マンガは哲学する (岩波現代文庫 社会 183)

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  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784006031831

感想・レビュー・書評

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  • マンガは哲学書である。生死、生きる意味、私の形成、子供と大人の境目、難しいテーマでありながら、意外と読みながら頭も追いついていってた。哲学というより、漫画を読みたくなる。絶妙なまとめ方。

  • 名作マンガの大狂気に魂を感じ、哲学を求める。私とは誰か、人生の意味について、われわれは何のために存在するのか、など「哲学の大問題」を45の作品を題材に、「面白い哲学」の第一人者が解説。

    萩尾望都の本で紹介されていたので読んでみた。
    分かるような分からないような。それで良いのだ,って感じ。

  • 面白かった。
    特に第5章の3〜5。4,5は所謂一般的な(と個人的には思っている)自分の中の「負」の側面を認めつつも、それを飼い慣らす強さを持てるようになること=大人になること、として描かれている。一方で3ではこうしたものとは違う子供-大人の関係が描かれる。
    大人とは子供が成長していくことでなるもの(或いは子供とは大人の未成熟な姿)、ではなく、大人と子供とは本質的に異なるものだとして形象化したものが、諸星大二郎「子供の遊び」というのである。子供から大人へと連続的に成長するのではなく、子供は子供として始まり、また終わる。大人も大人として始まり終わる。そしてこれが「真理」なのである。

    …もちろん、そんなことは無い。人間は「子供」を経て「大人」となる。それは事実である。しかし、その過程で肉体面、精神面で激変していくこともまた事実である。その変化の度合が凄まじいこと、それを諸星氏はマンガという形で表したのだ。ということだと思われるが、もしかしたら…と考えずにはいられないものがある。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784006031831

  • 新書文庫

  • 底本:『マンガは哲学する』(講談社SOPHIA BOOKS 2000年02月) → 講談社+α文庫(2004)

    【簡易目次】
    第1章 意味と無意味 001
    第2章 私とは誰か? 037
    第3章 夢――世界の真相 073
    第4章 時間の謎 105
    第5章 子どもvs.死――終わることの意味 139
    第6章 人生の意味について 171
    第7章 われわれは何のために存在しているのか 199
    あとがき 231
    著作の秘められた意図――講談社+α文庫版のためのあとがき 233
    岩波現代文庫版のためのあとがき 241
    解説 哲学の旅(荻尾望都) 245


    【目次】
    まえがき(一九九九年十一月 永井均) [ii-vi]
    目次 [vii-xii]

    第一章 意味と無意味 001
    1.1 相対主義の原理と限界――藤子・F・不二雄「気楽に殺ろうよ」,「流血鬼」 002
    1.2 異文化との出会い?――藤子・F・不二雄「ミノタウロスの皿」,「サンプルAとB」,「絶滅の島」 007
    1.3 この話に作者はいるか――手塚治虫「ブラック・ジャック――第七話 幸運な男」 013
    1.4 言語ゲームと哲学的感度――吉田戦車『伝染るんです』 015
    1.5 感情の客観性(1) ―中川いさみ『クマのプー太郎』 024
    1.6 感情の客観性(2) ――諸星大二郎「感情のある風景」 026
    1.7 感覚の客観性――城アラキ・甲斐谷忍『ソムリエ』 029
    1.8 合理性の洞察――福本伸行『カイジ』 032

    第二章 私とは誰か? 037
    2.1 死んだのは誰か――萩尾望都『半神』 038
    2.2 愛は記憶を超える?――萩尾望都『A―A'』 044
    2.3 私は記憶を超える?――吉野朔美『ECCENTRICS』 049
    2.4 この身体は私のものか――士郎正宗『攻殻機動隊』 053
    2.5 もうひとりの私――高橋葉介「壜の中」 057
    2.6 私は二人いる――川口まどか「ツイン・マン」 064
    2.7 今はオレだ!――田島昭宇・大塚英志『多重人格探偵サイコ』 067

