にごりえ・たけくらべ (岩波文庫 緑25-1)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102510

作品紹介・あらすじ

酌婦の身を嘆きつつ日を送る菊の井のお力のはかない生涯を描いた「にごりえ」。東京の下町を舞台に、思春期の少年少女の姿を描く「たけくらべ」。吉原遊廓という闇の空間とその周辺に生きる人びとに目を向けた一葉の名篇を収める。改版。

感想・レビュー・書評

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  • 旧字体でなかなか頭に入ってこず、かなり苦戦したけれどなんとか読破。男性優位社会における女性たちの葛藤を描いた画期的な作品で、女性の社会進出に多大な影響を与えたであろうことを感じさせられた。
    当時の価値観を反映した男女の葛藤は今読むと新鮮さもあるが、一昔前の昭和にはまだこの男性優位の価値観は存在したし、現代においても忘れてはいけない反省すべき風習だ。身の回りで女性差別などの問題が浮上したり、意識したいと思ったときに、定期的に読み返したい作品だった。

  • 読み終わらないのですが、図書館に返却しました。
    現代文を読み慣れている私には、短い近代文の小説でも、なかなか頭に入ってこないので、最後まで読めませんでした。ざんねん。

  • 「雅俗折衷体」という文体なそうです。しかし、正直とても読みづらかった。江戸時代の候文まではいかないが、講談調のよう。句点が打たれぬまま、一文がつらつらと1ページ程の長さに及ぶ。その中に、彼我の台詞が一緒になっており、これまたわかりづらい。こうした読みにくさのため、内容の半分くらいは、意味をくみとれなかったやもしれない。本作、この時代の小説を読みなれていない人には、全くお勧め出来ない。

     「にごりえ」は、以下の2人が主な登場人物。「銘酒屋『菊の井』の売れっ子酌婦「お力(りき)」。(銘酒屋というのは、女性のいるクラブみたいなものか? すると酌婦は、常連の男客が「お力」ご指名で来店する様子もあり、云わばホステスみたいなものか…)。そして、もうひとり、その「お力」に入れ込んで、あげく、家計を傾かせ、家庭をめちゃめちゃにしてしまっている男「源七」の妻「お初」。終盤、この「お初」は源七の家を出る(離縁)。かような筋のあった模様。
    「お力」が、幼少時の生家の貧しさを物語るくだりがある。お米を買いに遣いに出るのだが、滑って転んで、米粒の多くをどぶ板の下の水に流してしまい、途方にくれて家に帰れない…。そんな悲しい思い出。このくだりは印象に残った。

    そして「たけくらべ」。吉原の近くにあり、廓の繁栄と共に賑わう町屋の界隈が舞台である。「美登利」という少女と、寺の息子「信如」の二人を軸に、お話が進むようであった。
    吉原の近くの粋な風俗、町の賑わいが、生き生きと描かれている感じはあった。「美登利」と「信如」は、いわば幼馴染のふたりらしい。中盤、互いの異性や、周囲の目を意識し始めたためか、そして、照れもあってか、互いに距離を置くようになってしまう。そのあたりは、思春期の男女にありがちな感じで、キュンとするせつない思いがした。 

     ※「龍華寺の信如」。「大黒屋の美登利」。 

  • 樋口一葉と言えば、近代日本文学においては有名な女流作家の一人である。
    いや紫式部はかなりさかのぼる。
    それを考えればおそらく女流作家の中では唯一無二の存在と言えるだろう。
    長らく読まなければとは考えていたが、文語体という大きな壁がそれを阻んできた。
    それを年末のどさくさに紛らせてどうにか消化した。
    カラマーゾフまでとは言わないがこれもかなりの熟成させた未読本だった。


    読んだ感想は”意外”の一言。
    てっきり女性らしい甘ったるい、もしくはやけに清々しい清潔なものを想像していたが、蓋を開けてみれば、どちらも悲哀に満ちた丁寧でそして繊細な物語だった。
    前にも書いたが女性らしい作品と言うのが私はどうも苦手だ。
    何というか、性別に焦点を当てられての諸々のことにあまり関心が向かない、いや何となく面倒になってしまうんだよな。ほとんど食わず嫌いの粋なのだが、何とも。
    しかし今回の一葉の作品も確かにその時代の女性達の生き様に確かに焦点を当てていたが、それが女とはその性はのうんざりするような長広舌ではなく、その悲哀を描きつつも芸術的な美しさを失わぬすばらしい作品となっていた。
    これは文語体によって若干紛らわされているのかもしれないが、本当に読み終わってみて何ともきれいな物語だな、と感心してしまった。
    特に私の場合『たけくらべ』にそれを感じた。
    はじめは幾分、文章が追えないと四苦八苦したが最後につれては鴎外達が絶賛した詩のような美しさを感じた。


    文語体を多少読み解けるようになって感じるのは、リズムの美しさだ。
    全て短歌的なゴロをもっているというわけではないが、言葉がリズムを持ち綴られている。
    おまけにその総体はえも言わぬ日本的なかぐわしさまでも纏う。
    たしかに口語体こそ当然に読みやすいが、こういった世界観、いや美観を演出できるのは文語体のすばらしい所だと思う。私は元来、文章は華美なものを好む性質があるので特にそう感じるのだろうけどね。
    しかし読むことに苦労して、というのも在るのだろうが、近頃読んだどの文語体作品もどことなく鮮烈な印象を残す。それもやはり日本的な。
    正直、一葉に関してはなんの期待も抱いていなかったからある意味目からウロコ。
    素直に美しい作品だったと今でも思う。



    一葉と言う人を後々すこし調べて、夭折であり苦労の人だったのだと感じた。
    しかし、その波乱と苦悩がこの人の文学に女性らしからぬ独自の視点を産み、しかし一方で女性らしいロマンチシズムばかりではない清潔な悲哀を含んだ物語を生ませたんだと思う。
    やっぱり文学には、苦悩なりのこういった思考をくぐった上での精神性がないと……なんて、えらく真面目に思ったりして。

  • 有名な作品です。これに胸がきゅんとした高校時代は純粋だった…。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/686833

  • 『にごりえ』酌婦として働くお力が、落ちぶれて妻子に見放された男、源七に出会い心中するまでを描く。
    『たけくらべ』14歳の少女美登利と僧侶の息子藤本信如の淡い恋心と、吉原の子供たちの生活を描いた小説。
    どちらの小説も作者である一葉の実体験をもとに、当時の社会のジェンダー問題を内包しています。

    ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00086978

  • 天才だなと思った。

  • 解説:和田芳恵
    にごりえ◆たけくらべ

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著者プロフィール

1872年、東京に生まれる。本名なつ。92年、20歳で小説『闇桜』を発表。以降、96年に24歳で
亡くなるまで、『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などの名作を書いた。

「2016年 『漫画版【文語】たけくらべ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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