文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

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  • / ISBN・EAN: 9784006020019

感想・レビュー・書評

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  • インパク知 7・7

    大学教授、唯野仁をとりまく大学内の政治状況と、彼が行う「文芸批評論」という講義が交互に描かれた、全九章の小説。文学批評の大きな流れと主要人物が、唯野教授の軽快な口調で語られる。文学版「ソフィーの世界」といったところか。

    文学を志す学生さんなどには必読書であろうし、専門書と行き来して、大枠を確かめつつ具に知る、ということができそう。 小説、と書いたが、これを「小説」だと読むよりは、入門書だとするほうがしっくりする。

    文中の「貴族的な読者」という部分には、非常に納得した。結局、文学は時間的にも金銭的にも裕福な、「貴族」のお遊びに過ぎない(ニュートラルな意味で)。

  • 早治大学文学部の弱小教授、唯野仁は、魑魅魍魎が跋扈する学部内政治に翻弄されながらも、ペンネーム野田耽二で密かに小説を書いている。しかしてその志は、「新たな文学理論の確立」。

    本書では、唯野教授が立智大学で非常勤で受け持つ「文芸批評論」の第1回から第9回までの小難しい講義の進行と共に、嫉妬が渦巻く幼稚でドロドロした学内政治ドラマが展開していく。

    学内政治のパロディはリアリティがあって面白かった。残念ながら、現象学、解釈学、記号論、構造主義、ポスト構造主義など、唯野教授の講義は難解でちんぷんかんぷん。フムフムと分かればカッコいいんだろうけどなあ。

  • もうこんな大学ないと思うのだが、それでも少しあってほしいと思うし、
    こんな教授いはしないと思うのだが、それでもいてほしいと思う。
    惜しむらくは、読者には前期の聴講しか許されていないことだ。

  • 主人公の唯野仁は、早治大学英米文学科教授であり、「野田耽二」というペンネームで小説を執筆しています。本作は、彼を中心にアカデミズムに生息する者たちの生態をアイロニカルに描き出している小説ですが、同時に現代文学理論について学ぶことができる内容になっています。

    唯野の後期の授業や、野田耽二の作品『海霧』などについて、もっと知りたいと思わずにはいられません。著者に続編を書いてほしいという声は少なくないと思うのですが、現在までのところ『文学部唯野教授のサブ・テキスト』(文春文庫)が出ているのみで、正式な続編は執筆されていないようです。

  • 本気の実験的な小説って好きなんです。
    作家の教養がビンビンに伝わってきて、それでいて知識のひけらかしになってないから、作品に緊張感が保たれています。

    「もっと勉強しましょうね」

    唯野教授の学生に向けたこの言葉は、作家、批評家、ひいては我々のような読者にも向けられた言葉なのだと思います。

  • 講義の部分は「文学ってこういうことなのかぁ」などと感心したが、全体的にはあまり楽しめなかった。登場人物の日常が殺風景で、普段何を考えてるのかわからない、というか、そもそも何かを理解したり整理したりすることが習慣として全く身についていない人たちの恨み言とか、泣き言が並んでいるだけだったからだ。(文学部の)大学教員はこういうつまらない人間の集まりなんだよ、という点では優れた著作といえるのだが、どこが笑いどころなのか私にはわかならない。

  • 大橋洋一著『新文学入門』に登場していたから読んでみた。文学理論の本でもあり、物語でもある。難解な文学理論を唯野教授が軽妙な語り口でもって説明してくれるので、雰囲気はつかめた。けれど、自分の言葉で説明できるくらいの理解は私の力不足でできなかった。大学での文学の講義と、『新文学入門』を照らし合わせて、補完的に読むのが一番いいんだろうなあ。時間をおいて、もう一回読みたい。

  • 小説としても面白いが、哲学、思想史を概観する入門書としても十分通じる一冊。全9章(9構)の唯野教授による批評論に始まる哲学講義が抜群にわかりやすく、筒井康隆が大変な知識人、先生であることがよくわかる。特にハイデガーを取り上げた解釈学の講義は、なまじ哲学にかぶれた「先生」の説明よりよほど本質をつくわかりやすい内容。見事というしか無い。

  • 時代的に病気や性に対する考え方、捉え方が偏見と差別的。ブラックユーモア。

    大学内構造を垣間見。狂人めいた登場人物がユーモラス。
    教授になるって、大変なのである。

    表現の妙、レトリック。言い回しはキレッキレですね。
    それでいて押し付けがましくない。

    活字を読んでいて、声を出して笑うことってないんですが、『文学部唯野教授』はところどころ鼻息が、フフン!っなりました。
    筒井康隆に対する読まず嫌いが払拭されてしまった。

    唯野教授の講義内容は文学的理論、哲学に浅い私でも楽しめました。
    ここまで幅広く展開できて、面白い。脱帽です。

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    <選者コメント>
    ある大学であった本当の事件なども盛り込まれており、単なるフィクションとは
    思われる作品です。作品から感じられる作者はハチャメチャな人を想像しますが、
    本当にハチャメチャの人はハチャメチャな作品を書けません。
    (医療栄養学科 鶴田一郎先生)

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著者プロフィール

1934年大阪府生まれ。小説家。同志社大学文学部卒業。81年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、87年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、89年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、92年『朝のガスパール』で日本SF大賞、2002年紫綬褒章、10年菊池寛賞、17年『モナドの領域』で毎日芸術賞。他の著書『時をかける少女』『家族八景』『虚航船団』『文学部唯野教授』『銀齢の果て』『聖痕』『創作の極意と掟』など。

「2019年 『深淵と浮遊 現代作家自己ベストセレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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