- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000248334
作品紹介・あらすじ
俳句という新興の文芸ジャンルを世に広めた正岡子規は、短歌革新運動に取り組んだ竹ノ里人という歌人であり、獺祭書屋主人の名で多大な業績を残した俳諧研究家でもあった。多方面にわたり足跡を残したその生涯を、子規周辺の人物たちの動向をも含めて、総合的に叙述する。俳文学研究の第一人者による決定版ともいうべき評伝。
感想・レビュー・書評
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世の人は四国猿【しこくざる】とぞ笑ふなる四国の猿の子猿ぞわれは
正岡子規
正岡子規没後120年。近代文学史に名を刻む子規は、結核ののち脊椎カリエスを発症し、30代半ばで没した。冒頭の歌からは挑発的な青年像が浮かぶが、その挑発力こそ、時代に先んじた子規の持ち味なのだろう。
四国松山生まれ。上京後の旧制一高では野球に夢中になり、夏目漱石らと交友した。哲学を学ぶかたわら、俳句や小説を書き、日清戦争では新聞「日本」の記者として従軍。頭角を現すが、帰国後病臥の生活が始まった。
どの時期に着目しても、多彩な交友関係が興味深い。近刊の復本一郎による評伝は、膨大な参考文献から交友関係を丁寧に拾い上げ、明治文学人名事典のおもむきもある。
たとえば、島崎藤村とは一度だけ会ったが、波長が合わなかったこと。夫婦げんかの絶えない夏目漱石の妻に、寺田寅彦を通してさりげなくアドバイスをしたことなど、それぞれのエピソードに人間味が感じられる。
病床の子規は、粘土で自分の像を作った。
・わが心世にしのこらばあら金のこの土くれのほとりにかあらむ
「あら金の」は「土」にかかる枕詞【まくらことば】。私の詩精神が世に残るとしたら、この粘土像のそばだろうか、と軽く歌っているが、死に対する挑発とも読めるだろうか。
巻末には、子規の看病に明け暮れた妹・律へのねぎらいの言葉が書かれている。そこで筆をおいた著者の優しさに、感じ入る。
(2022年5月1日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4100円と良いお値段なのでとりあえず公共図書館でリクエストして読みました。3回ほど繰り返し読んで、結局買いました。
復本一郎先生の子規に関する著作の集大成これにあり。これまで書かれたネタについては概ね網羅していると思います。その分1項目は短め(そういう風に書かれたそうです)ではありますが、掘り下げたい場合は他著を読めば回収できるんじゃないかと。
巻末の索引も非常にありがたかったです。