- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003250310
作品紹介・あらすじ
愛の秘薬を誤って飲みかわしてしまった王妃イズーと王の甥トリスタン。この時から2人は死に至るまでやむことのない永遠の愛に結びつけられる。ヨーロッパ中世最大のこの恋物語は、世の掟も理非分別も超越して愛しあう"情熱恋愛の神話"として人々の心に深くやきつき、西欧人の恋愛観の形成に大きく影響を与えた。
感想・レビュー・書評
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『ドン・キホーテ』を読み、ドン・キホーテが夢中になった騎士道物語を読んでいる。
こちらはyamaituさんに誘われたので読んでみました(誘われましたよね、ね!?^O^)/
トリスタンとイズーについてはアーサー王関連の本で大体の流れを知ったつもりでいたんだけど、実際に読んでみたらまたイメージが違った。yamaituさん、そしてpinoko003さん色々ご紹介ありがとうございます!
私がトリスタンとイゾルテの物語に興味を持ったのは、この曲を聴いたこともあります。
これは美しいですよねえ、哀しくも救いも感じて全く乱れない、本当に美しいですよねえ。
https://www.youtube.com/watch?v=XEjwXlljwHY&ab_channel=KodairaPrince
本書は「さて皆の衆、どう思われるか」などと読者に語りかけるようになっています。
<皆の衆、聞き給わずや、愛と死のこの美しき物語を。>
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ローヌアを治めるリヴァラン王が戦死した後に生まれた息子は、ブランシュフルール王妃により「悲しみの子」という意味のトリスタンと名付けられた。王妃もすぐに亡くなり、やがてトリスタンはコーンウォール王である叔父マルクの騎士となる。
マルク王はトリスタンを息子のように思っていたが、諸侯からの要求によりアイルランドの王女黄金の髪のイズーを王妃に迎えることになった。だがトリスタンとイズーは誤って媚薬を飲んでしまったために互いへの愛に結び付けられてしまう。その愛は二人を同じ日に死なせ、死んだ後も引き離されることはなかった。
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アーサー王物語ではマルク王が最初からトリスタンに無茶言いつける印象だったんだが、こちらではマルク王はトリスタンを息子のように愛していたために、悪心を持つ四人の諸侯に讒言されて試練を与えられることになっている。マルク王はトリスタンとイズーを疑い死刑を命じてしまうこともあるが、二人を大事に思う気持ちを思い出など、アーサー王物語よりもマルク王の印象は良くなった。
アーサー王物語でのトリスタンは、トリスタンがコーンウォールから離れていた時期にアーサー王の十三番目の円卓の騎士(不吉な番号であり、優れた騎士でないと認められない席)として迎えられたとなった。その時期はこちらの『トリスタン・イズー物語』では、イズーを火刑から救い出して二人で密かに暮らしているが、マルク王に見つかってイズーを王妃として仲直りさせ、自分は外国を彷徨っていた時期だった。
火刑から救うとか、王と王妃の仲直りとかはアーサー王物語でもあるんだが、このような「火刑命じる⇒仲直り」って普通にあったのか。私は騎士と姫や王妃の恋愛は、そんな不安定な暮らしだったら自分にために命をかける騎士は必要だという必至なものであり、そして不安定だからこそ燃えたみたいなものもあったと思う。
しかしアーサー王物語ではイズーが「真の恋人は、グィネヴィア王妃と騎士ラーンスロット、トリスタンとイズーの二つだけ」と言ったことになっているが、それはやり過ぎな感じが(-_-;)
こちらの『トリスタン・イズー物語』は観客に聞かせるために語られた話なので、トリスタンとイズーが身の潔白を明かすときには魔法?とか奇跡とかが顕れたり、悪の諸侯たちがすっきり退治されたり、二人の気持ちがすれ違っちゃったりと色々な盛り上がりが。おそらくだが、語るときは「トリスタン・イズー物語の中から◯◯の段を」という感じで語っていたんだろう。
それにしても二人の恋愛を「計らずも媚薬を飲んでしまったんだから仕方ないじゃん」というのは、やはり「不倫は良くない」という風潮もあったんだろうか。しかも二人で離れなければいけないと決意して離れたのに、お互いに「あの人からの便りがない!恋人は自分を忘れてしまったんだ!」と傷付いたりせっかく再会したのに冷たくしたりとちょっと面倒くさい^^;
最期は再会は叶わず、しかしほぼ同時に死ぬという悲恋ではあるが、悲愴さはない清々しさを感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ボクにとってのアーサー王はここから始まった。
