犬身

著者 :
  • 朝日新聞社
3.53
  • (42)
  • (65)
  • (97)
  • (14)
  • (8)
本棚登録 : 554
感想 : 99
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022503350

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ★人の愛はめんどくさい - Review Japan「はっぴゃくじ」掲載



    『犬身』は、簡単に言うと(すこしも簡単ではない作品なのだけど★)、犬になりたいと願うほどの犬好きさんが、実際に飼い主になってほしい相手と巡りあい、願いをかなえる物語です。

     奥底からこみあげてくる慕情を、体をいっぱい使って表現するフサ。種族を超えて、ついでに性別も問わない、その自由な<愛され方>に魅了されました。
    <愛し方>も愛らしかった(?)けれども、それにも私が増して面白く読まされたのは<愛され方>でした。読んだ直後は、「愛されるより愛したい」という素晴らしいフレーズさえ、薄っぺらく聞こえてしまいそうでした。

     人間同士だとこうは行かないのは、<愛し方>にとらわれすぎるからかもしれません。
     人と人との関係と来たら、「相手を慕っている。だから可愛がられたい」というただそれだけの単純な話が、どうして信じがたいほどややこしくなるのでしょう。むしろ、ややこしくなっていく過程にドラマがあるようなものだから、人の愛ってめんどくさいのです★

     しかし、人の身で家族も愛人も何も境目なく……などと言い出すと、玉石家事件のような成り行きが待っているのかもしれず……。"犬身"だからこその、相思相愛のストーリーでした。
     そこの対比をあぶりだしているのかもしれないな……と思った時、あんまり趣味ではなかった、どろどろに崩壊している玉石家の惨状が、急速に意味を持ちました。

     でも、実は、玉石梓がこねる粘土や回すろくろ、瓶や器のことに重きを置いてほしかった気がしたな。途中から、犬になった人と創作活動に没頭する女性との静かな暮らしを綴る、アート系ファンタジーが読みたくなってしまったのです★
     でもその辺の描写には愛がない。う~ん、やたらにうつくしいだけの物語だと、逆につまらないのか……!? とりあえずこの小説はそういう主旨ではなく、ヴァイオレンスシーン付で、なっかなかのなまなましさでしたね。

  • 自分は違うがものすごく犬好きの人が読めば主人公の気持ちに賛同するんだろうか。フサになってからの朱尾とのやりとりは面白かった。ファンタジーめいた設定だが以外に内容は昼ドラばりの恋愛小説かな?以外に面白く読めた。

  • 相手とどういう関係性を望むのか。愛ある嗜虐か、愛のない嗜虐か、そういうテーマがナチュラル・ウーマン以降続いていたようにわたしは思うんですが、犬身ではそういう関係性の究極の理想が体現されているように思いました。
    これが最終的に求めていたものなんだな、と自分の中では腑に落ちた一冊。

    葬儀の日、ナチュラル・ウーマン、親指Pが好きな人にはそっと背中を押して勧めたい一冊。

  • 第三章からと、それまでの二章、違う人が書いたみたいです。特にラスト、前半二章を書いた人が選ぶ内容とは思えねえっす。

  • おもしろい。設定が奇抜だね。

  • 犬が好き。犬を飼いたい。犬の目線で見たい。いや、もう犬になりたい。
    というくらい犬が好きな主人公の話。「犬好き」の最終形。

    でもあの人に飼われるならという条件はつく。そこら辺に元人間らしさを感じた。

    最後のくだりはいらないと感じた

  • 学校の課題本。うわぁ・・の一言に尽きる。うーん。自分では絶対選ばない本でした。

  • 序盤~中盤までがすごく面白くて、犬になりたいなりたいと思う房恵の気持ちが妙にしみじみと分かったりして。
    「犬になりたい」ところが分かるのではなく、実は人として感じている部分で「だから犬になりたい」と思っているところに共感できた。ん?なんだか分かりにくいぞ。

    だから中盤までは☆5のイキオイだったのに……

    後半、究極のキモチワルイ家族描写に終始してしまったのは本当に残念。
    フサが犬である意味が薄くなってしまったような。
    いや、犬だからこそ梓を支えたんだろうけどさ!!でもさ!!
    あのキモ家族にあんなに枚数を割く意味があったのであろうか^^;
    ナニ、あのブログ。ギョエー。

    むしろキモ兄よりキモ梓が一番キモかった。
    なんだこいつ、いい加減にしろって本を叩きつけたくなった☆
    だからたま~にフサが批判的になるところに喝采を送ってみたり。
    朱尾さんのどこまでもドSっぷりにすかっとしてみたり。

    キモ兄キモイーーーーーーーーーーーしかも小デブーーーーーーーーーーギャーーーーーーーーマジキモーーーーーーーーーー!!!!!

    まあここで兄を妙にカッコよく書いちゃったら、あまりにお耽美な通俗臭ぷんぷんになるんだろうけどさ。
    あたしゃ、最後には作者の一人SMプレイを見せられているのかと。
    キモい小デブはイヤだああああああああ(暴言スイマセン)


    それにしても朱尾さんがカッコエエ……
    なんですかこのドS番長。
    ギャーいじめられたい。最近読んだ中ではイチオシのイイヲトコ。
    狼でもいい。いじめられたい(M)。

  • 読み応えたっぷり。
    人の欲望のドロドロしたところが描かれていてすごく重たいけど、それだけじゃない人が持つ愛とか絆にほろっとしました。

    犬の描写がとってもリアルなので犬好きにはたまらぬ本だと思います。
    私は牧羊犬になってバリバリ働いてみたいです。

  • 『犬身』、けんしん、ケンシン。なるほどね。

    支配と従属に対して、
    ジュンスイムクなものが示されてて。
    されど性の位置づけは問われてはいるけど。
    帯に「あの人の犬になりたい。」とあって、
    けれど
    性的なことへの耽溺に共感するためのお話しじゃあありません、
    主犬公から出てくるもの以外のところで、
    痛ましい場面はあるのだけれど。

    もらいたくない余計なお世話な贈り物が
    ホントは肉い肉親から届いたことがある人なら、必読。


    気持ち悪くもありおもしろくあり、
    途中でやめれんくなって
    ああ、この小説読めて良かったです。

全99件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松浦理英子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×