惜しみなく愛は奪う 改版 (岩波文庫 緑 36-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (147ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003103654

感想・レビュー・書評

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  • パウロやトルストイが説くような「愛は惜しみなく与え」という命題に対して、愛することの本質が"対象を自己に取り込み奪い続ける"ことにあるとする評論。
    (習俗的生活、知性的生活に対する)本能的生活を第一義的なものと措定し、そこから「愛」概念の逆説化を図る。

    若い頃にキリスト教的なヒューマニズムとか社会主義ないし無政府主義に傾倒した有島武郎だったが、そういう廻り道を経て、結局のところ我が「個性」という一元的、根元的なところへ立ち返ってきている。
    個性を重んじれば、愛することも畢竟自分のため、自分の血肉とするための営為ということになる。

    ところが、「奪ふ」愛を突き詰めすぎた挙句、"死の前における愛の無力"を悟り、惨たらしい情死を遂げざるを得なかったのだった。
    まさしくその点に、この評論の限界までも透けて見えてしまうような。

  • かの有名な評論。

    筆者は人間において最も上位におくべきものは「本能的生活」であり、本能とはすなわち愛であると言います。
    また愛とは相手に何もかもを与えているように見えて、実は相手そのものを奪い尽くし、自分の中に取り込んでしまうものだと言います。
    相手を損なうことなく。

    確かに愛って、生み出されるところには無限だよなあ、となんとなくですが感じます。

    でもぶっちゃけ話のスケールが大きすぎてよく分からなかったです。
    めちゃくちゃ読みにくかったし。

    そもそも、愛ってなんなのさ…

  •  
    ── 「愛は惜しみなく与う(トルストイ)」
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/4003103653
    ── 有島 武郎《惜しみなく愛は奪う 19550125-19681220 新潮社》
    http://www.aozora.gr.jp/cards/000025/card1144.html
     

  • 『もう私は私の饒舌から沈黙すべき時が来た。若し私のこの感想が読者によって考えられるならば、部分的に於てでなく、全体に於て考えられんことを望む。殊に本能的生活の要求を現実の生活にあてはめて私が申出た言葉に於てそうだ。社会生活はその総量に於て常に顧慮されなければならぬ。その一部門だけに対する凝視は、往々にして人を迷路に導き込むだろう。
     私もまた部分的考察に走り過ぎた嫌いがないとはいえない。私は人間に現われた本能即ち愛の本能をもっと委しく語ってやむべきであったかも知れない。然しもう云われたことは云われてしまったのだ。
     願わくは一人の人をもあやまることなくこの感想は行け。』………俺の言いたいことみんな言っていきやがった。

  • ラブラブば話だと思ってたら哲学だった。でもこの人、子供と年老いたお母さん残してどこぞの女と情死しちゃったんだよね・・・

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著者プロフィール

1878年、東京生まれ。札幌農学校卒業。アメリカ留学を経て、東北帝国大学農科大学(札幌)で教鞭をとるほか、勤労青少年への教育など社会活動にも取り組む。この時期、雑誌『白樺』同人となり、小説や美術評論などを発表。
大学退職後、東京を拠点に執筆活動に専念。1917年、北海道ニセコを舞台とした小説『カインの末裔』が出世作となる。以降、『生れ出づる悩み』『或る女』などで大正期の文壇において人気作家となる。
1922年、現在のニセコに所有した農場を「相互扶助」の精神に基づき無償解放。1923年、軽井沢で自ら命を絶つ。

「2024年 『一房の葡萄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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