- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001142006
作品紹介・あらすじ
ここは野菜と果物たちの暮らす国。玉ねぎ坊やのチポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまったお父さんを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、わがままなレモン大公やトマト騎士に立ちむかいます。痛快な冒険物語。小学5・6年以上。
感想・レビュー・書評
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小学校に入学して間もない頃に『チポリーノの冒険』の歌を習った。
♪かぶこさん、いちごさん、さくらんぼ坊や、ぶどう親方、にらやまにらきちどん!
と仲間の名前を呼び連ねるところが楽しくて、この歌は大好きだった。そして凡そ三十年の時を経て再会!物語は知らなかったので初めましてでもあるが、なんだか文通相手に初めて会ったときのよう。ひとり出てくるたびに「おお~」と拍手で迎えてなぜか無性に泣きたいような気持ちに。年か。
・かぶこさん→なんとなく大きなおばさんをイメージしていたが、呼び名は「カブコちゃん」で、チポリーノと並んでキャッキャと笑う小さい女の子だった。いちごさんも「イチゴちゃん」でお城のメイドさん。
・にらやまにらきちどん→最もインパクトのあったこの名前は、今回読んだ新訳版では「ネギモト・ネギゾーだんな」に変わっていた。
チポリーノは賢く勇気があって魅力的だし、歌には登場しないモグラおばさんや蜘蛛のクモヨタも心意気が良い。そして悪者たちの描きかたは皮肉が効いている。野菜たっぷりミネストローネが食べたくなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ファンタジー、ユーモア、アイロニーで味付けすれば、どんなお話もたちまち愉快になる。
所々に散りばめられたメッセージ、皮肉が光ります。1950年に書かれたお話とは。
チポリーノの機転や行動に救われる野菜たち。色褪せない魅力的なお話です。 -
この物語は、杉浦明平の訳による岩波少年文庫・旧版(1956年に一刷)の『チポリーノの冒険』は8月に読んだのだが、関口英子の訳による新版(2010年に一刷)も読んでみたくて図書館で借りてきた。さし絵は新旧とも、(原著のイタリア語版ではなく)ロシア語版から採られた同じもの(画家の名は、旧版ではB.スチェエーヴァ、新版ではヴラジミール・スチェーエフと、やや表記が違う)。
新版の訳者あとがきによると、旧版の杉浦訳は、原著の初版(Il romanzo di Cipollino チポリーノの物語、1951年刊)にもとづいて訳されていて、新版は、原著の改訂版(Le avventure di Cipollino チポリーノの冒険、1957年刊)にしたがって訳しなおしたものだという。
関口訳を読んだら、登場人物(登場野菜?)の名などに旧版とやや異同があるようで、気になって、また杉浦訳も借りてきて、ところどころめくっては見比べてみた。
外形的な違いは、旧版の巻頭に「「チポリーノが、日本の子どもさんたちにごあいさつ」という(おそらく原著者に書き送ってもらったのであろう)小文が付されていること、旧版では29章+エピローグという形式になっていたものが、新版ではエピローグではなく30章になっていること、旧版には、「三人のうた」と「チポリーノのうた(楽譜)」が付いていること。
登場野菜の名では、私のアタマで鳴りひびいいていた「チポリーノのうた」でも出てくる「ニラ山ニラ吉どん」が、新版では「ネギモト・ネギゾーだんな」になっていることにまず気づく。「ニラ」と「ネギ」は日本語で指すものとしては、形状も風味も異なるが、イタリア語では、もしかして同じことばで両方指すのだろうか?と思い、図書館にあった小さい「日伊英 伊日英」の辞書を引いてみた。
それによると日→伊→英で引くと、
韮→erba cipollina →leek
葱→porro→leek
となっていた。erbaは「草」の意で、玉葱cipollaであることから推測がつくように、字義通りにいけば"草葱"のような名である。そして英語ではどちらも「leek」。
これを伊→日で引くと、
porro→ポロネギ(地中海原産のネギ)が出てきた。「erba cipollina 」はあいにく見出し語になかった。
それで「ポロネギ」を別の辞書で引いてみると、「→リーキに同じ」となっている。
リーキ(leek)→ユリ科の二年生葉菜。ヨーロッパで古くから栽培され、日本には明治以降に導入。洋冬葱と称し、葉鞘部を軟白して食用とする。ニラネギ。ポロネギ。
ニラネギ!
これが、ニラ山ニラ吉どんになり、ネギモト・ネギゾーだんなになったゆえんか?そもそも、原著で、「ニラ山ニラ吉どん」=「ネギモト・ネギゾーだんな」は、なんと表記されているのだろう??
