- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003102763
作品紹介・あらすじ
現実界を超え、非在と実在が交錯しあう幻視の空間を現出させる鏡花の文学。その文章にひそむ魔力は、短篇においてこそ、凝集したきらめきを放ってあざやかに顕現する。そうした作品群から、定評ある『竜潭譚』『国貞えがく』をはじめ、絶品というべき『二、三羽-十二、三羽』など9篇を選び収める。
感想・レビュー・書評
-
鏡花の文章の美しさの秘密を知りたいー
そう思っているうちにもストーリーは煌めいて、
気づけば終わっている。
決して手の届かない宝石のようで、ため息が出るばかり。
この遠さは近代化される以前の世界を結晶化しているためか、
この近さは自分が同じ日本の風土に育ったからか。
そんなことを思っても、やっぱり届かない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めて鏡花の作品に触れた。難読。だけど鏡花の表現する女性、花、鳥の美しさは素晴らしかった。特に、必ず登場する女性のその妖艶なこと。
どの程度の言葉を知っていれば、一つ一つのことを丁寧に奥行きを持って表現できるのだろう。到底、凡人の頭では想像さえできない。
一度目を通しただけでは理解しがたい表現や内容が盛り沢山なので、長編ものへの挑戦は気合いが必要だな、と思いながらも、鏡花が長編ものでどんな女性を描いているのか、気にせずにはいられない自分もいる。
-
「竜潭譚」のおっぱい対決、「貝の穴にいる河童の事」は舌足らずの河童がいいね。
-
鏡花の本を読んでいると、この世とあの世の境目の「美しくも妖しい幻覚」のようなものを見ているような気がする。
幻想的なだけではない。気を許すと異世界に引きずりこまれてしまうような、そういう空恐ろしいほどの美がある。
この短編集の白眉は「雛語り」である。
きらびやかで華やかな雛たちが、鏡花の魔法の掌から流れ出でる。鏡花は言葉の贅をつくし、読み手を幻惑させる。
雛 夫婦雛は言うもさらなり。桜雛、柳雛、花菜の雛、桃の花雛、白と緋と、紫の色の菫雛・・・。
鏡花の文章は、桜や紅葉を混ぜた美しい錦絵や繊細優美な螺鈿細工を思わせる。
また、この短編の「貝の穴に河童のいる事」も面白い。
なんともけったいな河童が主人公である。鏡花は妖怪というか「人にあらざる」異界の住人を好んで描く。時として、生身の人間より生き生きとして魅力的である。
また、登場する姫神も物語全編を照らし尽くすかのように艶やかでコケティシュな魅力に富んでいる。
(夜叉が池、天守物語、多神教などの作品を鑑みても、美の化身としての姫神たちの存在は突出している。)
非現実という異界のベールを纏う時、登場人物たちは底知れぬ魔力を発揮する。その妖しい世界に翻弄されるのも心地の良いものである。
-
時は明治。文明開化はしたものの欧化したのはまだ一部。自然は多く残り夜の闇は深い。現世と異界は黄昏時になると溶け合い混ざり合って此方の人間が彼方に引き込まれ、彼方のモノが此方に這い出てくる。句読点はあるのにつらつらと続いてるかのような文体は読んでるうちに自分まで彼方へと拐かされるかのよう。妖しくも美しい女性が出て来る「竜潭譚」「国貞えがく」が良かった。言葉自体も美しい。日本語の美しさを再発見した。
-
文句のつけようのない短篇集。
この作品は現在読んだって一切
目劣りしないのです。
神秘的さも長編と変わらず健在です。
お勧めは雀のお話の
「二、三羽…」や河童が出てくる「貝の穴に…」
あたり。
空想生物が出てきても違和感がないのは
不思議なものです。
長編よりも短い分
まとまっていて面白かったです。 -
外科室が読みたくて借りたやつ。
-
時折突飛ない展開があるものの、やはり美しい。
-
ときに、雅文調の形容と、唐突にも思える句読点は、それが何を表現しているのかも判然としない箇所がいくつかあった。それも含めて、面妖な、官能的な得も言われぬ世界を醸し出している小品集である。