「オピニオン」の政治思想史: 国家を問い直す (岩波新書 新赤版 1876)

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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318767

作品紹介・あらすじ

現代におけるデモクラシーの危機。それは、世界の大規模な変容の反映である。この危機を生き抜く鍵は、人々が織りなす「オピニオン」なる曖昧な領域と、その調達・馴致の長い歴史にある。国家にかかわる思想史をオピニオン論で再解釈することで、大きく変化しつつある政治の存立条件を未来まで見通す、斬新な政治学入門。

感想・レビュー・書評

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  • 明快な視点から繰り広げられる、国家と政治の歴史。最高でも最善でもないが、それでも最もマシなデモクラシーに対して、如何にオピニオンを調達するか。本当に面白かった。自分もこのような文章を書きたい。

  • 国家が存在する意義を考えるきっかけになった。自由が謳われる民主的な国とはいえども、過度に保守的だったり、資本主義の行き過ぎから格差がどんどん進むにつれ、何のために国家があるのかを考えることはたまにある。近年ナショナリズム的な扇動活動を見かけることも少なくなく、もはや時代遅れの排他的な枠組みなのではとも思ったりする。そのような中で、国家の起源とそれに付随する思想を振り返ることで、その両義性を理解することができ、これからのあり方を模索する機会を与えてくれた。

  •  本書でいう「オピニオン」とは、ある体制や秩序を受容する人々の共有意思、といった意味のようだ。その担い手も対象も、時代により変化していく。
     絶対王政の時代は個人としての王ではない王朝(本書では「死なない王」と表現)による統治の受容と、名誉革命のような少しの反抗。フランス革命後は担い手は平民に広がり、また徴兵により愛する祖国を守るというオピニオン(後にナショナリズムと呼ばれる)調達が必要になる。20世紀には戦争の違法化という国際秩序を支えるオピニオンも登場。
     他方、著者も認めるとおりガチの政治思想史ではない。第6章で人の不死やAI兵器も出てくる。オピニオンか現実の体制か、はたまた人間の尊厳を論じたいのか、難解ではないがふわふわした感じの本だった。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1876/K

  • 311.2||Ts

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著者プロフィール

1966年生まれ。1989年慶應義塾大学経済学部卒業、1996年ケンブリッジ大学Ph.D取得。現在、慶應義塾大学法学部政治学科教授。専攻は近代政治思想史、フランス自由主義思想。主要著作に、『コンスタンの思想世界 ―― アンビヴァレンスのなかの自由・政治・完成可能性』(創文社、2009年)、「コンスタン ―― 立憲主義の基礎づけを求めて」宇野重規編『岩波講座 政治哲学3 近代の変容』(岩波書店、2014年)、「ルソーと東アジアのデモクラシーの未来」『法学研究』(85巻6号、2012年)、“Nineteenth Century French Liberalism: Its Belated Victory and New Challenges”, Keio Journal of Politics, no. 13, 2008、「ケンブリッジ・パラダイムの批判的継承の可能性に関する一考察(一・二)『法学研究』(72巻11号、73巻3号、1999―2000年)、「自由のパラドックス ―― ルソー・コンスタン・バーリン」『思想』(883号、1998年)、など。

「2016年 『政治思想史入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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