- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003127131
感想・レビュー・書評
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どちらも花街のもと花魁が物語の重要人物として登場する、鏡花らしい小説。花街といってもいわゆる素人、身請けされたあとの女性で、苦界を抜けてもなお苦しい生活に苛まれる美しい女性達の描写はさすが鏡花といったところ。「辰巳巷談」でお君が花街を出ていく時の文章がとても精巧で、華やかな街の裏に隠された(というかそれが本来の顔であろう)切なさや悲哀がひしひし伝わってきた。それでも花街憧れるなあ。タイムスリップして一度吉原や島原や新町を体験してみたい…いや、私は女子だけど、花魁や太夫じゃなくて、遊ぶ方で^^;
鏡花らしいと言えるもう一つの側面は相変わらずとんでもない血みどろな展開で物語を占めること。そのこと自体がすでに作品をホラーに絞り上げてるw 学校であった怖い話とかに出てきそうじゃんwとか思ってしまうw 辰巳巷談も通夜物語もあらあれあらと言ううちに登場人物が死んだり胸を突き刺したりして話が終わります。通夜物語は胸を刺した丁山の血で襖に絵を描くっていうんだからもうね…どうしてこうなった!どうしてこうなった! 鏡花はやっぱり過激だなあと思うのです。普段の人柄(というか癖とか)を思うにつけても。
今更何を言う感じだけど、鏡花の小説の魅力の一つに会話文があると思う。ものすごく正確に描いているから、日本語学の資料にもなりえるんじゃないかってくらい、会話がリアル。言葉の何気ない合間とか、チョッ、とかいう音とか。んー落語に通じるところがあるな…とも思った。
相変わらずわけのわからない展開でもうどうにでもしてくれって言いたいところですがまだまだ読んでない作品は沢山あります。卒論は終わったけれども、一生付き合いたい作家としてこれからも読んでいければと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示