- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004315339
作品紹介・あらすじ
財団法人東京子ども図書館を設立、以後理事長として活躍する一方で、児童文学の翻訳、創作、研究をつづける第一人者が、本のたのしみを分かち合うための神髄を惜しみなく披露します。長年の実践に力強く裏付けられた心構えの数々から、子どもと本への限りない信頼と愛が満ちあふれ、読者をあたたかく励ましてくれます。
感想・レビュー・書評
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東京子ども図書館理事長、児童文学の翻訳や創作されている松岡享子さんによる子どもと本のお話。
子どもと本の関わり、図書館というものがどのように変わってきたのかなど。
【赤ちゃんと本】
子どもが自分から興味を示すのでなければ、無理に早くから絵本を読む必要はない。まずは人とのコミュニケーションなどにより言葉の土台を作る。赤ちゃんに言葉や情緒を育てるためには、絵本を仲介にするのではなく、まずは親が直接向き合い、赤ちゃんに自分の気持ちをわかってくれる人がいるという気持ちをもたせてることが必要。
⇒近年幼児から読み聞きかせが推奨されますが、幼児教育とか効果を期待したり、子どもが喜ぶ本と大人が与えたい本の違いで考えたりという感じもあります。
まずは信頼関係が築かれてから、コミュニケーションということが最初ですね。
私の場合は自分が本(物語)が好きなので、子供たちには本を読みまくってきましたが、長男も娘もほとんど本には興味を持っていないように成長しております(;_;)。次男は少しは読むので、一緒に本の話をしていきたいんだが。
【幼児と言葉】
文字を知ると意味を先に捉えてしまい、音の楽しさや、想像を広げることができなくなってくる。そのため無理に言葉の読み書きを急ぐ必要はない。耳からの言葉は心のそこまで響いている。この言葉の力を受け取る能力は、文字を覚えると低下してしまう。読み手の言葉を聞き入る場合は物語の奥深くに分け入るが、覚えたての文字をただ追うのは事実や現象の追認になってしまう。
【童話や昔話】
昔話では登場人物たちが平坦で感情が書かれていない。しかしそのために聞き手は主人公と一体になりお話の展開を楽しむことができる。ここで聞き手が求めるのは何故という動機ではなくてどう行動したのか。
童話では残酷な描写もあるが、登場人物が平坦であるために、自分の肉体的苦痛として味合わずに済む。
心理学では、人の無意識には層があり、そのなかでも民族などの集団的無意識があり、さらには人類共通の普遍的無意識があるという。
そして人間の抱える悩み、人間が成長するための心理的葛藤が、解決も含めて昔話とぴったり重なることがあるという。昔話は人間の奥底で起きるドラマであり、現実の人間社会とは違う原理で動いている。
そのため、辻褄が合わないということもあるがそれは重要ではなく、平坦(聞き手が同調しやすい)な主人公が、危ない目に合うがそれを乗り越えるという展開が必要。
昔話でたっぷり想像力をふくらませることは、現実社会に対応する心の力を強くすることにもなる。
⇒近年よく出ている「本当は怖いお伽噺」「お伽噺の真相を探る」みたいなのは、やりすぎると野暮になるような気はしています。
私も昔は物語を「紙の上の話」として捉えていたのですが、だんだん文字として読んだり、現実として考えるようになってしまって楽しめなくなっている部分はある。
【図書館史】
世界の、そして日本の図書館史が語られる。
ここで語られるアメリカでは、向上心と自立心を育てるために図書館を推進すること、そのために「こどものための図書館」というの精神と取り組みが行われたというのが羨ましい限り。
日本でも明治時代に図書館を教育と知識と娯楽を得るための機関として作ろうとしたという。しかし手続きがやたらに煩雑だったり、図書館司書が少なかったり、子供の周りにし全日本があるということは二の次になったりしてしまっている。
⇒日本において、子どもに本というと、自然に親しむというよりなんか特別なもの、教育の一環、努力するもの、になっているような。