    第三章 夢――世界の真相 073
    3.1 夢はわたしに覚める――高橋葉介「夢」 074
    3.2 固有の夢こそが現実をつくりだす――佐々木淳子「赤い壁」 077
    3.3 現実という性質は客観的か――佐々木淳子「メッセージ」 082
    3.4 現実は映像か――佐々木淳子「Who!」 085
    3.5 夢の懐疑とロボットの懐疑――諸星大二郎「夢みる機械」 089
    3.6 神の不在証明は可能か――楳図かずお『洗礼』 094

    第四章 時間の謎 105
    4.1 ドラえもんは何のためにいるのか――藤子・F・不二雄『ドラえもん』 106
    4.2 殺されつづけるのは誰か――手塚治虫『火の鳥――異形編』 113
    4.3 過去に対して悪をなすことは悪か――星野之宣『ブルーホール』 122
    4.4 回帰は実在するか――佐々木淳子「リディアの住む時に」 128
    4.5 自分会議の決定を尊重すべきか――藤子・F・不二雄「自分会議」 134

    第五章 子どもvs. 死――終わることの意味 139
    5.1 未来にまかれた種としての子ども――楳図かずお『漂流教室』 140
    5.2 子どもという狂気――楳図かずお『わたしは真悟』 145
    5.3 なぜ子どもは大人になるのか――諸星大二郎「子供の遊び」 151
    5.4 大人のなり方(1)――松本大洋『鉄コン筋クリート』 154
    5.5 大人のなり方(2)――吉野朔美『ぼくだけが知っている』 159
    5.6 純化された死――永井豪「霧の扉」 162
    5.7 包み込まれていく死――しりあがり寿『真夜中の弥次さん喜多さん』 166

    第六章 人生の意味について 171
    6.1 被差別空間の感触――西原理恵子「はにゅうの夢」 172
    6.2 人生の意味と幸福――業田良家『自虐の詩』 177
    6.3 「真実の愛」が見つかるまで――しりあがり寿『ヒゲのOL藪内笹子』 183
    6.4 捨てるべきものがあれば――坂口尚『あっかんべェ一休』 184
    6.5 いながらにしていない――つげ義春「無能の人」 190
    6.6 これが究極超人か!――ゆうきまさみ『究極超人あ~る』 192
    6.7 これも究極超人だ――赤塚不二夫『天才バカボン』 194

    第七章 われわれは何のために存在しているのか 199
    7.1 倫理から存在論へ――星野之宣『2001夜物語』 200
    7.2 答えを超える問い――石ノ森章太郎『リュウの道』 204
    7.3 何も守らぬ闘い――永井豪『デビルマン』 211
    7.4 守るべきもののリアリティ――岩明均『寄生獣』 217
    7.5 私は何のために生まれてきたの?――星野之宣『スターダストメモリーズ』 224

    あとがき [231-232]
    著作の秘められた意図――講談社+α文庫版のためのあとがき(二〇〇四年七月) [233-239]
    岩波現代文庫版のためのあとがき(二〇〇九年二月) [241-243]
    解説 哲学の旅(荻尾望都) [245-254]

  • 『あっかんべぇ一休』は読んでみたいと思った。その他は有名作者ものが多かったのでいずれ読めるだろうなと感じた。社会に関する部分はわかりやすく、自我に関する部分はわかりにくい。

  • この人もウィトゲンシュタイン同様、一つのテーマを執拗に追及するがゆえに「処女作が最高傑作(の一つ)」とならざるをえないタイプの著者だと思う。ということで、点が辛めなのは著者の他の本との比較による(永井均の本でなければ星はもう一つ二つ多く付く)。あとがき等で《〔本書で〕私は「飛躍した」》と著者は書いているが、正直その飛躍の内容が私には皆目わからない。ただただ、いつもの「永井均節」とでもいうべき断言の数々が耳に心地いい(この点、80年代の柄谷行人のエッセイをどこか彷彿とさせる)。私はこの人の良い読者ではないと思う。

