- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003220320
作品紹介・あらすじ
五度結婚したバースの女房が明かす女心の本音。互いにけなし合う托鉢僧と召喚吏。学僧が語る貞女グリゼルダの受難。さらに貿易商人、近習、郷土、医者、免罪符売り、船長、尼僧院長が話した後、作者チョーサーも一枚加わり物語を披露する。
感想・レビュー・書評
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英文学における中世最大の物語集。『デカメロン』の影響を受けたとのことだが、まるまる同じ話がいくつもある。
<学僧の話> は物議を醸すような内容だったデカメロン最終話と同じストーリー。インパクトはあるが、現代人の感覚ではこれを感動物語として素直に受けとることはできないのではないか。
<郷士の物語> は自分がデカメロンで最も好きだった清々しい話だ。その前の <貿易商人の話> と良いコントラストをなしている。似たような状況でも……女によって行動は異なるのだ。
<船長の話> もデカメロンにあった話なのだが、内容がわかりにくく最初それとは気づかなかった。この話に限らず本書は全体的に読みにくい。これは原文のせいなのか翻訳のせいなのか。
<バースの女房の話> も本体はどこかで読んだことのある話。調べるとアーサー王関連だった。五度結婚したバースの女房に語らせることで独自性を出している。
ラストにチョーサー自らが作中人物として語る <メリベウスの物語> がくせ者。なんだこれは。偉人たちの言葉を次々に引用しては、観念的な理屈を息も切らさず並べ立てて、夫を言いくるめてしまう妻の話。本巻で一番長いくらいの話なのに、物語がなくほとんどはこの屁理屈?の文章が延々と続いていく。とうとう根負けする夫にワラタ。確かに賢妻とはいえるけど……可愛くないなぁ。
全体的に夫と妻にまつわる、ネトラレ系の話が多い。内容は良いが、デカメロンと共通の話が多いのと、文章が入ってきづらいので少し評価を下げた。 -
レヴュは下巻にて。
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バースの女房の話
托鉢僧の話
召喚吏の話
学僧の物語
貿易商人の話
近習の物語
郷士の物語
医者の物語
免罪符売りの話
船長の話
尼僧院長の物語
トパス郷の話
メリベウスの物語 -
一部説教臭い話もあったけど、全体としてはそれなりに楽しめた。しかし、上巻のあの充実した訳注はなんだったのかと思ってしまうほど、訳注は質も量も物足りない。(上巻出した時点でメインの方が亡くなっているのがやはり大きいのか)
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長い。
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登場人物の中で、一番キャラが立っているのはバースの女房だろう。「バースの女房の話」では本題前の「序」で結婚観に長広舌をふるい、34ページも費やしている有様。そのうえで披露する話が20ページなのだから、どっちが本題なんだと思わず笑ってしまった。
過去に5人の夫と結婚し、そして今後もチャンスがあれば新たな男性と床を共にする、と言い切る彼女。身勝手な主張なのに一方で真実を言い当ててる部分もあって、見ていて何だか爽快になった。本題で出てくる騎士にはちょっと腹が立ったけどね。
しかしそれ以上に腹立たしかったのは「学僧の物語」。読んでいて渋面を作らないようにするのに苦労した。現代の感覚で読んではいけないと思いつつ、それでもワルテルの振る舞いはないだろう。最後、「妻の愛を試したりしてはいけない」と結んではいるが、これはワルテルの振る舞いを非難するというよりも、グリセルダほど素晴らしい妻が現実にはいないから、という皮肉の意味だろうなあ。
それにしても話の内容もそうだが、語り手同士の関係も面白い。上巻の粉屋と家扶がお互いいがみ合って相手を中傷するような話をするし、この巻だと托鉢僧と召喚吏が同様の流れで話す。一方で話の合間に聞き手が茶々を入れることもある。
個人的には近習の話の続きが気になる。馬と鏡がこれからどんな役割を果たすのか楽しみにしていたのに、郷士が話を遮ったせいで結末が分からない。まあでもその郷士の話もなかなか面白かったのでよかったけどね。
気に入ったのは「郷士の物語」「近習の物語」「免罪符売りの話」。 -
なんと結婚、恋愛の人間学の宝庫ではないか!
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ひとりの人の人生はそれだけで物語になるのならば29人もいればとてもおもしろい物語集になるはずだ。