本書でも、アメリカや日本でも子供たちの周りにごく自然に本を触れ合えるようにしようとした人たち、そして現在でも子供の近く日本がないなら本をもって子供たちのところに行こう、という読み聞かせや自家図書館ボランティアの方々の活動が書かれているが、本というものが自然に近くにあるものであれば良いね。 -
中野区にある東京子ども図書館は、その佇まいだけでひとを魅了する。中はより一層。
ここで本を選べる子どもたち、お話会を楽しむ子どもたちはなんて幸せなことだろう。
「自分が子供の頃にもこういう場所があったなら。」
訪れた多くの人から同じ感想が漏れるらしいが、館長である著者は決してそれを喜ばない。
「ここが特別の場所であってはいけないのです。
どこに住んでいても、子どもが歩いて行けるところに、
これと同じ図書館があるのが本当なんです。」
名称に「東京」と入るから、私はてっきり東京都の施設だとばかり思い込んでいた。
しかし、1974年の設立時から公的な助成も企業の援助も一切受けずに、ぎりぎりの財政の中で運営してきたという。しかも児童図書館員という名称さえなかった時代からである。
図書館員を志すまでの様々な体験と出会いがこの本の前半部分で語られ、まさに目からウロコ。
留学先のアメリカで勤務した図書館での経験から、日本の現状を見た際の義憤。
道を拓こうとする過程で、渡辺茂男さん・石井桃子さん・松居直さんという、児童文学の先達者たちの名前も次々に登場する。
語りかけるような優しい言葉の底に、掲げ続けた理念と子どもと本への限りない愛情をひしひしと感じる。
多くの子どもたちと接してきた体験を裏付けにした、昔話への深い理解も語られる。
「子どもが心の奥深くで求めているものを、子どもによく分かる形でさしだしたのが昔話」
繰り返しお話を聞くことで自分だけの空想の世界を持つようになり、そこに逃げ込み休憩し、新しい戦いに備えて力を蓄えることが出来るという、力強い励ましの章だ。
そして「本を選ぶことの大切さと難しさ」も語られ、図書館がはっきりした選書方針を持つこと・選書の仕組みを作ること・図書館員の資質を高めることと、力説する。
それには、図書館員ひとりひとりが、子どもたちと向き合うことが基本であると。
子どもの心を育む上で、本以上に大切なことがあるのだとあらためて学ばされる。
巻末には「文中で挙げた人名・書名・その他について」が載せられ、大変丁寧で親切なつくり。
子どもに本をおくる活動をされているすべての方におすすめ。
汲めども尽きぬ泉のような子どもと本への深い愛情に包まれ、しみじみと幸福な読後感だった。-
淳水堂さん、こんにちは(^^♪
こちらにコメントを下さりありがとうございます。
自分の本棚で探すのは結構面倒で(笑)とても助かります。
...淳水堂さん、こんにちは(^^♪
こちらにコメントを下さりありがとうございます。
自分の本棚で探すのは結構面倒で(笑)とても助かります。
のっけから現実的な話になりますが、図書館関連のお仕事は案外力仕事なのです。
表向きにされることは少ないのですが、本が重い!!
登録でも修理でも貸し出しでも、常に重い本を持ちあげることを想定範囲に入れてください。
何冊も運ぶときは(狭い場所で台車も使えないことが多い)泣きたいくらいです。
淳水堂さんはハードカバーの本を持ち歩きできるくらいですから大丈夫かもしれませんが、力のない私には辛過ぎました。
なので、私が関わっているのはお仕事ではなく全てボランティアのお話会のみです。
ごめんなさいね、お力になれなくて(+_+)
小さい子から中学生(こちらはフリースクール)までですが、時に大人向けもあります。
日ごろの勉強が如実に表れるので学習は欠かせません。それが一番楽しいかな。
図書館のHPを見ると職員募集がたまに載っていますね。
お近くでそれが見つかりますように!2020/10/28 -
nejidonさん
いきなりこんな場所での質問にお答えいただきありがとうございます。m(_ _)m
図書館求人情報を確認していますので、...nejidonさん
いきなりこんな場所での質問にお答えいただきありがとうございます。m(_ _)m
図書館求人情報を確認していますので、また続けて情報探してみます、ありがとうございます!
