論じているのである。

     本書は高等教育だけについて書かれたものではないが、大学とは何か、その役割とは何かということについて考える大学論についての本としても読むことができるだろう。しばしば引用されるタゴールの『ナショナリズム』が日本での講演をもとに書かれたものであることや、宮?駿監督についての言及を除けば、日本について直接的に言及されていることは(思い出せる限りでは)ないが、科学技術の発展に直接寄与しイノベーションの創出につながるような教育が大々的に推進され、職業に直結する職業準備教育、職業前教育がもてはやされる一方で、文系学部廃止論が大きく問題になるような現在の日本にあっても示唆を受けるところが大きい。

     後輩から薦められたので読んだ。

    20170525追記
    紀伊國屋書店梅田本店にて2017年5月25日に購入。

  • 心理学の内容が多く、興味深かったです。

著者プロフィール

(Martha C. Nussbaum)
1947年生まれ。ハーヴァード大学博士(Ph. D)。ハーヴァード大学、ブラウン大学を経て、現在、シカゴ大学教授(Ernst Freund Distinguished Service Professor of Law and Ethics)。1986年から世界開発経済研究所(WIDER)のリサーチアドヴァイザー。2004年に発足した「人間開発と可能力アプローチ学会」(Human Development and Capability Association)の第二代会長(2006-2008年)。
主な著書に、The Fragility of Goodness: Luck and Ethics in Greek Tragedy and Philosophy(Cambridge: Cambridge University Press, 1986),Love’s Knowledge: Essays on Philosophy and Literature(Oxford: OxfordUniversity Press, 1990),The Therapy of Desire: Theory and Practice inHellenistic Ethics(Princeton, NJ: Princeton University Press, 1994),Upheavals of Thought: The Intelligence of Emotions(Cambridge: CambridgeUniversity Press, 2001),Philosophical Interventions: Reviews 1986-2011(Oxford: Oxford University Press, 2012)、ほか多数。

「2012年 『正義のフロンティア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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