- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022501615
作品紹介・あらすじ
外資系ファンドのゴールドバーグ・キャピタルに勤める野上妙子は、東京支店長の待田顕一から、地熱発電を研究運営する日本地熱開発(地開)の再建を任される。妙子は地開の社長・安藤幸二や研究責任者の御室耕治郎から地熱発電の大いなる潜在力と将来性を説明され、再建の可能性を探る。一方、先進国エネルギー問題会議で、日本は欧米から原子力発電の閉鎖を強硬に求められていた。出席者の川邊勲は、帰国後、総理や"日本原子力の鬼"と謳われた与党の大物・安藤大志郎らと善後策を練るが、安藤は「原発なんぞやめてしまえ」と放言する。安藤の真意はどこにあるのか?最新のエネルギー情報をちりばめて描く大型経済情報小説。石油危機が叫ばれる今、ビジネスマン必読の書。
感想・レビュー・書評
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火山大国日本で、何故地熱発電の開発が進まないのか?という素人的自問を持って開いた本書の主人公・投資銀行の買収ファンドのターンアラウンドである妙子が同じ疑問を持ちながら地熱発電の推進及び高熱岩体発電の実用化を進めて行くため、私の関心を主要テーマとして物語が進行し、地熱発電の魅力と地熱発電の技術的・資金的困難性を深く理解することができた。もっとも、地熱発電の困難さと環境問題との関係は、それを取り巻く政治的欺瞞が絡まり、地熱発電ではなくむしろ原発の危険を暴露するものでもある。真の意味で環境に優しい発電とは何か?
原子力発電所が稼働停止しても電力供給が不足しているとは言えず、むしろ稼働していない状態での維持費用や廃棄物の処理方法が問題となして現実のものとなっている現実を考えれば、この小説を読み、読者が考えるべきことは当時より火急の課題として眼前に迫っている。もともと、イギリス人の英語の先生と原発問題について議論をする中で、代替エネルギーについて話題が上り、温泉大国日本では何故地熱発電が普及していないのか?と聞かれ、そもそも地熱発電がどういうものかもよく知らなかったことろ、夫から本書をお薦めしてもらうことに。
地熱発電について存在はなんとなく知っていたが、馴染みがないことに対してすら疑問を抱いてこなかったことが恥ずかしくなった。本書にも何故これほど地熱発電が脚光を浴びないのか?との疑問が繰り返される。東日本大震災前の当時原発推進の裏で地熱発電が使い物にならないとのレッテルを貼られたとの事実の有無は定かではないが、現在の目から見ても、原発の発電単価が最終処分までの費用を含まない見かけだけのものだったことは確かであろう。私たちはいま、社会的選択をすべき時であり、その選択肢をもう一度見つめ直すべき時なのかもしれない。
地熱発電って何だろう?何故日本では地熱発電が普及しないのだろう?我々は原発とどう向き合っていけばいいのだろう?といった、エネルギー問題の素人的疑問が浮かぶ人には是非お勧めしたい。2006年出版であり、2011年3.11を先取りしたテーマであることが、真山さんの小説家としての先見性が表れている。また、外資系企業で働く女性の苦労も滲み出ており、感服。所々、真山さんが選んだ表現や選択が好きになれない部分もあるが、補助線として、男性社会で生きる2人の女性の生き方が多角的な視点から語られている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
真山節健在。
ラスト、野上と御室妻のシーンは思わずほろり、としそうになった。 -
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地熱発電の現在の状況はどうなんだろう。
外資系は私には絶対ムリ。 -
#読了。外資系投資ファンドに勤めるやり手の30代女性野上妙子は、経営破たんした日本地熱開発に代表取締役として乗り込む。地熱発電に取組む環境が厳しい中、既得権益に固められた原子力傾倒を打破することは出来るのか。。。3.11以前に書かれていたということに驚き。キャラクターが違えど熱い想いをもっている登場人物もよかった。
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ちょっと小粒な感はありますが、よくまとまっていて
大変面白い小説でした。
ハゲタカファンドという言葉がでてくるだけあって
「ハゲタカ」っぽい部分もありますが、これは、買収する側ではなく買収された側の再建の物語で、胸が熱くなります。
震災後の日本の電力事情を見ているようで、いつ書かれたのか奥付を見たら2006年の日付。
すごいなと思いました。 -
真山作品をハゲタカから読み始めて、ドラマ化されたのを知って読んでみました。オチが思い出せないですが、、地熱の可能性、エネルギーに関わる思惑達を知りました。3.11以降に読んだので、今つくられていたらまた変わっていたのかなと興味があります。
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最後に欧米の脅しが最初っからハッタリだったと言っていたり、その他にも無理がある設定が多い気がする。
