トリスタン・イズー物語 改版 (岩波文庫 赤 503-1)

著者 :
制作 : ベディエ 
  • 岩波書店 (1985年4月16日発売)
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本棚登録 : 448
感想 : 41
5

『ドン・キホーテ』を読み、ドン・キホーテが夢中になった騎士道物語を読んでいる。
こちらはyamaituさんに誘われたので読んでみました(誘われましたよね、ね!?^O^)/
トリスタンとイズーについてはアーサー王関連の本で大体の流れを知ったつもりでいたんだけど、実際に読んでみたらまたイメージが違った。yamaituさん、そしてpinoko003さん色々ご紹介ありがとうございます!

私がトリスタンとイゾルテの物語に興味を持ったのは、この曲を聴いたこともあります。
これは美しいですよねえ、哀しくも救いも感じて全く乱れない、本当に美しいですよねえ。
https://www.youtube.com/watch?v=XEjwXlljwHY&ab_channel=KodairaPrince

本書は「さて皆の衆、どう思われるか」などと読者に語りかけるようになっています。
<皆の衆、聞き給わずや、愛と死のこの美しき物語を。>

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 ローヌアを治めるリヴァラン王が戦死した後に生まれた息子は、ブランシュフルール王妃により「悲しみの子」という意味のトリスタンと名付けられた。王妃もすぐに亡くなり、やがてトリスタンはコーンウォール王である叔父マルクの騎士となる。
 マルク王はトリスタンを息子のように思っていたが、諸侯からの要求によりアイルランドの王女黄金の髪のイズーを王妃に迎えることになった。だがトリスタンとイズーは誤って媚薬を飲んでしまったために互いへの愛に結び付けられてしまう。その愛は二人を同じ日に死なせ、死んだ後も引き離されることはなかった。

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 アーサー王物語ではマルク王が最初からトリスタンに無茶言いつける印象だったんだが、こちらではマルク王はトリスタンを息子のように愛していたために、悪心を持つ四人の諸侯に讒言されて試練を与えられることになっている。マルク王はトリスタンとイズーを疑い死刑を命じてしまうこともあるが、二人を大事に思う気持ちを思い出など、アーサー王物語よりもマルク王の印象は良くなった。
 アーサー王物語でのトリスタンは、トリスタンがコーンウォールから離れていた時期にアーサー王の十三番目の円卓の騎士(不吉な番号であり、優れた騎士でないと認められない席)として迎えられたとなった。その時期はこちらの『トリスタン・イズー物語』では、イズーを火刑から救い出して二人で密かに暮らしているが、マルク王に見つかってイズーを王妃として仲直りさせ、自分は外国を彷徨っていた時期だった。
 火刑から救うとか、王と王妃の仲直りとかはアーサー王物語でもあるんだが、このような「火刑命じる⇒仲直り」って普通にあったのか。私は騎士と姫や王妃の恋愛は、そんな不安定な暮らしだったら自分にために命をかける騎士は必要だという必至なものであり、そして不安定だからこそ燃えたみたいなものもあったと思う。
 しかしアーサー王物語ではイズーが「真の恋人は、グィネヴィア王妃と騎士ラーンスロット、トリスタンとイズーの二つだけ」と言ったことになっているが、それはやり過ぎな感じが(-_-;)

 こちらの『トリスタン・イズー物語』は観客に聞かせるために語られた話なので、トリスタンとイズーが身の潔白を明かすときには魔法?とか奇跡とかが顕れたり、悪の諸侯たちがすっきり退治されたり、二人の気持ちがすれ違っちゃったりと色々な盛り上がりが。おそらくだが、語るときは「トリスタン・イズー物語の中から◯◯の段を」という感じで語っていたんだろう。
 それにしても二人の恋愛を「計らずも媚薬を飲んでしまったんだから仕方ないじゃん」というのは、やはり「不倫は良くない」という風潮もあったんだろうか。しかも二人で離れなければいけないと決意して離れたのに、お互いに「あの人からの便りがない!恋人は自分を忘れてしまったんだ!」と傷付いたりせっかく再会したのに冷たくしたりとちょっと面倒くさい^^;
 最期は再会は叶わず、しかしほぼ同時に死ぬという悲恋ではあるが、悲愴さはない清々しさを感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 騎士道/ドン・キホーテ
感想投稿日 : 2023年11月1日
読了日 : 2023年11月1日
本棚登録日 : 2023年11月1日

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