- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004316411
感想・レビュー・書評
-
古くは『坊ちゃん』から、最近の『永遠の0』までの文庫本解説を、著者の独断と思い切りの良さで一刀両断し、まるで凄腕の剣豪小説を読んでいるかのよう。
楽しく爽快感をもって、たちまち読み終えた。
解説とは読者のためであるべきはずが、しばしば「著者のため」、あるいは解説者自身の「自分のため」に陥っていると看破する。
確かに何を言いたいのか理解できない解説や、ちょうちん持ち的解説をよく目にする。
本文で偉そうに断言した著者が、自分自身も解説を書いていることに思いを致し、冷や汗タラタラ、プレッシャーを感じてしまったと、あとがきで書いているのはご愛敬(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著名な作品につけられた「解説」。適当に読み流しがちな解説はよく読んでみると実はかなり面白い。独りよがりな解説、作品には殆ど触れず作者の生き様模様ばかり書かれた解説、似たり寄ったりの解説、話があらぬ方向にぶっ飛んじゃう解説、、、。笑える本でした。
-
名作とベストセラーが綺羅星の如く並ぶ文庫本。その巻末に併録されている、所謂「おまけ」である解説。本書はこれを主役に据え、毒ある筆致で寸鉄釘刺す「解説の解説」書。誰しもが知っている不朽作品のあらすじと作風と時代背景をさらりと舐め、いよいよ“なっとらん解説”の中枢へ。筆法はあくまでも鋭く容赦なく遺漏なくぶった斬り。その多くの指摘は至極尤もで、作家先生ご指名の御用文芸評論家によるものも多く、解説の解説が必要とする「屋上屋を架す」ような難解極まりないものに出くわし、著者は原理主義的命題に辿り着く。「はたして、解説はだれのためのものか」。初読者への理解促進をミッションに掲げるわけでもなく、読書の愉しみをプロモートする任務を買ってでることもなく、言辞遊戯に没入する独善的文芸評論家に筆誅を喰らわす。中々痛快な本ではありますが、文芸に明るくないと、その小気味さを玩昧できないという絶対条件があることを付記しておきます。
-
いくら素晴らしくても、いくら「なんだよこれ」な内容でも評価されず放っておかれることがほとんどの文庫解説を、こんなにきっちり読んで評するなんて。相変わらずすごい人です。
-
さまざまなる文庫解説の類型。
・その作家専属の解説者の存在
・内容に関係ない解説者の自分語り
・著者との仲の良さの自慢タイプ
・教訓読み取り型、あらさがし型
・解説され損ねるタイプの作家
などなど、ああ小宇宙。 -
前半が面白かったけど後半は息切れした感じ。「なんとかつっこもう」として頑張っている感あり。
-
面白かった-。「岸信介の孫という以外のアピールポイントはべつにないのに」とか曾野綾子かーとか,吹いちゃうところ多しという理由もあるけど,なるほどねぇと思わされるところが多い。「よくわからないけど,スゴイらしい」になっちゃうというのは本当にそうだと思うし,「作品を相対化する視点がまったくない」のはまさに私で,良い解説とともに読みたいなぁと思った。
いろんな本を読んで・読み返してみたくなる。とりあえず走れメロスかな。 -
岩波新書は、大学の般教の授業に相当するレベル。高校生でも社会人でも手に取れる知識や教養の入り口。高校時代そう言われて読んでいた。
新赤版になってから、くだけた内容の物が増えて、それが悪いとは思わないが、ちょっと語り口が雑誌っぽすぎるのが、最初は良くても、うーんと唸った。但し…ここに取り上げた本たちの解説が
「これ読まないと、本当にこの本は分からない?小難しいなあ…あってもなくても変わらないよ。」
と感じた経験は、私に限らず誰にもあるだろうし、それはちっとも変じゃないんだよと提示したことには意味があると思う。
わかりやすいイコール低俗
わかりにくいイコール高尚でお偉いもの
という誤った定義は、未だになんとなくはびこっているし、おエライはずの作品群も、自分なりに読みこなせれば、その時点で面白い本になりうる。やわらかい本だって、読み手の嗜好に合わなければページを閉じられるだけのこと。
解説って、1ページでも読み進めてさせるヒントだったり再読してみようかと思わせて、本を古書店に持っていくのでなく、本棚の常連にさせ、他のものも読もうかと思わせるためにあるのだから。へんてこりんな教養とか権威とか、まして
「これは俺や私には解っても、お前には分かるまい。だって作者と同じところにいるんだよ私は。」
なーんて自分自慢はいらないのだ。そこを喝破した本書は本当に痛快ではあるし、解説から、ちゃんと近代から現代にかけての文学論や教養主義に対する批評になっているのは、さすがプロのお仕事。特に、文学史的には最近の本だけど、普通の読者にはちょっと古くなった本、の分析的な読みは、地口の軽さに紛らせても、やはり鋭い。
逆に、わかりやすくて言いたいことをはっきり言っている、『わかる文学論』として本書を楽しむ時、女性雑誌っぽい、ネット語っぽいおしゃべりが、かえって邪魔になることがあって。
うわぁ、そんなに軽く喋らないでも、わかりやすい
から、その飾りを省いて下さい…。
と疲れたのも本当。
冒頭に書いたように、岩波新書が、すべての人の教養の、良き入り口としてありたいなら。この本の語り口が岩波新書と思って、他の本に手を出した時、読者が、内容もろくに見ないで本当は面白いかも知れないのに。
「あ、やべ…斎藤さんの本と違うノリ…。
やーめた…」
となりかねないから…最低限崩しすぎず、わかり易さ明快さだけは維持して欲しかった…。
教えてgooなんか、誰でも書けるんだから引き合いに出したらいかんよ。メディアリテラシーって意味では、未だ紙の本の信頼性って高いのだから…。
品下らず、明快。平易。
これ、文庫解説にも通ずるし、新書で執筆する時の
ルールでもあると思う。読者に媚びず、普通の地の文で、これを書いて欲しかった。
難解すぎるのもノーサンキュー。でもブログや2chの親戚みたいなスタンスも信じられないからよして欲しい。
頑張れ!岩波新書!
頑張れ!文庫の中の名作たち! -
文庫本の巻末にある「解説」を解説した本。解説付きの文庫本を読みたくなった。「坊ちゃん」「伊豆の踊子」「雪国」「走れメロス」「放浪記」「智恵子抄」「悲しみよこんにちは」「ティファニーで朝食を」「ロンググッドバイ」「グレートギャツビー」「ハムレット」「小公女」「ヨーロッパ退屈日記」「女たちよ!」「武士道」「葉隠」「赤頭巾ちゃん気をつけて」「なんとなくクリスタル」「君たちはどう生きるか」「資本論」「されどわれらが日々」「優しいサヨクのための嬉遊曲」「モオツァルト」「Xへの手紙」「三四郎」「友情」
-
文庫の「解説」を読んだ本。
覚醒するような読みかたってやっぱりあるんだな。美術や音楽の解説やガイドも同じよなぁ。