評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509772

作品紹介・あらすじ

青森から上京してきた18歳の予備校生は、どのようにして、消しゴム版画家にして名コラムニストとなったのか。他の追随を許さない鋭い批評眼は、いかにして生まれたのか。なぜ、魅力的で非凡な文章を書き続けることができたのか。ナンシーを知る人たちへのインタビューとともに、彼女自身の文章に垣間見えるいくつもの物語を紐解きながら、稀代のコラムニストの生涯に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 消しゴム版画家でコラムニストであった故ナンシー関の生い立ちから、デビュー、そして確立した地位を得るまでを親族や友人、業界関係者に取材して構成した評伝。
    あらためてナンシーのすごさを痛感。
    久しぶりに彼女の著作を本棚からひっぱり出して読みたくなった。
    あと、ハワイ本を中心とするトラベルライターの山下マヌーが初期のナンシーと交流があったことが記されていて、軽い驚きを覚えた。
    ナンシー亡き後もTVについてのコラムを書く人が何人も出てきたが、個人的には武田砂鉄がポストナンシーだと思う。
    ところで、今は亡き日清パワーステーションでムーンライダースのコンサートを観たときに、ナンシー関を目撃したが、本書でもナンシーがムーンライダースを観にパワステに行ったことが書かれていたので、やっぱりあれはナンシーだったのだと確認できて、ちょっとうれしかった。

  • 内容は興味深かったですが第三者にこそばゆい賞賛をこれでもかと浴びせられることに本人が生きていたら照れつつ拒否しそうな気もするなと思ってしまった評伝でした。
    あと。ナンシー関が存命だったらSMAP解散になんて書くかな、とふと思ってしまった。読んでみたかった。

  • ナンシー関さん好きだったなー。
    もう亡くなって10年も経ってしまったんだ。
    ナンシーさんが 面白くなくなったと言われる今のテレビを観たら、どんな事を語っていたのかなと度々思う。
    ナンシーさんになりたい人は山ほど居るけど、ナンシーさんになれた人は一人もいないんだよ。

  • ナンシー関について書いた本。ナンシー関本人の本ではない。図書館で借りた。
    ナンシー関と言えば消しゴム版画家であり辛辣な面白いコラムを書く人ということで知られており、亡くなったことを新聞で知った時は思わず声を出して読んでしまった。
    彼女をよく知る人の談話とコラムの引用、歴史を辿った本。まあ、引用部分が一番面白いわけでしたが。

  • 頑張っているが物足りない。

    一ファンの感想に留まらず、愛と客観の均衡はある。大袈裟にも矮小にも評価していない等身大な姿を描いている。
    そんなナンシー関を見たいか、ということなのかもしれない。

    興味深かったのは結局、引用部分であった。

    上野ecuteで購入。北斗星内で読了。

  • 久しぶりにナンシーさんの文章に触れてみたいと思いました

  • いつも心に1人のナンシーを、というフレーズには賛成だが、ナンシー関の支持者はもともとナンシー関的な哲学、視座の持ち主なので、ナンシーが生きていたらきっとツッコミしたであろうモヤモヤを言語化するのは結構ハードタスク。

  • ふむ

  • ノンフィクション

  • 俺が一番影響を受けた文筆家はナンシー関です。
    彼女のような文章を書きたいと思っています。
    面識はありません。しかし、スタンプ葬には参列しました。民俗学者大月隆寛が「心に一人のナンシーを」と言ったように、俺の心にもナンシー関がいます。「なにやってんだか」とか「何を言っているんだろう私は」とか心の中のナンシーが俺を突っ込む。
    山藤章二がいうところの"自分批評"というコラムの中に自分自身を登場させる手法だ。・・・おそらくこれはナンシーが高校時代から聴いていた『ビートたけしのオールナイトニッポン』の影響が大きいのだろう。生涯一度も就職しなかったナンシーにとって、卒業〜上京〜引〜越しという一番慌しい時期にも欠かさず木曜日にはラジオを付け、録音したテープを7〜8回繰り返し聞いたという。

    作家、宮部みゆきはテレビを見ない。しかし、熱心なナンシー関の愛読者であり続けた。それはナンシーの文章が抜群に上手く、面白かったからだ。
    <blockquote>「ナンシーさんの文章は、引っかかるところがないんですよ。スラスラと頭に入ってきて、文句なくおもしろいんです。私は、文章を書く力って、観察眼と聴く力によるものが大金だと思っています。その観察眼と聴く力は天性のもので、後はどれだけ磨きをかけるのか、ということかと思います。ナンシーさんは、簡単な言葉を使って、他の人がなかなか言語化できないことをさらりと表現できる能力を持った人でした」(P.29)</blockquote>
    まさに理想の文章。
    ばかげた喩えだがロバート・ジョンソンのクロスロード伝説のように、ナンシーは卓越した観察眼と聴く力、それを的確に言葉にする力を悪魔との取引によって、手に入れたのではないか。

    それほど、ナンシーの筆は冴えていたし、活動初期の頃から煌いていた。何よりナンシーにはTVは観るもので出るものではないった腹が据わっていた。自分は規格外の異邦人として生きる覚悟が出来ていた。また結婚もしないと決めて仕事に打ち込んだ。

    悪魔との取引によって40歳を前に逝ってしまわれたのはあまりにも早すぎる。

    いまでも「ナンシー関だったら、何て書くかなぁ」とぽっかり穴が開いている。そして、どうやらその穴は埋められない。


    蛇足:小田嶋隆のナンシーの言説は結果として、山本七平『空気の研究』で言及したり、民俗学者の柳田国男が指摘したりしていることに近いものになっている」と指摘している。これはいい。けどさぁ「大学を中退したナンシーはそうした小難しい本を読んでいなかったと思うのに、同じような結論に到着している。」っていうのは違うだろう。卒業していても読んでないやつは読んでないし、中卒でも読んでいる奴は読んでいるよ。本を買う自由は誰にもあるのだから。

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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