はい、本は700ページまでは重くありません(笑)が、さすがに大量の本を運ぶのは違うのはわかってます(笑)
これからも良い本や、おはなし会のことを教えてしてくださいませm(_ _)m2020/10/30 -
淳水堂さん。
こちらこそ、お役に立てなくて大変心残りです。
よく利用される図書館がありましたら、そっと聞いてみるという手もあります。
...淳水堂さん。
こちらこそ、お役に立てなくて大変心残りです。
よく利用される図書館がありましたら、そっと聞いてみるという手もあります。
公募にこだわらなくとも、人手不足ということがありますので。
あるいは図書館のお話会に参加させてもらうという方法もありますね。
お好きな仕事に就けるのが一番です。諦めずにあたってみてください。
言い忘れましたが、ワタクシは生業を持っておりますのよ、これでも。
そちらも死ぬまで続けたいほど好きなものですから、他はボランティアにならざるを得ないというわけです(*'▽')2020/10/30
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「松岡享子」訳という絵本を、手にとったことはありませんか。
もし松岡享子さんのお名前を知らなくても、「ものぐさトミー」や「ちいさいおうち」、「くまのパディントン」「しろいうさぎとくろいうさぎ」などは聞いたことがある方は多いでしょう。
これらはもちろん、松岡享子さんによる訳です。
私は松岡享子さんは絵本訳者だと思っていましたが、東京子ども図書館理事長であることや、アメリカで図書について学ばれ働かれていたことを本書で知りました。
本書は、松岡さんの子どもと本への愛情にあふれています。
薄い新書であるにも関わらず、子どもに本が必要な理由、物語の力、著者自身の図書との歩み、これからの図書館のあり方などが、優しい語りで濃厚に書かれています。
さらっと、なんて読める本ではありません。
もったいなすぎます。
読み終わるまでに6日かかりましたが、ゆっくりじっくり、語りを自分に取り込みながら読め、読み終わったときはエネルギーを使いすぎて少しぼーっとしてしまいました。
この本ほど、本の良さを伝えてくれる本はないでしょう。
いちばん好きなのは「本は読まれてこそ意味が生じる」「読者がその本をどう受け止めたかによって、よいわるいの評価も生まれる」という所です(第4章参照)
その本を読んだ自分が、どう感じたかをいちばん大切にすればいいんだよ、と言われた気がして嬉しくなりました。
著者が大阪の図書館で働いてたときのことも書かれていますが、当時はこどもが図書を借りるため、図書カードを作るためにこんなにも高いハードルを越えなくてはならなかったの?!と、驚きました(第5章参照)
私が本を好きになるきっかけは、小学生時代の町の図書室でした。
まだ手書きの貸出カードの時代で、他の図書館から本の取り寄せなんてありませんでしたし、児童図書も貧弱でした。
それでも毎日のように通い、本を借りて読んだその経験があったから、著者の言う「物語の力」を子どものころに味わえました。
うつになったあと、いまも本に助けられています。
子どもに本をどう届けたらいいのか、悩んでいる親御さんや図書に関わる方に、ぜひオススメしたい本です。
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最後の1年ちょっとのお付き合いでしたが、優しく愛らしい人柄そのものの語り口で「子どもと本」を語る著者の眼差しが感じられます。
一度でも、読み語りを聞きたかった。 -
やや時宜は逸したが、追悼の意も込めて読んでみた。
いかに子どもと本を愛しているかが伝わってきた。
私も子ども時代に読んだ本や図書室の匂いなんかを思い出して、なんだか胸がキュっとなりながら読み進めた。
子どもの名前を使った創作語り聞かせ、娘がもう少し大きくなったらやりたいな。 -
親を始め、子どもと関わる人すべてに読んでほしい本だと思います。
「とりたてて親に本を読んでもらったり、お話をしてもらったりしたことはない」
というのは私も同じ。
なので、「子どもを本好きにするには、どうすればよいか」という問いに対し
「生活のなかに本があること、おとなが本を読んでやることのふたつ」のふたつめはどうかと思いますが、ひとつめは間違いないでしょう。
「子どもが自分から強い興味を示すのでなければ、無理に早くから絵本を読む必要はないと思っています。(中略)絵本に手をのばすまえに、もっと大事なことがあるのではないかと思うからです。