アーサー王なんて1ミリも出てこないけど。
なかなか泣ける恋物語。
現実的に見たらいけない作品のひとつ。 -
#901「トリスタン・イズー物語」
伝承世界の「トリスタンとイゾルデ」の物語を、中世の文献学者・ベディエが各種流布されたものを編集しました。「皆の衆」などと云ふ呼びかけが面白い。佐藤輝夫氏の翻訳も名調子であります。
よく比較される「ロミオとジュリエット」に比べて支持が低いのは、前者が無垢な純愛をしがらみに阻害される悲劇に対し、此方は結果的に王妃(イズー)と妻帯者(トリスタン)の不倫物語である事が大きいでせう。それからフランスには「沙翁」がゐなかつたからかも...... -
トリスタンと黄金の髪のイズーとのすれ違いながらも交わる情熱的なストーリー。
後半ほど離れていたが故のすれ違いが激しくなり、更に白い手のイズーとの関係もあり。
愛ゆえの盲目を見せられている。そこには清々しいまでの透き通った憎悪があり、最期はただ淡々として天幕を掛けるが如く静かに終わった。 -
当然ですが、ワーグナーのオペラでの内容とどこが違うのかを確認できてよかったです。
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アーサー王を再読したついでにこちらも久々に再読。いわゆるトリスタンとイゾルデ。恋愛ものとして独立したストーリーにアレンジされているので、ゲス不倫のランスロットより俄然共感しやすい。結果的に不倫にはなってしまうけれど、惚れ薬のせい、という大義名分があるので、純愛風に読める。ただ、何度か別れようと決心してもまた寄りを戻してしまうパターンは、繰り返しすぎると恋人たちに対する同情よりも反感が募ってしまうのでやりすぎかも。
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yamaitsuさんこんにちは、来ましたよー(^O^)
ランスロットより共感できるのは賛成!
グィネヴィア王妃が割りと強い感じなのに...yamaitsuさんこんにちは、来ましたよー(^O^)
ランスロットより共感できるのは賛成!
グィネヴィア王妃が割りと強い感じなのに対して、イズーは一人で放り込まれて連れてきた女官以外には味方もいないので恋愛云々はさておき騎士として守ってあげてよと思うのかもしれない。
後半の、別れたり戻ったり、会いたいのに会ったり冷たくしたりはたしかにやり過ぎな感じもありましたね。惚れ薬で離れられないのに、相手の心を疑うのは何じゃいって。
騎士道物語とりあえずこんな感じかなあ。
ドン・キホーテの気持ちが分かるどころかツッコミどころが多すぎたんですが(笑)、『ドン・キホーテ』は騎士道物語への批判もあったろうからそう思ってよいのかな。2023/11/01 -
淳水堂さん、おいでませー♪
ゲス不倫の末パンツはかずに飛び出すランスロッドに比べたら、トリスタン&イズーはラブストーリーとしてちゃんと...淳水堂さん、おいでませー♪
ゲス不倫の末パンツはかずに飛び出すランスロッドに比べたら、トリスタン&イズーはラブストーリーとしてちゃんと成立してますよね!そういえばそもそもアーサー王の本をいろいろ読むまで、トリスタンが円卓の騎士の一人だとは知らなくて、トリスタンとイゾルデは、ロミジュリ的な創作ラブストーリーだと思ってました。
後半の展開はなんかもう昼メロみたいでしたよね(笑)作者も落としどころがわからなくなってたのかしら?
確かに「ドン・キホーテの気持ちがわかるどころかツッコミどころ満載」なのが騎士道物語でしたね(笑)それはそれで楽しかったですが。私はあと1冊、ドン・キホーテ頑張ります!2023/11/01
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<閲覧スタッフより>
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所在記号:文庫||953||ヘテ
資料番号:10210392
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新書文庫
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2015/4/17読了。
アーサー王関連で興味を持って購入。でもアーサー王の方は妃がイズーじゃなくてグィネヴィアだったから別の物語なのかな?
とはいえ訳は読みやすいし、話の流れもわかりやすいと思った。今まで読んできた悲哀系の物語もこれを原型にしたのかなと感じるものも多い。
ただ、これを友人(女性)に進めたら「こんな勝手な二人の話の何が面白いのかわからん」と言われたので人を選ぶのかもしれない。