日本語練習帳 (岩波新書 新赤版 596)

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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305965

感想・レビュー・書評

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  • この本は、語の意味の中心を的確に把握し、それを表現するための方法論である。

    著者は『岩波古語辞典』の制作に長く携わってきた。これは言葉(や概念)の中心的な意味をひらすら掘り下げ、掴み取った単語の特徴を文章で説明する仕事に従事していたと言う意味である。
    そんな経験から打ち出された文章によって次々と、今まで感じていたモヤモヤを言語化し思考をクリアにしてくれた。
    言葉に対して敏感になるために日本語と向き合ってきたからこそ、本質を掴み平明に表現できるのだろう。

    必要な状況に応じて、ぴったりな言葉を選び取り表現する。本書はその訓練の方向性を確かなものにした。

  • 日本人なら日本語を話す(書く)ことができると思いますが(大坂なおみのように日本人でありながら海外生活が長く英語の方が堪能なケースもありますが)、日本語を使いこなすことができる人はどれだけいるでしょうか。

    例えば、「はっきりとした」を意味する言葉として「明白な」「明確な」「明晰な」「鮮明な」などがあります。

    文脈によって的確な言葉を使うことで、「はっきりとした」では表しきれない、奥深さを伝えることができます。

    本書は、このような事例を交えながら、日本語の奥深さ、表現の豊さを説くなど、参考になる箇所満載です。

  •  何の番組かは忘れたが、テレビのバラエティ番組でかつてのベストセラーとして紹介されていた。ずいぶん前に出版されていたのに知らずにいた。最近の自分の趣味に合ったので読んでみることにした。ただ読ませるだけでなく、タイトル通り練習問題を多用し解説しているので、最後までとても興味深く読み進めることができた。

     また学生のトレーニングとして読書感想文ではなく、既存の文章の縮約訓練を推奨している。著者が言うように読書感想文にあまり訓練効果が無いなら、これまで世の国語学者たちは何をしていたのかと言われても仕方がないだろう。これは早急に結論を見いだし、教育現場に反映させるべきではないのか。

     中でも面白いと思ったのは敬語の使い方だ。一般に敬語については、それだけでひとまとめの本になっているようだが、このように国語の解説の一部として取り上げでいるのはあまりなさそうだ。その中で太宰の「斜陽」に使われている敬語を批判している。確かに「斜陽」の敬語にはずいぶん違和感を持った。太田静子の日記を丸写ししたからそんな表現になったらしいが、そもそも太宰は津軽弁ばかりしゃべっていだろうから、正しい敬語や標準語など解らなかったのではないだろうか。

     志賀直哉が戦後の国語改革にあたり、日本語を廃してフランス語なり先進外国語を採用すべきと主張していたとは驚いた。そんなことにならずに良かった。いかに愚かなことか隣国を見ればわかる。漢字を廃してハングルのみにした半島の人々は、自分たちの古典さえ読めなくなってしまったという。わが国の国語も危うくローマ字や英語などにされるところを回避して本当に良かったと思う。

  • 日本語は難しい。
    毎日使ってるけど、間違うこともたくさんある。
    日本語の使い方を学ぶため、非常に良い本であった。

  • 日本語の難しさ、奥深さがひしひしと感じられる。また、自身の国語力の低さも痛感させられる。

  • 日本語は天然自然に伝わるものではなく、
    伝えたいことを正確に伝えるためには、一義的な日本語を使わなければならない。
    仕事でも行きてく上でも読んでおきたい一冊です。ハとかガの意味なんて、初めて考えました。

    #読書 #読書記録 #読書倶楽部
    #日本語練習帳
    #大野晋
    #2017年35冊目

  • 岩波新書のベストセラーにしてロングセラー。できれば学生時代に読みたかった。文法がどうこうという話だけでなく、その社会的・歴史的背景にまで考察が及んでいて、とても興味深く読めた。少し時間をおいて再読しようと思う。

  • これから作家を目指す若い方にお勧め。
    読解力強化月間中の自分には、少々ピントはずれでしたが、決して悪い内容ではないと思います。


    ↓以下、作者の意図とは無関係に勉強になった内容

    ・思う(1つのイメージをもつ事)、考える(複数を選択する事)
    ・最良(質が良いこと)、最善(行いが良い事)
    ・関係代名詞を直訳したような「ハ」は多用すると読みづらい。
    ・保留の為の「ガ、」が続く文は切り離して読むとよい。
    ・文章力の訓練に社説の「縮約」が効果的。(要約ではない)

    ・敬語はもともと「上下」でなく「内外」で区別されていた。
    ・謙譲語の使い方の間違いは意外と多い。
      例)○○さんは、おられますか(誤り)
        先生が申されました(誤り)