  •  究極超人あ~るの扱いが面白かった。寄生獣はやはり傑作ですね。手塚治虫とか藤子不二雄とか読みたくなった。

  • 物事と,説明する語句の関係は「その語句なし」では説明不可・他者全てが狂っている時点でそれは「狂っている」ではない・「過去」に戻ったのに,なぜ自分は「そのときの自分」になっていないのか・同義的判断は未曾有の状況には適用できない

  • 2014.8.22読了

    哲学に興味があって、漫画が好きなので手に取った。

    取り上げられている作品群は総じて古い気もするが、名作揃いだ。

    作者で言えば、藤子F不二雄に始まって、神様手塚治虫、吉田戦車、須賀原洋行、中川いさみ、甲斐谷忍、諸星大二郎、福本伸行、萩尾望都、吉野朔実、士郎正宗、高橋葉介、川口まどか、田島昭宇・大塚英志、佐々木淳子、楳図かずお、星野之宣、松本大洋、永井豪、しりあがり寿、西原理恵子、業田良家、坂口尚、つげ義春、ゆうきまさみ、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、岩明均等々。

    作者は9割くらい読んだことがあったが、引用されている作品で既読だったのは、およそ6割くらいか。

    取り上げる作品自体を評価したりはしない。時代のテクストの上でのその作品の立ち位置を考えたりもしない。

    様々な作品から、考えるためのヒントを拾い出し、思索していくだけだ。これこそが哲学なのだと著者はいう。

    ただこの作業は、とても興味深く、読んでいて心地良いし、何より刺激的だ。
    特に自分が好きな作品についての言及は、なぜこの作品を面白いと思ったのかを理解する一助となった。

    例えばドラえもん。
    ドラえもんは、元々、セワシ君が、未来に大借金を残したのび太を変えるために送った。
    だが、ドラえもんによってのび太が本当に変わったら、大借金をせずに済み、結果、セワシ君はドラえもんを過去に送り込む必要がなくなる。
    つまり、ドラえもんとは、自分の存在理由をなくすことが存在理由とされている存在なのだ。実存の不安に襲われないのが不思議である、と。そして、そこからさらに派生する問題について考えを深めていく。

    著者があとがきで、哲学を定義している。

    「他にだれもその存在を感知しない新たな問題をひとりで感知し、だれも知らない対立の一方の側にひとりで立ってひとりで闘うこと」だと。

    過去の偉大と言われる数多の哲学者のダイジェストをいくら読んでもいまいち哲学というものがわかった気がしないのは、そういうことか。と思った。

  • マンガの世界観や表現から考える「哲学」。
    『空想科学読本』のような、
    「描かれていることを科学的に考える」という
    スタンスよりも、個人的には好みでした。
    (荒唐無稽さを楽しむという意味では
    『空想科学読本』のスタイルも好きなんですけどね~)

    なるほど…と考えることしばしば。
    かといってわかるわけでもない…。
    そこはやはり「哲学」ですね(笑)。

  • 名作マンガは人間についての疑い洞察の書庫である。
    『ドラえもん』でわれわれが何のために存在するのかという哲学的な課題に迫れるのだ。
    マンガが好きな人におススメ!!

    純真短期大学 こども学科 教員:渡部明

  •  第二章の見出し「私とは誰か?」というのは私の人生にとって大きなテーマであり、苦しみでもある。その答えを探し続けているが未だ見つからず、最近はそのことについて考えるのをサボっている。たかだか20代の小娘には到底得られない答えだということだけが分かったから。ただ、テーマとして考えるのを放棄してしまえば、疑問だけが残り、純度100%の苦しみになる。「私とは誰か?」という疑問について考え続けるのは苦しいが、その疑問を放っておいてそのままにしておくのも苦しい。夏休みの間、手をつけていない宿題を放置して遊びながらもどこかそれが気になっている、そんなのと似ている。
     この本を読んで、宿題を終えられたわけではない。解決策を得ようとして読んだわけでもない。ただ、糸口のようなものは見つけられた気がする。今までひとりで考え、ときには周りに否定されながら、やがて限界に至ったそこで足踏みしていたが、考え方の広まりが見えた。文中に紹介されている漫画を読めば、また新たな広まりがあるだろうという期待感もある。
     誰しも、各章題のような疑問を大なり小なり抱きながら生きていると思う。この本によってその疑問が解決するかどうかは人によるけれど、新たな考えの生まれる余地くらいならできるかもしれない。