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本書が、2006年に書かれているということがまず凄いと思う。
日本の原子力発電に関する多岐に亘る問題、代替エネルギーの必要性など、東日本の震災後に書いているのではと勘違いしてしまう。
ストーリーは、ハゲタカ等と共通して外資ファンドを舞台にした経済小説ではあり、地熱開発に挑む若きビジネスパーソンがとても印象的で、またそれ以外の登場人物、特に地熱発電開発に挑む御室とその奥さんが印象的で、感動を覚えた。 -
時代を先取りした内容で最後は感動した。
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フィクションとのことですが、福島原発事故もあって代替エネルギーを見直されてる今だから、切実に感じ取れた。太陽光・風力は微々たるものであるのだろうか?地熱発電を研究運営する日本地熱開発の再建を任された野上妙子、大物政治家や研究者やファンドのトップと肩を並べての仕事のできる姿に女性からも見て魅力いっぱいでした。地熱一筋の御室耕治郎ご夫妻も素敵で、最後 一緒に赤い始動スイッチオンされた時は、感動しました。とても 読み応えのある一冊でした。録り溜めたWOWOWのドラマが楽しみです。
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20111216 時代を先取りしていた
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地震以来、原子力発電反対が声高に叫ばれている。
しかし、原子力発電に代わる発電方法が無いのでは?とおぼろげながら思っていた。
で、この本を図書館で見付けた。
原子力に代わる発電を!と考えて本を探した訳では無く、
単に真山さんの本が好きだから借りたのである。
余談ではあるが、経済小説の大家と呼ばれる某氏の作品は好きでは無い。
女性が男性に与えられる『色と金』の道具としてしか出て来ないからだ。
でも、真山さんの小説は女性が男性社会の壁にぶつかりながらも活躍する。
そこが好きだ。
この小説は、原子力発電に代わる発電方法として地熱発電を取り上げている。
そして、主人公は才色兼備の若い女性。
優秀で頑固で冷淡なエリートで、必死だ。
冒頭から『休暇が明けに出社したら、デスクが無かった』という、いかにも外資!なエピソードから始まる。
その主人公が原子力発電に代わって、地熱発電を日本のエネルギー基盤に!と
幻想のような目標に立ち向かう。
今まで、日本国民は
「原子力発電にしますか?それとも、不安定で高価な電力にしますか?」
という脅しのような選択を迫られてきた。
政治や利権が絡んで、他の発電方法を使わせないようにしていたという
カラクリがよく分かる。
読んでいるうちに、本当に私は勉強不足だと思った。
地熱発電を日本に!と『現実的に』戦う主人公。
その利権と原子力発電の既得権益を巡って、政界と財界が絡んで攻防を繰り広げているのだが、
真山さんの小説らしく、自然の美しさや人の正義感等、『キレイ事』を織り込んである。
経済で、キレイ事では糊口を凌ぐ事は出来ないのが現実なのだろう。
でも、そこにキレイ事を取り込むからこそ、小説として救われている。
それも、真山さんの経済小説を好きな理由の一つだ。
また、真の主人公とも言える地熱発電研究の第一人者である御室がいい。
頑固一徹の研究者と思わせておいて、人間臭く優しいエピソードが出てくる。
これが現実の話ならプロジェクトX(もう終わってしまったけど)で、
「その時、御室は考えた」等と語られてしまう感じ。
この小説は真山さんの作品の中でも、特にドラマチックで分かりやすいストーリーだ。
専門用語も少なく、エンターテイメント小説レベルに読みやすい。
ストーリーを面白くする為に「出来過ぎかな?」と思わせる部分もあるが、
「日本は原子力発電に頼らなくてもいいんだ!」
という知識を広めようという意図で分かりやすく面白く書いたのかな?思う。
・・・うがち過ぎかもしれないけれど。
原子力発電反対を唱える方も賛成を唱える方も、是非読んで貰いたい。 -
地熱発電という仕組みをはじめて知りました。
311の観点とは違いますが、核発電のうやむやさが述べられていて、
また別の観点から核発電の危険性が認識できます。
何が別のクリーンエネルギーがあれば。と、思う本です。 -
続けて真山作品、かつエネルギー問題。またハゲタカファンドにて取り上げている。小説とはいえ、いままでよく知らなかった地熱発電ビジネスだが火山国である日本での現状がよくわかった。小説なんでしょうが。政治の動きと絡めてビジネスが進んでいってしまい、うまくいきすぎている感もあり、実際にはそんなにうまく行かないんじゃないかと思うが、プロジェクトを成功に導いていくための泥臭い部分や、腹を括る部分は共感を持った。野上妙子のような目を据えて話しできるだろうか。
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今の日本にどれほどの人が日本の事を本気で考えている人がいるのかな。地熱発電、実現可能か不可能かは分からないけど、全く知らない分野に興味がもてて良かった!