「ニラ山ニラ吉どん(旧版)」と「ネギモト・ネギゾーだんな(新版)」のような例は、他にもいくつかあって、著者が改訂版でもしや野菜を変えたのか(?)、まるで違う野菜になってるのもある。私が気づいたのは、
「コケモモさん(旧版)」と「ブルーベリーさん(新版)」
「アメリカニンジン先生(旧版)」と「パセリ卿(新版)」
「アザミ博士(旧版)」と「アーティーチョーク先生(新版)
「朝鮮アザミ(旧版)」と「アーティーチョーク(新版)」
コケモモのほうは、辞書を引いてみると、「ツツジ科の常緑小低木」で「紅色の液果を結ぶ」とあり、そこからすると、いわゆる「ブルーベリー」とは違う気もするが、同じ辞書でブルーベリーを引くと、「北米原産のツツジ科コケモモ属の低木約20種の総称」とあるので、これはイタリア語になると似たような表記なのかもしれないと思える。
そして、「アーティーチョーク」も辞書を引いてみると、これは「キク科チョウセンアザミ属の多年草」で、和名が「朝鮮薊」というらしい。アザミとアーティーチョークも印象が違うと思っていたが、アーティーチョークは「若いつぼみ」を食べるというので、花を咲かせればアザミなのだろう。
しかし、ニンジンとパセリは、またえらい違うでと思い(役柄は同じ、サクランボ坊やの家庭教師)、私なりに推測してみたのは、アメリカニンジン先生(旧版)とは別に、話のなかで「ニンジン探偵(旧版)」=「探偵ミスター・キャロット(新版)」が出てくるので、初版を読みなおした著者が、紛らわしくないように、アメリカニンジン先生のほうを、別の野菜の「パセリ卿」に変えたのか?ということ(あくまで私の推測)。
そんなこんなの異同がちょっと気になりつつも、やはり新訳でも『チポリーノの冒険』はおもしろかった(現在、流通しているのはこちらの版である)。
新版を読んでいて印象に残ったセリフのひとつは、両親がレモン大公の動物園のおりに入れられてしまっているクマと知りあったチポリーノが、自由ってなんのことかよく分からないというクマに、こう言うところ。
▼「自由というのはね、だれにも支配されないってことなんだ」(p.217)
(ちなみにこのセリフは、旧版では「自由とは、主人をもたないことです」(p.213)となっている。)
クマはこれを聞いて、「でも、レモン大公は、悪い支配者じゃないと思うよ。(略)父さんも母さんも、好きなだけごはんを食べさせてもらってるし、おりのまえを通る人間たちをながめて、けっこう楽しんでるんだって。レモン大公は、やさしいところがあるんだ。父さんたちが退屈しないように、大勢の人間たちをながめられる場所においてくれたんだ。(略)」(p.217)と語る。
支配者にも多少はいいところがあるんだ、有り難いことだ、という類のこういうセリフをさらーっと書いてしまうところに、著者のジャンニ・ロダーリの市井観察のするどさを感じる。
もうちょっとロダーリの本を読んでみたくて、『ファンタジーの文法―物語創作法入門』を借りてきてみた。
(9/3了)
※「ニラ」と「ネギ」のことや、「アメリカニンジン」と「パセリ」のことなど、イタリア語もしくはロダーリ作品に詳しい方がおられたら、おしえてください!! -
チポリーノ、大好き♪野菜が活躍するのがそれだけでおもろいですw キャラクターが個性的だったり、うまい描き方になると、映画でも本でも、とっても魅力的になります。
こういうシリアスな風刺は大好きですね。イタリア独特の感覚がなぜか私には合う。残酷な場面に、ユーモアと冒険心の味つけですらすら読めちゃいます。翻訳と挿絵の力も、この本の魅力にずいぶん貢献してますね。挿絵の表情が素晴らしい~児童文学の楽しさが詰まったオススメの一冊です!-
杉浦明平訳で読んでから随分になるので、新しい関口英子訳でも馴染むかな?
「挿絵の表情が素晴らしい」
ヴラジーミル・スチェーエフって日本では紹...杉浦明平訳で読んでから随分になるので、新しい関口英子訳でも馴染むかな?
「挿絵の表情が素晴らしい」
ヴラジーミル・スチェーエフって日本では紹介されてない感じですよね。他にもありそうなのに、、、ロシア人だからかな?2012/05/08
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子どもの頃から大好きな話。新訳が出てたのでついつい手にとってしまった。
野菜と果物の可愛らしいお話、かと思いきやかなりシビアなストーリー。でも子供向けにワクワクする展開や、楽しい言葉遊び(ナイス翻訳!)がふんだんにあって飽きさせない。
ちゃんと子供向けだけど、子供だましじゃない。骨太の文章に、ユーモラスな挿絵がいいアクセントになっている。 -
「ここは野菜とくだものたちのクラス国。玉ねぎ一家の長男チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救い出そうと大活躍します。敵は、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士。語りの名手ロダーリの描いた、明るくゆかいな冒険物語。」
(岩波文庫創刊70周年特設サイト テーマ「冒険してる?」より) -
「ファンタジーの文法」とともに
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野菜と果物たちの暮らす国。玉ねぎ坊やのチポリーノが仲間たちと力をあわせてレモン大公やトマト騎士と戦う。全編通してユニークな雰囲気が漂うのは野菜や果物だからかな。逆境にも明るく身軽に立ち向かいしれっと愉快に成し遂げてしまうのはチポリーノの勇敢さと前向きさのおかげだな。
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支配者側のトマト騎士やレモン大公のわがままで横暴な振る舞いによって苦しめられている、庶民側の野菜や果物たち。玉ねぎ坊やのチポリーノが勇気を持って立ち向かい、仲間と協力して革命を起こします。
モグラおばさんや、クモヨタが人としての(?)心の持ちようを教えてくれます。
皮肉も効いています。