路上のストライカー (STAMP BOOKS)

  • 岩波書店
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001164046

作品紹介・あらすじ

デオは年のはなれた兄のイノセントとともに、故郷ジンバブエでの虐殺を生きのび、南アフリカを目指す。ところが苦難の果てに待っていたのは、外国人である自分たちに向けられる憎しみとおそれだった。過酷な運命に翻弄されながらも、デオはサッカーで人生を切り開いていく。

感想・レビュー・書評

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  • 先輩司書さんにお勧めされたSTAMP BOOKSシリーズ。

    その中でもこの本は、心を揺さぶられました。
    さくまゆみこさんの翻訳のおかげで、こうしてアフリカの現状を知ることができるのは幸せだと思います。

    日本人にとっては想像を絶するような過酷なことばかり起こりますが、とにかく先へ進むしかない、といった展開にハラハラしながらも読むのを止められませんでした。障害者の兄イノセントと主人公デオの関係も、傍から見たらデオがイノセントの面倒を見ていることになるのでしょうが、デオにとってもイノセントはなくてはならない存在だったのだということが、イノセントがいなくなってからの場面で強く伝わります。

    世界には、どれだけ過酷な生活を強いられている人たちがいるのでしょうか。
    また、外国人を憎む気持ちは、日本人の一部の人にもある感情だと思います。
    今はそれほど大きくなくても、この先日本経済や治安がもっと悪化すると、大きな問題が起こるかもしれません。

    読書感想文コンクール高校の部の課題図書だったということですが、10代のうちからこういった問題を知るきっかけとして読んでもらいたいと思います。

  • ホームレス・ワールドカップなんて知らなかった。サッカーというスポーツの本質があるのではないか。

  • 外国人憎悪だったり貧困だったりといった内容、とても深く考えさせられました。
    一度は麻薬や自分の弱みに溺れたデオが、大好きなサッカーで人生を切り開いていく姿がとても印象的でした。

  • 突然やって来た兵隊に村を滅ぼされたデオは、兄のイノセントと共に南アフリカを目指す。トラックの荷台に隠れ、国境の川を歩いて渡り、野獣のいる自然公園を駆け抜けて辿り着いた南アフリカで待っていたのは、外国人に対する憎しみの眼差しだった。

    ここ数年、難民や移民をテーマにした物語をよく読んでいます。そこには想像を絶する状況が書かれています。死と隣り合わせの行程の先に辿り着いた新天地。そこでめでたしめでたしとはならないのですね。
    ゼノフォビアという言葉があると知りました。「外国人憎悪」と訳された言葉が表わすものは悲壮なものです。南アフリカでは2008年に外国人への襲撃が行なわれました。そこで殺された人は60人以上だったそうです。
    物語の中でもこの暴動が描かれ、そこでデオは兄のイノセントを喪ってしまいます。

    イノセントは出生時の事故により「普通」ではなくなってしまう。デオはそんなイノセントを守るのが自分の役割だと思う。でもその関係は一方的なものではなく、デオもまたイノセントに守られていた。だからイノセントを喪ったデオは、今までのどんなことよりも深いキズを負ってしまう。
    そんなデオを救ったのがサッカーだった。ホームレスによってチーム編成されたストリートサッカーのチームにデオは誘われる。
    故郷を家族を居場所をそして兄を、何もかもを奪い取られたデオはサッカーによって、仲間を居場所をそして自分自身を得ることになる。

    遠い国の出来事かもしれない。でも決して異世界の話ではなく地続きのこの世界で起こっている出来事なのです。翻訳小説はそんな遠い国の出来事を眼前に差し出してくれます。そのことによって、自分とは関係のない話ではないことを伝えてくれるのです。それが物語の持つ力なのでしょう。

  • 「外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック」の「1. 外国のくらし」で紹介されていた10冊のうちの1冊。

  • デオのたどってきた道・・・ハードでつらい。南アフリカと言えば、アパルトヘイト政策しか知らないでいました。今回、この本を読んだきっかけで、政治状況や歴史経緯など調べたのですが。今現在、こんなに混乱しているのですね。ゼノフォビア(外国人憎悪)、日本の最近のヘイトスピーチにも通じると思います。

  • アフリカが舞台となった小説は初めて読んだ!
    2008年にアフリカで、南アフリカで起こった外国人への襲撃を知らなかった。
    南アフリカのチームは確かにどのチームよりも精神的に強いんだろうな。経験していることが他の国と違いすぎる。
    21世紀はアフリカの世紀
    この言葉を強く強く戒めたい 2016.4.7

  • 登録番号:11177 分類番号:933.7ウ
    [2014年度 本校読書感想文指定推薦図書]

  • 原題 『Now is the Time for Running』 2009年

    ジンバブエのグツに暮らす少年デオはサッカー好き。
    ある日、仲間とサッカーをしていると、大統領の兵隊たちがやってきて、大統領支持をしていない村だといういいがかりをつけ、乱暴・虐殺をはたらく。
    それによって母マアイと祖父ポットンを失ったデオは兄であるイノセントとともに、父がいるであろう南アをめざす。

    なんというスピード感のある文章と物語の運びなのだろう。すぐに本の世界に引き込まれ、まるで自分もデオと一緒に逃げたり、走ったりしているような錯覚にとらわれた。

    デオは、少々遅れていて足手まといの兄、イノセントを限りなく愛していた。
    たった二人きりの兄弟。
    それを南アの外国人襲撃で失う。

    故郷も家族も失ってしまったデオが最後に希望を見いだしたのが、ストリートサッカー。
    ストリートサッカーのワールドカップ

    P235「わかるか?みんな同じじゃないからこそ、他のチームより強くなれるんだ!きみたちはみんな、アフリカのそれぞれ異なる場所でサッカーと習得した。それがまじりあって一つになったスタイルは、世界のどのスタイルともちがう。だから、相手には予測がつきにくい。おれは、それぞれの場所のいいところを集めて、いちばん強いチームをつくろうと思う。
    チームに選ばれた者は、全員が南アフリカのユニフォームを着る。だが、南アフリカ人でない者は、赤いアームバンドをつけて、そこに自分の国の旗をぬいつけていい。南アフリカのストリートサッカーは難民のことを忘れていない、ということを世界に示すことにしよう。難民たちを受け入れているからこそ国としても強くなるんだということを見せようじゃないか!」

  • 人種問題や貧困問題をベースに、スピーディーにストーリーが展開。
    アフリカを舞台にした物語は、日本では考えられないような生活の存在を教えてくれます。

    おもしろかった。

    高校生の読書感想文の課題図書です。
    この本を選んだ人、素晴らしいと思います(^^)b

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