ノモンハン戦争: モンゴルと満洲国 (岩波新書 新赤版 1191)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311911

感想・レビュー・書評

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  • ユダヤとドイツ側で、ホロコーストとジェノサイドと呼ぶのが異なるように、ノモンハンについても同じなんだな。ノモンハン「事件」だと思い込んでいた。
    まさしく、プロパガンダに嵌め込まれていたわけだ。
    また、満蒙と言う呼称は「満州国とモンゴル国」ではなく満州国に属する東部内モンゴルを意味する、と。

    満州国側よりもモンゴル側に寄った内容だったかな。
    モンゴル人の名前が慣れないので、中々頭に入ってこないが、満州を知る上では仕方がないな。

  • 2009年刊行。ソ連、中国(清朝から中華人民共和国まで)、そして日本(含む満洲国)といった大国に翻弄され続けたモンゴル。ノモンハン事件を切り口とし、事件前後におけるモンゴルの大国との奮闘史を描く。特に、ソ連(スターリン)への砂を噛むような外交努力は、モンゴル研究者たる著者でしか描き得ないだろう。旧満洲国~現在のモンゴル共和国~ロシア領内バイカル湖周辺まで及ぶモンゴル族の統一・独立機運、すなわち汎・モンゴル主義がソ連・日本にとって脅威であったし、現在の中国でも脅威という点は興味深い。視点転換に有益な書。

  • ノモンハン戦争をテーマに、辛亥革命から今まで残る汎モンゴル主義や、ソ連によるモンゴル人民共和国の政治的虐殺、満州国による満州国内モンゴル民族地域での弾圧、などを解説していく。ノモンハン事件は、両国に分断されたモンゴル人の接触機会として模索され開始した後、ソ連と日本満州によって大々的な衝突へとつながった不幸を持つ。講和会議でも両者はモンゴル民族の統一阻止を最重要視していた。今では、ソ連、中国、モンゴルに分断されたモンゴル民族。中国国内の内モンゴル自治区にはもうモンゴル人は少ないと言われており、ソ連によって建設されたモンゴルという国の歴史の悲劇を伝えている。ソ連崩壊でソ連の軛から開放されたモンゴルは、これからどういう道を模索していくのだろうか。

  • とりあえずこれも、満州界隈の読み物ってことで手に取ってみた。でも、大まかな流れくらいしか知らず、小説くらいでしか読んだことのない状態だと、ここに書かれている内容はちょっと細かすぎて手に余る感じ。という訳で、この時代にもう少し詳しくなったら読み直すかもだけど、今のところは積読ことにします。

  • 1939年,モンゴルと満洲国の間で国境線をめぐって争われたノモンハンの戦いでは,双方の死傷者・行方不明者が2万人にも達した.これは単なる事件ではなく明白に戦争であった.歴史的・地理的条件から説き起こし,最新の研究成果にもとづいて,その真相を明らかにしながら,前史から終結までを生きいきと描きだす.

  • 関東軍が背後に控える満洲軍とソ連が背後に控えるモンゴル軍による衝突「ノモンハン事件」をこれまでにない視点でとらえたらしい本書。

    正直予備知識がなかったので、背景、経緯、戦術レベルまで概要がわかるとよいと思って手にとった。

    しかし、この本は従前の戦術局面にフォーカスしたアプローチにアンチテーゼを示し、むしろ2代大国に翻弄され2陣営にわかれ、指導者をソ連や日本に暗殺されながらも最終的に独立を掴み取ったモンゴル人を中心に展開される。

    従来の史実を十分に知っているうえで新しい視点として読むべき本の様ではある。

  • 著書の主張通り、いわゆる戦史ではない、奥深い近代史に触れることができた。

  • 日中戦争の最中、
    1939年に勃発したノモンハン戦争について記した一冊。
    戦争の経過については序盤にさらりと触れられるのみで、
    紙面の多くを背景やこれに至る経緯の解説に割いている。

    黄禍論としての汎モンゴル主義を
    モンゴル民族に限定させることで逆に利用し、
    モンゴル人民共和国を縛った上で
    関東軍を誘い込んだソ連のしたたかさが興味深い。

    またソ連と中国、日本に翻弄され続けた
    モンゴル民族の歴史に触れることができ勉強になった。

  • ノモンハン事件の概略について書かれた本

    ソ連の戦車部隊に対して、日本軍は日本刀や、サイダーびんにガソリンを詰めた火炎瓶で戦車の下に投げ込み炎上させ、捨て身の戦術で襲いかかったみたいだけど、正気の沙汰とは思えない。それで「玉砕」したら、護国の神として拝められる。
    →この経験を活かしていたら、太平洋戦争でもあのような敗北は無かっただろうし、もう少し機械化(戦車の導入など)進んでいたのではないかなと思う。

    この戦いでソ連の圧倒的な数量と性能の戦車と、航空機に対し、日本軍の貧弱な装備でよく戦ったとあるが、結果的に日本は敗北しているわけだし、どうなのだろうか…
    →負けても次に活かすことの大切さだと思う。

    モンゴル人民共和国(当時、外部との交流をソ連により遠ざけられていた。ベールに包まれていた)は、日本によって成立した満州国に対して好意的に捉えていた。楽園に近いとも思われていた。しかし、日本が満州国のモンゴル人代表リンション興安北省省長を殺害したため、モンゴル人民共和国は満州、日本を信じなくなった。というのも、それまでソ連のモンゴル人民共和国の対応は、抑圧に近く、ソ連の方式を強制的に取り入れさせる形に近かった。しかし、日本の満州に対する対応はそれよりは自由が認められていた。
    →日本も満州国を傀儡国として扱っていたにせよ、ソ連よりは自由度が高かったはず。一時の感情ではなく、長期的な視野で満州国に対して対応していれば、もしかしたらモンゴル人民共和国が日本側についていたのかもしれない…たらればの話だけど。

    かなり前に読み終わった本なので、感想も曖昧で忘れかかっていた。
    これからは、読んだらすぐ感想を書こうと思った。
    結構、深いところまで突っ込んでいて難しかった。でも所々ではっとする所があった。

  • ノモンハンは日ソの戦いとのみ認識し、満州とモンゴル、「満蒙」の関係については認識していなかった。
    しかし、この本でモンゴル側から見た満州、中国について理解できた。

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著者プロフィール

一橋大学名誉教授

「2021年 『ことばは国家を超える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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