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ゴールドバーグ・キャピタルの野上妙子は,
大分で地熱発電の研究・開発を行う会社の再生を担当する。
地熱発電に立ちはだかるのは「神の火」原発であった。
どこまでが事実なのか分からないが,
地熱発電すごいじゃないか! -
現在の原子力発電パニックを予見したような小説。この内容を5年前に書いている点が先見の明があるというか、すごい。大森南朋が好演したNHKドラマハゲタカの作者。政治的なパワーバランス、ファンドに興味がある人にはおすすめ。どこかノスタルジックな雰囲気をもつ地熱発電を軸に、主人公の女性ターンアラウンドバイスプレジデントの奮闘を描く。元新聞記者らしく、事前調査が綿密。外資のエリートのスピード感、スケール感が感じられる。
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最新のエネルギー情報をちりばめて描く大型経済情報小説
原子力から地熱発電へ
原発事故の危機的状況が続く中、代替エネルギーへの道を希求するばかり… -
ちょうど地震が来た日に借りた本だった。
自分自身で道を切り拓くしかない状況で頑張れる人じゃないといけないと思った。 -
たまたま読んでいるときに、原発や地熱関係の話が回りに多かった。GSを基にしたIBがでてくるが、えぐさが面白い。実際はもっとなんだろうな。
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・地熱発電対原子力発電
・エネルギー政策ってのは本来重要なはずなのに、日本ではほとんど議論されてない。
・官僚政治の弊害?
・政治家、官僚とかを巻き込んだ仕事ができるくらいビッグな人間になりたい。
・真山作品では個人的にナンバーワン -
気になってはいたのですが上司が面白かったと言っていたので読みました。面白かった!ハゲタカを越えました!主人公が女子、金融とエネルギー業界という私のツボを見事おさえました!続編も書いてほしい!
政治とビジネス、正義とビジネス、人情とビジネス。みんなが必死に生きているだけなんだ。それにしても賢い人は怖い! -
『マグマ』という、いかついタイトルに地熱発電がテーマという工業的な装いの小説。
サブタイトルには「国際エネルギー戦争」なんて付いていますが、中身は企業小説というよりは人間ドラマという個人的印象。
一般的に使われている書籍紹介(下記"あらすじ")では「大型経済情報小説」「ビジネスマン必読の書」などと書いてありますが、本当に本書を読んだのか?と疑ってしまいます。
仕事に一途で不器用な研究者の夫とそれを支える妻のやり取りが美しく、外資系ファンドの主人公の成長、奮闘振りが若干霞んでしまうほど。
結末はどうあれ、同著者の『ハゲタカ』よりも心温まるお話と思います。
【あらすじ】
外資系ファンドのゴールドバーグ・キャピタルに勤める野上妙子は、東京支店長の待田顕一から、地熱発電を研究運営する日本地熱開発(地開)の再建を任される。妙子は地開の社長・安藤幸二や研究責任者の御室耕治郎から地熱発電の大いなる潜在力と将来性を説明され、再建の可能性を探る。一方、先進国エネルギー問題会議で、日本は欧米から原子力発電の閉鎖を強硬に求められていた。出席者の川邊勲は、帰国後、総理や“日本原子力の鬼”と謳われた与党の大物・安藤大志郎らと善後策を練るが、安藤は「原発なんぞやめてしまえ」と放言する。安藤の真意はどこにあるのか?最新のエネルギー情報をちりばめて描く大型経済情報小説。石油危機が叫ばれる今、ビジネスマン必読の書。 -
テーマ、取材力、構成など一流ですが、小説という点では満点に届かない感じ
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才色兼備な女性が活躍する。すぱっとした物言いが好き。
容姿や年齢に関する発言はセクハラという認識の甘さが男性にあることが、さりげなく書かれている。
当たり前のようにある電気の素を考える材料となった。
地熱発電が本当に書かれているように有望な原発にかわるエネルギー源だとしたら、そしてそれを実用化できたら素晴らしいだろう。