  • マンガに込められたメッセージの深さにただただ驚かされました。特に、萩尾望都や竹宮惠子など「花の24年組」と呼ばれる世代の少女マンガは、様々なメッセージを含んでいたり、様々な解釈ができたりと、感動の連続でした。この本に実際に出てきた作品だけでなく、他のマンガについても考察を巡らせてみたいという知的欲求に駆られました。ただ、一つ一つの作品分析をもう少し厚くした方が良かったかなと思います。

  • これまたどっかの入試問題。前書きにもあるが、マンガを基にした哲学入門書。マンガでしか表現できないことを利用して、私とは、時間とは、死とは、倫理とはといった問いを探求していく。とてもわかりやすいが考えさせられることも多く、すごく充実した一冊だった。

  • マンガでしか表現しえない哲学的命題がある、
    というテーマ設定のもと、90年代後半あたりのマンガを中心に、
    哲学的論考を展開している。

    さすがに本職の哲学者が著した書籍、
    タイトルほどライトではなく、相応に骨太の感はある。

    興味深かったのは楳図かずお「漂流教室」。
    同作のように、社会環境が崩壊した時、これまでの倫理観は通用しない。
    だが、これまで以上に倫理によるルールは必要となる。
    その時に必要なのは、倫理や道徳の本質への洞察。
    何を実現するための倫理なのか、水準の変更が求められる、と指摘する。

    社会構造論的にも面白い論考。

  • 帯の「マンガでしか描けない哲学の問題があるッ!」
    この言葉に興『味』をそそられ読んでみましたァンッ!

    最終章の最後の項目が個人的にズシンときましたァンッ!
    自分の存在意義に関する様々な解釈が各章で展開され、
    最後に展開される「私は何のために生まれてきたの?」という問いッ!

    吉良吉影の思考は哲学をディ・モールトえるッ!ッ!


    ※ジョジョ語風味に変換しています※

  • うーん、既に「転校生とブラック・ジャック」、「私・今・そして神」、「倫理とは何か」を読んでしまっているから、重複する内容が多く感じました。これらの作品群のきっかけとなった作品なので重複して当然なんだけども。

    おもいっきり漫画の紹介に力を入れている作品もいくつかありますが、ほとんどは哲学に利用するためにワンシーンだけを取り出して、そこから思考を重ねていく形で掲載されています。
    したがって、漫画を読むというより、いろんなシチュエーションを提示した純然たる哲学書という感じです。

    漫画のチョイスは興味深いものが多く選ばれていますね。
    身近なところから哲学を始める良いヒントになるし、深く考えることの楽しさを感じさせてくれる良い本だと思います。永井哲学入門に、もしくは永井ファンに。

  • 最初の「日本のマンガは新しい芸術表現を生み出しているのではないか」という言葉に痺れました。確かに、その通りだと思います。

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著者プロフィール

1951年生まれ. 専攻, 哲学・倫理学. 慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位所得. 現在, 日本大学文理学部教授.
著作に, 『〈私〉の存在の比類なさ』(勁草書房, のち講談社学術文庫),『転校生とブラックジャック──独在性をめぐるセミナー』(岩波書店, のち岩波現代文庫), 『倫理とは何か──猫のインサイトの挑戦』(産業図書, のちちくま学芸文庫), 『私・今・そして神──開闢の哲学』(講談社現代新書), 『西田幾多郎──〈絶対無〉とは何か』(NHK出版), 『なぜ意識は実在しないのか』(岩波書店), 『ウィトゲンシュタインの誤診──『青色本』を掘り崩す』(ナカニシヤ出版), 『哲学の密かな闘い』『哲学の賑やかな呟き』(ぷねうま舎), 『存在と時間──哲学探究1』(文藝春秋), 『世界の独在論的存在構造──哲学探究2』(春秋社)ほかがある.

「2022年 『独自成類的人間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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