戦後ドイツ: その知的歴史 (岩波新書 新赤版 158)

著者 :
  • 岩波書店
3.56
  • (5)
  • (14)
  • (21)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 144
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301585

作品紹介・あらすじ

分断から統一へ-。廃墟からの出発、ユダヤ人虐殺の衝撃、ナチズムとの訣別、驚異的な経済復興と急成長、統一後の巨大国家。戦後ドイツ社会の変貌は知識人の精神にも大きな変遷を迫り続けた。ハイデガー、トーマス・マン、アドルノ、ハーバーマスらの言動はどのような影響を及ぼしたのか。複雑に展開した政治・社会・文化を克明に描く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 戦後から東西統一あたりまでのドイツ知識人の社会史.手軽な類書がないので重宝する.

  • 戦後ドイツにおける国内の政治的、思想的な動向をハイデガーやフランクフルト学派の代表的な知識人、またヘッセや47年グループ、ニュージャーマンシネマの作家等を概観しつつ、二〇世紀後半のドイツの変遷を辿る。
    ナチスの暴走という悲劇的かつ簡単には癒しえない経験を胸のうちに秘めながらも、どうにかして自らの歴史認識と国のあり方について、ゆっくりとではあるが前進しようとするドイツの姿が少しだけど分かった気がする。
    それにひきかえ日本のリーダーたちは…

  • 廃墟の風景◆忘却と奇跡の復興◆ハイデガーと西欧の運命◆知識人の抵抗◆知識人の隘路◆反乱とその痕跡◆改革と諦念◆新しき不透明性◆西独の変化と消滅

  • ブラントが昨日死亡したということで戦後のドイツが終わったような気がする。ドイツではいいことばかりが書いてある本が多いので、これはドイツを知るいい歴史書である。

  • 知的であること知的でないこと。その対立(ときに混乱)は難しく予想しないダイナミズムを産む。

    ・愛する物が死んだとき、もしもその愛が相手の特性を本当に愛する性質のものであったら、まずは絶望に襲われる。なんとかその死を認めまいとする。あるいは幻想のなかで蘇らせようとする。だが、時とともに現実を認め、自分を立て直す。それは成熟の過程である。これこそ哀悼という大変な仕事である。ところが元々の愛が単に自分の満足感のためだけであったら、愛する者の死は自己の価値への不信、自己の喪失感を生むだけ。
    ・アドルノ『本来性の隠語』
    ・ハイデガーではもはや存在しない静かな日常風景が「本来的」とされている。この生活シーンの中で労働社会の現実が無視され、家庭の権威主義がそのまま肯定されている。
    ・中年以上のドイツ人外交官などにハイデガーをよく読んでいることを自慢する人が多い。
    ・ハーバマス『公共性の構造転換』。文学や芸術を論じる場は政治的な起爆力を持つ公論の場へと発展し、市民社会の批判的な世論が形成される可能性を宿している。
    ・ゲーテ賞からビュヒナー賞へ。普遍的人間の理想から政治的社会的存在としての具体的な人間へ、美しい言葉の転句からこの世の権力被害者へ、手厚い保護の元で夢見られたオリュンポスの世界から反抗と亡命へ、伝統からの負託に関する解釈が転換した。
    ・ホルクハイマー「資本主義にファシズム化の傾向があることを知ってしなければならないのと同じように、左翼急進主義がテロリズム的全体主義に逆転する危険性があることも意識していなければならない」
    ・ハーバマス「耐え難いものが、未だ名付けられず、定義を持っているところでは、つまり、不正がまだ明白に表に出ておらず、大衆の反応としての憤激が存在しないところでは、革命的標語よりは啓蒙が優先すべきである」
    ・中国の文化大革命の影響もあって、頭脳労働と肉体労働の区別も目標となった。観念性から脱出し、頭でっかちを乗り越えようとする仕方そのものが観念的で頭でっかちである。

  • 第二次大戦終結後のベルリンの混乱以降のドイツの思潮を平易に解説する。二度の大戦で、1900年代初頭までにあったロマン調の古き良きドイツは、ほぼ完全に断絶された。ナチスの意識的な(外形的な?)否定から始まり、ゲーテを担ぐ復古の動きや、あらたな開放的な思想などを拾うなかで、おそらく三島は、日本の思想の流れとの相似を説明したかったのだと思う。

  • ズバリ戦後ドイツ。
    「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」
    この一言に代表される左翼知識人の繁栄と衰退を日本の左翼的視点からちょっと悔しそうに書いたもの。
    西ドイツは自国の過去を全否定して、歴史を持たないリベラルな国家としての実験場だったが、それが、ベルリンの壁崩壊をもって失敗して普通の国になりましたというような内容。
    敗戦国というのは物理的精神的に色んな物を失い、取り戻すのに時間がかかるのだなと、ドイツを通して日本を振り返らせる内容。

  • 戦後ドイツの思想潮流の変遷を政治史・社会史との関連から解説してある。ドイツ思想に絶えずついて回る、アウシュビッツ以降の思想という問題がいかに論じられてきたかを理解することができる。

  • トーマスマンが、ドイツにもどらかなかったが、講演はしたとのこと。
    ハイデガーの章があるなど、戦後ドイツ著名人という感じの作りになっている。
    それ以外は、いろいろかかれていても、ちょっとピンと着ませんでした。

    ミュンヘンのドイツ博物館は素敵だと思ったのですが、
    そういう切り口は用意していないようです。

  • 戦後ドイツの社会状況と哲学?つうか思想系の流れとを絡めて書いてあって、1回目読んだときは修論に役立ちそうだと思っていたのに、2回目読んだらどこが役立ちそうだと思ったんだったかわかんなかった。
    というわけでたぶん使わない…

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

三島 憲一(みしま・けんいち):1942年東京生まれ。東京大学人文科学系大学院博士課程中退。大阪大学教授、東京経済大学教授などを歴任。大阪大学名誉教授。専攻は社会哲学、ドイツ思想史。

「2024年 『資本論 第一巻 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三島憲一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×