それは、ことばの土台をつくることです。本は、所詮ことばでできているのですから、本を読むためには、ことばの力が必要です。」
思い当たるのは、日本語教師をしていたために、言葉がけには気をつけていた自分の経験。
そして、絵本を与えるときはできるだけ読み聞かせをして、子どもには、絵と耳からの音を十分味わってもらいたいという思いを強くしました。
後半の松岡さんの働いていたアメリカの公共図書館のモットー
「The Staff Makes the Library(図書館をつくるのは職員)」
という言葉も身にしみました。
松岡さんが危惧されているように、この本の書かれた2015年以降も、図書館の置かれた状況は悪くなる一方のような気がします。
図書館の貸本屋化に歯止めがかかることを願わずにはいられません。
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あ、なんかうまく言えへんけど、こういうのが本来の「本」やったんちゃうかな、とか思った。静かやけど、伝わってくるものがある。ぜんぜんいやらしさもなく。このひとが書くと、絵本ってそんなにいいものか、とかって思ってまうもん。子どもの発達についての知識もちゃんとあって、信頼できる。文字の大きさとかも、ぜんぶがよく見えた。いい本に出会えた。
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文字をもたない民族は口承で伝える力があるため、いくつかの物語を暗誦できる。しかし文字を覚えてしまった途端、それができなくなってしまう、という話が印象的でした。アイヌ民族もそうだったなと。
"文字を習得することで失う力"。
そこから筆者は、早いうちから読み書きを学ばせることの危惧と、子どもたちへの読み聞かせの重要性を説くわけですが、考えが斬新で、新しい視点を得ることができました。
「昔話」のくだりもとてもよかった。
ただ全体が筆者の「伝えたいこと」や「思い」にフォーカスされてしまっていて、ある種、かたよった育児ハウツーっぽくなってるのが、少し違和感でした。 -
大学で図書館学科を専攻し、渡米。
アメリカで働いた後帰国し、公立図書館に勤めるも退職し自身で私立図書館を開館し長きに渡り運営される筆者の考える「図書館」や「子どもと本」の在り方について書かれた一冊。
心理学的な本を読んでも何でもそうだ。
結局は日本という国の制度が人を育てる組織形態になっておらず
それぞれの文化的ジャンルにおいて、人が育っていない現状。
その上でこれからの時代を生き抜く私たちはどうすることがよいのか。考えさせられた。
これは良い本ですよね!私もよーく記憶しています。
松岡さんの講演会に出向く前に、これを読んでおくといいよ...
これは良い本ですよね!私もよーく記憶しています。
松岡さんの講演会に出向く前に、これを読んでおくといいよとお仲間さんにお勧めしたことがあります。
どういうわけか、誰も感想を言わなくて困り果てました。
読み聞かせ仲間だからと言って、本好きとは限らないようです。
そんなことを思い出しました。変なコメントですみません。
いいねとフォローありがとうございます!
本棚見させていただきましたが、同じような本を登録しています(^0^)/
...
いいねとフォローありがとうございます!
本棚見させていただきましたが、同じような本を登録しています(^0^)/
そのうえ、子ども三人で上の二人が本に興味なしなところも同じですね^^;
>英才教育のような感覚で行っていたような気もして反省しています。
いえいえいえ、書いていらっしゃるとおりに、膝抱っこでの貴重な時間を過ごされたのですからとても貴重だと思います。
私も自分の子供への読み聞かせが楽しくて(子どもより自分が楽しかったかも^^;)、
そのまま小学校読み聞かせに参加しております。
こちらの「子どもと本」は、子どもと本との関わりや、お話が人のに与える心理学的お話もあり楽しく読めました。
またアメリカや日本の図書館の歴史というか成り立ちも書かれていますが、
子どもに本を楽しんでもらおうとした人たちの姿がとても良いです。
これからもよろしくお願いいたします。
同じような体験をされていて、嬉しいです。
うちの上二人も今は本に興味ないですが、...
同じような体験をされていて、嬉しいです。
うちの上二人も今は本に興味ないですが、どこかで読み聞かせのことを思い出してくれたり、いつか本に興味を持ってくれることに繋がるかもしれないと思ってます。
「子供と本」いつか読んでみます。
今後ともよろしくお願いいたします。