千一夜物語 13(完訳) (岩波文庫 赤 781-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003278130

感想・レビュー・書評

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  • ようやく13巻、これが最終巻になります。まずは12巻から続く「バイバルス王と警察隊長たちの物語」第六の警察隊長の話が、ペンタメローネ(五日物語=イタリアの民話集。私は映画しか観れていない)に出てきた話と類似していてびっくり。細部の運びは違うのだけれど、巨大化した虱の皮を滑して、それが何の皮であるか当てた者にお姫様を与えるという王様のお触れ、そして言い当ててお姫様をゲットした男が実は恐ろしい人喰鬼で、姫を険しい山の洞窟に閉じ込め、脱走した彼女を追いかけてくる・・・という概要が酷似。巨大虱の皮なんてそうそうあるエピソードじゃないから、出所はきっと同じはず。興味深い。

    「蜂蜜入りの乱れ髪菓子と靴直しの禍いをまきちらす女房との物語」は、恐ろしいDV妻に酷いめに合わされまくった男が逃げ出してから幸運をつかむ話なのだけど、とにかくこのDV妻が怖すぎる。回教徒は他の宗教より男尊女卑が激しい印象だけど、たまにものすっごい怖い奥さん登場して夫を歯が折れて鼻血が出るほどボコボコにしたりするので、これはもう宗教関係なく全世界共通の何かがあるんでしょうね(苦笑)

    後半「知識と歴史の天窓」「ジャアファルとバルマク家の最期」あたりはファンタジー性が少ない歴史上の人物の話になり、それはそれで面白くなくはないけどアラビアンナイトのイメージとはちょっと違う感じ。何より全編通して最多登場の教主ハールーン・アル・ラシードが、同じく最多登場の大臣ジャアファルを一族もろとも惨殺したという歴史上の事実がショック・・・あんなに仲良く一緒に街を徘徊していたのに・・・。

    ラストを飾る「ジャスミン王子とアーモンド姫の優しい物語」はとりたてて特徴のない無難なラブストーリーで、まあ駆け落ちしなくても王子なら正式に結婚申し込めば良かったのでは?という疑問を残しつつ、ハッピーエンドだからまあいいか、程度。アーモンド姫の美しさの比喩の中にある「蝦蛄のような身ごなし」というのが謎でした(笑)蝦蛄・・・。あとジャスミン王子の美しさの比喩の中では、唇の愛らしさを「二つの落花生のような」とあって、うん、でもこれ褒め言葉なんですよね。そういえば「歌姫空色のサラーマー」というお話でも、美しい歌姫サラーマーの何が空色なのかと思えば、唇の上のヒゲ(産毛)だったという驚きもありました。

    その他、全編通して、独特の比喩(エロティックな表現も含む)が個性的で面白かったです。あとガッカリすることの表現として「鼻が長くなる」「鼻が地面につく」とか、ボコボコにしてやることの表現として「縦を横にする」「縦を横にめりこませる」など、マンガちっくなのも絵で浮かべると楽しかった。

    そして最後の「大団円」の章で、シャハラザードがすでに王子一人と双子を出産していたことが判明。双子は9巻のラストで妊娠中だと明かされていたときの出産、一人目の子は5巻序盤あたりでするっと生まれていたらしい。王様はついに改心し、シャハラザードを正式の妻に、その妹ドニアザードは王様と同じく女嫌いになってた弟王と結婚してめでたしめでたし。

    ※収録
    第940-954夜:バイバルス王と警察隊長たちの物語(続き)(第三の警察隊長の語った物語~第十二の警察隊長の語った物語)
    第954-959夜:海の薔薇とシナの乙女の物語
    第959-971夜:蜂蜜入りの乱れ髪菓子と靴直しの禍いをまきちらす女房との物語
    第971-994夜:知識と歴史の天窓(詩人ドライド、その高邁な性格と高名の女流詩人トゥマーディル・エル・ハンサーへの恋/詩人フィンドとその二人の娘、女丈夫日輪オファイラと月輪ホゼイラ/王女ファーティマと詩人ムラキースとの恋の冒険/フジル王の復讐/妻から夫の品定め/両断者ウマル/歌姫空色のサラーマー/押し掛け客/薄命の寵姫/悲しき首飾り/モースルのイスハークと新曲/二人の舞姫/落花生油のクリームと法学上の難問解決/泉のアラビア娘/しつこさの報い)
    第994-998夜:ジャアファルとバルマク家の最期
    第998-1001夜:ジャスミン王子とアーモンド姫の優しい物語
    大団円

  • 「大団円」に「めでたしめでたし」とふりがなをつけるのが素敵。自粛期間含めようやく千一夜の物語読破

  • ようやっと最終巻!
    ちょいちょい出てきたハールーン・アル・ラシードの物語にあんなオチが付くとは。えぇぇぇー。秀吉かと。
    ジャスミン王子とアーモンド姫は最後に来るにはちょい尻切れとんぼのような?
    でも大団円はよかったなぁ。

    蜂蜜入りの乱れ髪菓子はいったいどういう形状なのか気になる、と思ってルビのクナファでぐぐってみたり。
    ヤギのチーズのチーズケーキ!?
    あと最初の方の巻で出てきた柘榴とクリームのお菓子も食べてみたいツートップ。
    イスラム教の戒律上食べられない食物はあっても、なかなかに絢爛豪華な食卓模様だったんですねぇ。

    それにしても感情表現の激しいこと(笑。
    男でも女でも褒めるときは口を極めて褒め、罵る時も全力。
    産毛や唾液まで褒めるしね。その感性は…うーん、凄いの一言。
    あと他民族他宗教に対する扱き下ろしもまー、激しかったです。
    よく言われるエロティックさっていうのは、マルドリュス版だからかさほどでもなく…と言うより、官能的よりむしろ下ネタの域だった気が(笑。
    どういう顔でシャハラザードは語ってたのさ!?
    ちくま版(バートン版)だとまた違った雰囲気なのかしら。
    もうしばらくは読む気力無いけれどorz
    でも振り返ればやっぱりおもしろかったです。
    イスラム文化も知らないことが多くて、なるほどなーと思うこともしばしば。
    あ、あと結構後ろの方の巻だったと思うけど「お金は幸せになるのを助けはするけど、土台にはならない」って感じのことが書かれていて、いいこと言うねーと。

  • 2008/02/07

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著者プロフィール

とよしま・よしお
1890(明治23年)~1955(昭和30年)。
日本の小説家、翻訳家、仏文学者。
久米正雄、菊池寛、芥川龍之介らとともに
第三次「新思潮」の同人として世に出る。
代表作に、
短編小説集『生あらば』(1917年)、
中編小説『野ざらし』(1923年)、
随筆集『書かれざる作品』(1933年)、
長編小説『白い朝』(1938年)、
短編小説集『山吹の花』(1954年)など。
当時ベストセラーになった『レ・ミゼラブル』の翻訳で知られる。
太宰治の葬儀の際には、葬儀委員長を務めた。

「2018年 『丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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