- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003361511
感想・レビュー・書評
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『ぼくらの頭脳の鍛え方』
書斎の本棚から百冊(佐藤優選)15
宗教・哲学についての知識で、人間の本質を探究する
神学と哲学を分離した画期的な書。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(凡例より抜粋。原文は旧仮名遣い)本書はスピノザがその生涯を通じ自ら進んで世に問うた唯一の書であり、彼に対する生前並びに死後数十年間の毀誉褒貶は一に係って本書に起因する。彼が生前ついに「エチカ」を出版することが出来なかったのも本書が世に捲き起こした囂々たる論難に妨げられてであった。
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スピノザを読んだのは本書が初めてであったが、この著作は近代聖書学の先駆け
であると聞いていたので、とても興味深く読めた。何よりも心に
残ったのは、聖書観の部分である。当時の教会に対する批判から、その神学に対する
批判へと向い、それが聖書観の議論に至る。聖書は難解な哲学や思想を伝えるもので
はなく、ただ神に服従することだけを説く、というこの主張は、あるキリスト教の流
れの中にある。それはすなわち、コルプス・クリスティアーヌム(キリスト教世界)
を前提とした教会体制に対して真っ向から反対した「自由教会」の精神である。
教会が(聖俗関らず)支配的権威と結びつく時、それは知的階級と結びつくこととも
相まって、難解な哲学的信仰理解(ヘレニズム化)となってきた。それに対する反動
として、イエスに範を取った、権力に対する
「革命的従属」の主張が表れる。直接的な接触の有無は分からないが、国定宗教に対
する反発として、スピノザの聖書理解はアナバプティズムと軌を一にしているように
思われる。