- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003258514
作品紹介・あらすじ
人間どうしさながらに意志をかよわせ睦みあう青年アランと愛猫サア。アランの愛のみを待ちうける新妻カミーユの不満は、やがて「第三者」サアに対するいらだちと嫉妬の心にかわってゆく…。20世紀フランス文壇の女王コレット(1873‐1954)が、一匹の牝猫をはさんだ若い新婚男女の微妙な心理を繊細な感覚でとらえた円熟期の代表作。
感想・レビュー・書評
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◆主人公アランと愛猫サア、そして新妻カミーユ。男と猫と女という奇妙な三角関係の物語。主人公と愛猫のあいだにはすでに二人(二匹)の世界があって、その世界に入って行けない妻は、夫(主人公)の愛猫に対する憎しみを募らせてゆく。いっぽうで主人公は、妻を愛しつつも失望も覚える。◆主人公と妻という人間の違いがはっきりみてとれるラストが印象的でした。
◆その人間の違いは、凋落しつつある旧家に生まれ育った主人公がもつ貴族らしさ、エリートらしさによるものです。主人公にとっては、妻の立ち振る舞いや言動、そして貪欲さや利得に生きる彼女という人間は「不純」なのでした。「サアがライバルになるはずはないじゃないか」「きみにライバルがいるとしたら、不純なものたちのだれかだろうから…… (p. 52)」
◆反対に、愛猫にたいしては「猫科の動物の気品というものがあるし、欲得なんかを超越している、身の処し方を知っており、人間のエリートに似たところがある…… (p. 37)」といっています。◆そう考えると、主人公が自分自身と愛猫にある種の純粋さ、エリートらしさを見出していたことは明らかです。まさに主人公が抱えていたこの意識が、男女関係に動物が入り込むという奇妙な関係を、物語として成立させているといえるのかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分も猫飼いなので、アランが猫を愛する気持ちはすごく理解できる。
そしてカミーユの気持ちも…。
結局、物語の最初からアランがカミーユのことをそれ程愛していないというのがわかっていたし、そういうのを感じ取ったカミーユのほうはますますアランの愛を得ようと執着してしまう、そしてアランの愛情を独り占めしている猫を憎むようになってしまうという展開はわかりすぎる。
そして、時代なのかうっすらと女性蔑視の風潮も見え、なんだかねという感じ。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737204 -
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737204 -
2021.5/23
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60年代に映画になった。
猫好きの青年が結婚して破綻するという物語。
犬だったらよかったのかもしれない。
猫とはねえ。しかも牝猫。
好きが徹底すれば、何かと悶着が起こる。
それでなくても結婚は異なる二人が折り合うのだ。
自由と協調性、個人主義の矛盾。
最近の非婚化傾向。日本、やっとここまで来たか!(笑) -
自分の世界で夢見る男と世俗的な女のすれ違い
猫との恋愛関係、というよりは男女のすれ違いがメインです。
主人公の、夢見がちでピーターパンのような価値観が小気味よく
猫と主人公とのやりとりは、色気を感じます。
1928年、86年前にフランス人女性によって書かれた小説ですが、
文章はテンポよく読みやすく、その時代のフランスの世界を味わえます。
少しの希望や喜びに飛びついてしまう、
自分の思うように事を運びたがる、
そういうところは、いつの時代でも現実に生きる女性の性なんだなぁと
すこし悔しくなります。