戦争で死ぬ、ということ (岩波新書 新赤版 1026)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310266

作品紹介・あらすじ

戦争はリアルに語られているだろうか?「大量殺人」の実態と、そこから必然的に生み出される「人間の感情」が見失われてはいないか?自らも戦後生まれである著者が、自らの感性だけを羅針盤として文献と証言の海を泳ぎ、若い読者にも通じる言葉で「戦争」の本質を伝えるノンフィクション。未来をひらく鍵がここにある。

感想・レビュー・書評

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  •  第二次世界大戦時にはどんなことが起こったのか? 軍は、ジャーナリズム(メディア)は、大衆は、技術者・労働者は、銃後の女性たちはそのとき何をしたのか? 一たび戦争を始めてしまったら人間はどうなってしまうのか? 様々な切り口で、当時のことが描かれていく。

     日本人が何をしたのか、米国人は、アジアの人たちはどうだったのかということにももちろん触れられている。しかし、戦争責任論(どこの国の誰が悪かったか)を問題にするよりもむしろ、どこの国家・国民であれ誰であれ、人間というものは、戦争になればこんなふうになってしまうんですよという視点でこの本は書かれている。そして「人間というものが引き起こす戦争とはどんなものか」ということに思いが至った時に、例えば馬鹿な挑発を繰り返している近隣某国や自爆テロをするイスラム過激派のことを「おかしな国」、「狂った人たち」の一言で片付けるのではなく、自分たちの問題として捉えなければならないことに気づく。

     戦時中でさえ(あるいは、戦時中であるからこそ)、多くの人が戦争を殺人であるとリアルに捉えることが出来ていなかった。この本で戦後生まれの著者は、多くの文献・証言と想像力によって戦争の「現場」をリアルに再現している。私も想像力を十分にかき立てて、これを受け取らねばと思う。

     戦争は過去のものではない。この本は、過去について考えるためではなく、これからのことを考えるために読むべきだと思う。

  • 戦争が出来る国に少しづつ変わっていっている日本で、そのことを意識している人達がどの位いるんだろう。
    一度始めたら、嫌が応もなく自分も他人も他国も巻き込んでしまうその恐ろしさ、非人道さを考える端緒をくれる本だと思う。
    戦争が始まってからでは遅い。始まる前に、第二次世界大戦で何があったか、何をしたか、経験者が何を思ったかを知り、始まらせないために何をしなければいけないのかを一人一人が考えなければいけない。

  •  戦争を知らない世代に向けて書かれた本で色々なことを感じた。一番大きかったのは自分が戦争を知らないことを知ったこと。兵器によって人がいかに残酷に死ぬのかを分かっていなかった。映像メディア等で戦争を知らないわけではないと思っていた。しかし映像では倫理的な問題で残酷な描写は放送しないのだろう。本では想像を絶する本当の死が描かれる。想像を絶するからこそ文字から想像する光景は脳に刻み込まれる。
     そして自分は日本の被害にしか目を向けておらず日本が侵略した国の被害を知らなかった。テレビドラマ等は神風特攻隊や空襲がテーマになりがちで日本が侵略した事実は無視されがちだ。しかしそこを知らなければ反日感情を理解することはできない。日本軍がどれだけ残虐なことをしたのか、そして残酷な目にあったのか両方を知らなければならない。
     戦争は関わる全ての人を傷つける。この本を読み正しい戦争は存在しないと改めて思った。現在もそしてこれからも戦争はなくならないだろう。そのなかで日本もまた憲法9条を改正(悪)して戦争への道を歩みだそうという動きがある。アメリカの陰に隠れて日本が戦争をしないことが偽善だというかもしれない。しかし日本は大戦後自衛隊が海外で人を殺していないことをこれからも続けていくべきだと思う。戦争への道を二度と歩んではいけない。それだけが先の大戦で亡くなった人たちの供養になる。
     この本を読み自分は戦争を知らないことを知った。戦争を知らないことは危険なことでもある。しかし自分は実際に戦争を知らなくてよかった、知らなくて幸運だと思う。だからこそ私たちは戦争を知る努力をしなければならない。再び過ちを繰り返さないために。この本を入り口に戦争についてもっと知り考えていきたい。これから日本の社会を担う世代の人全てに考えてほしい。
    小説とは評価基準が異なるが心に響き、人生において大切なことだと感じたので星5つ。

  • SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705608

  • 我が家は戦後65年とか70年とか区切りの年に広島と長崎へ行って戦争を伝える場所や資料館をめぐることにしているけれど、この本で書かれた死のリアルさは正直言って感じたことがなかった。
    江田島の資料館で特攻隊の方の遺書を読んだだけで胸が潰れそうになった自分としては、ここに書かれていることはとても読み難いことだったけれど、やはり知らなくてはいけないことだと思う。

    今は政治家を筆頭に想像力がなく他人への共感ができない人が増えていることも問題。読書はもちろんのこと、動物や植物とのふれあいも大事なようにも思う。
    戦争をやって良い思いをすることなど、銃後に隠れた一部政治家や利権を得られる人以外にはいないと実感しました。悪意の連鎖は断ち切らなければ。そのためには人を許す心の強さが必要ですね。

  • 日本で原爆開発が一応行われていたのは知っていましたが、小説などでガンガン紹介されていた、というのは知りませんでした。しかし、「空襲小説」というジャンルがなんとも…空爆ロボに匹敵するカテゴリー名ですね。

  • 2006年刊行。アジア太平洋戦争における日本人の体験談的叙述を広範囲で集積し、小説はもちろん、アニメでもなく映画でもなく、戦争の生々しさを伝達しようとする書。空襲・特攻・メディア・フィリピン(ゲリラ)・銃後の「おんな」・武器製造が主テーマ。引用文献・参考文献が多岐にわたり、最近では読まれることの少ないそれら戦争体験録のブックレビューの意義もあろうかと。「新憲法が発布されたとき…ようやく安心した…ああこれで特攻には連れ出されない。あんな苦しみから…解放された」という元特攻隊員の言。…。言葉が出ない。

  • 戦争は恐ろしいとしか言えない。
    人間を狂気に陥れる。

  • 人の命の重みと云うものはよく分からないが、その時代の日本に、敵の国に、今戦争をしている国に、戦争を繰り返そうとする日本に、人間がいると云うことを実感した。

  • 戦争ー古代から現代にいたるまで、数々の争乱、紛争などが多くありました。その中で、多大な犠牲と無関係な民衆・弱者が巻き込まれるものです。

    決して、美化されるものでも、肯定されるものでもありません。

    戦後に生きる著者が戦後の人間として、戦争ー肯定/否定論から入るのではなく、多くの参考文献やインタビューを重ねることで戦争の事実を浮き彫りにしていきます。
    新書でこれだけ読みごたえがあり、価格もお手頃であるのはいいと思います。

    そもそも戦争が何をもたらし、どのような問題を孕んでいるのかー人が死ぬ 人を殺す 殺した/殺された相手には家族や愛する人がいるーそういったことを含めて考えないと問題を深く読み解けないと思いました。

    欧米中心の主義主張を一方的に押し付けるのではなく、尊重できる部分と人権を侵害している部分などを考え、対話し、お互いに隔たりを少なくすることがこれから求められていくのではないでしょうか。
    cf.ODAの支援、アフリカなどの途上国への投資(現地住民の意思や雇用問題などを考えられるか) 

    ー賛成派ー
    国際協調 
    資金面だけではなく友好国との関係性を重視するべき 
    周辺国との関係がぎくしゃくしている中で、自衛権は持つべき
    日米安保条約など

    ー反対派ー
    憲法解釈ではなく、憲法改正で国民に訴えるべき
    自衛隊が戦争に行くことになれば、死者が出る恐れがある
    徴兵制も復活するのではないかなど

    第一次・第二次世界大戦を経験してから国際的には軍縮や武器の保有量を削減し、各国に自制を求めてきました。
    ただ、
    ・世界の警察と言われていたアメリカの経済の悪化
    ・中国の台頭
    ・ロシアのクリミア編入問題
    ・イラク、アフガニスタン、シリアなど中東での内紛及び周辺国との関係悪化

    まさに、世界的に緊張状態にある今考え、話すべき問題だと感じました。

    参考
    トゥキュディデスー戦史(岩波、中公クラシックス等)
    ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?(講談社)
    ぼくの見た戦争 2003年イラク 高橋邦典(ポプラ社)

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