    ・志賀直哉は、フランス語を日本の母国語にしたかった。
    ・吉田健一の文章は政治家の演説。
    ・太宰治の『斜陽』の敬語には間違いがあって、志賀直哉に批判された。

  • これまで日本語というのは上手く書こうとか意識しないで書いていた。
    ずっと学校での国語の成績は良かったので、自分の文章は上手いものだと思っていた。
    日頃、余り文章を書く機会がないまま歳を重ねて、
    最近ブログやブックレビューを書こうとしたところ、
    あまりの書けなさに愕然とした。
    それで今更ながらこういった本を読んでいる。

    I. 単語に敏感になろう

    「思う」と「考える」、「嬉しい」と「喜ばしい」など、
    一見同義語に見える単語の細やかなニュアンスの違いに注目する。

    II. 文法なんか嫌いー役に立つか

    「は」と「が」の使い分けと様々な使い方を学ぶ。

    III. 二つの心得

    ・「のである」「のだ」を消せ。
    〜書き手の思い入れが強すぎる文章になる。
    効果的に、強調すべきところだけに使うのがよい。
    ・「が、」を使うな。
    〜逆説の「が、」はいいが、留保・抑制の「が、」を多用すると
    センテンスが長くなりがちで、不明瞭な文章になる。

    IV. 文章の骨格

    新聞の社説を400字に縮約し、さらにそれを200字に要約する。
    漱石の「こころ」前半15節の要点を、節ごとに30字以内で書く。
    さらにそれを7項目20字以内にまとめ、さらに4項目にまとめる。

    などのトレーニングを通じて、文章を書く前にメモを書き出し、
    組み立てていく方法を学ぶ。

    一つのセンテンスに色々詰め込まず、簡明な一センテンスごとに分けて
    それを積み重ねていく。

    V. 敬語の基本

    相手との関係性を意識した敬語、
    話の相手と話の中身とが違う場合の敬語など、練習問題が多数。


    また、語彙を増やすための読書や 
    手元に国語辞典や類語辞典を置いて気になったらすぐ調ることなど
    日本語を上達させる為のコツも紹介されている。


  • 良い読み手・書き手になるには
    →良質な文をまずは読むこと.
     引き出しを増やさないと.
     不適切な言葉に対する違和感をそもそも持てない.
     骨董品屋になるには,一流品をたくさん見ないとなりようがない.

    適切とは言えない表現は何からくるか
    →適切な語彙を知らない
    →事実を観る眼が曇っている

    新聞で1年間のうちに使われる単語の数は30,000。だけどそのほとんどが登場回数一回。
    生活に必要不可欠な言葉だけであれば三千程度。
    言語生活を営む者であればこの年に一度目にするかどうかわからない単語を収めていざという時に引き出せるかどうかが問われる

    「は」の働き→「一つのことを取り上げて、他の同類と比較する」が本質

    ①問題を設定しその下に答えが来ることを予約する

    山田くん"は"ビデオ視聴が大好き。
    →"は"の文を理解するには文末に注目。
     山田くんは→大好き

    ②対比
    一方佐藤くん"は"野球が好き。

    ③限度
    ケーキを6時に"は"持ってきてください。

    ④再問題化
    美しく"は"見えた
    訪ねて"は"来た
    →再審をにおわせる

    文章の難解さはセンテンスの長さに比例する。

    「が」の働き
    ①名詞と名詞をくっつける

    「は」→文末と呼応
    「が」→直後の名詞句と呼応
    私"が"田中くんに約束の時間"は"3時と伝えたの"は"、佐藤くんからその時間を聞いていたからだ
    →が:直後の名詞句との接続
    →一つ目のは:限定
    →二つ目のは:話題(伝えたのは)にたいする答え(聞いていたからだ)


    ②現象文を作る
    花が咲いていた
    鍵が見つかった
    →現象の描写
    →①と違い、"が"の直後が動詞

    花は... →すでに話題になっていた"花"に対する答え
    花が... → 新発見、新情報、新知識


    A...が、B
    逆説→ 晴れているが、寒い
    留保 → 彼は試験勉強に励んだが、試験予定日までまだ日があったので...

    →いずれにせよ「が」の後ろに文章の本体たる内容がくる。→読み手をもったいぶらせる書き方→わかりづらい→「A...が、B」は避けるべし。


    のだ、のである
    →お前の知らないことを教えてやる。ここはことさら大事な内容であるというニュアンスを含む(一般的には断定)


    縮約・要約
    新聞記事の縮約は良い作文練習になる  

    丁寧語、尊敬語、謙譲語、美化語

著者プロフィール

1919-2008年。東京生まれ。国語学者。著書に『日本語の起源 新版』『日本語練習帳』『日本語と私』『日本語の年輪』『係り結びの研究』『日本語の形成』他。編著に『岩波古語辞典』『古典基礎語辞典』他。

「2015年 『日本語と私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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