物理屋になりたかったんだよ: ノーベル物理学賞への軌跡 (朝日選書 719)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022598196

作品紹介・あらすじ

小児麻痺を克服して、苦学しながら一高・東大と進み、ほとんどビリに近い成績で卒業した著者が、実験家として大成するまで。「国民の血税を使って宝くじを買うみたいなプロジェクトはだめだ」「共同研究はだれかが本気になって責任をとる形をとらないとうまくいかない」など、著者の、長期的な見取り図を描く先見性、強力なリーダーシップ、キーパースンを見極める洞察力などが、あますところなく語られている。朝永振一郎をはじめ、元共産党副委員長の上田耕一郎、作家・遠藤周作、音楽評論家・遠山一行と、夫人でピアニストの遠山慶子などとの多彩な交友とエピソードも紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 今でいうリスクヘッジ、エマージェンシー対策が
    出来てるから、成功したとう感じです。
    何時の時代も人間は変なバイアスがかかり、
    不思議な、間抜けなミスをするものです。

    今、通信障害が話題ですが、ちょっと前まで、
    山、海では携帯電話が使えないのが、普通でした。
    繋がる会社も場所で異なっていましたから、別の通信
    手段確保は当たり前でした。

    よくノーベル賞受賞者のことをそのときは取り上げても
    功績が理解されていないところは悩ましい。
    田中さんの本でも触れている。

    2003年の本、もう19年経つのか・・・。
    私の時計は令和になっていないのかも。

  • これまで読んだ小柴さんの本、「<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062573946/ichiromarin09-22/ref=nosim" target="_blank">ニュートリノ天体物理学入門 ― 知られざる宇宙の姿を透視する</a>」、「<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101070210/ichiromarin09-22/ref=nosim" target="_blank">やれば、できる。</a>」と比べて特に変わったエピソードはないので、この本をわざわざ読む必要はないように思われる。 しかし、小柴さんの本を読むたびに、「すごいなー」と思わされるのは、彼の交際範囲、交友関係の広さ、深さである。朝永振一郎にかわいがられたり、ピアニストの友達がいたり、旧ソ連の物理学者から共同研究を持ちかけられたり。大変僭越ながら、これはきっと彼の人柄がチャーミングなためだろうと思う。そのことが文章からにじみ出ている気がするのは私だけじゃないはず。

  • 『一緒に考えてみようや』と同じく
    朝日新聞社の本なので
    著者がしっかりと書いた本という感じではない
    インタビューを文章にしたような感じ

    ブルーバックスの本とも
    そこそこ内容かぶってるかな

    でも小柴さんはやっぱり人柄が面白いな
    考え方とかも面白いし
    しっかりした本があれば良いのに

    面白いけど
    どうしても物足りなく感じてしまうから
    評価3で

  •  本書は2002年にノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊氏へのインタビューをもとにした回想録です。物理を志していなかった少年は、どのように物理の道へと足を踏み入れたのでしょうか。また優秀な学生とは言えなかった人物がどのように物理屋として認められるのでしょうか。そして、その研究人生のなかでどのようにしてカミオカンデの構想に至り、ニュートリノ研究の未来を切り開いてきたのか。こうしたお話について、さまざまな逸話を交えながら述べています。

     そのまま読んでも氏の功績がご自身によって平易に説明されていると言う点で興味深いですし、ちょっとした交渉術から喧嘩術まで、その回想を通じてさまざまな教訓を引きだすこともできる本です。

  • 小柴昌俊さんのノーベル賞受賞直前のインタビューを自著風にまとめた本。研究の詳細というより、自叙伝風かつ研究者はいかにあるべきかという心構えに焦点が当てられているように感じられる。
    朝永振一郎やリチャード・ファインマンといったインタビュー当時のノーベル賞既受賞者のみならず、南部陽一郎などとも交流があって、一流研究者のネットワークの凄さを垣間見た気がした。

  • 研究費に対して「国民の血税」であることを意識している点は,私の知っている研究者とは大違いな気がします。「科研費余ってるからアメリカの◯◯大学でも行くか」程度です。いい研究に対して事後的に与える科研費制度もあってもいいんじゃないでしょうかね。「当てる」ことが業績みたいになっているので,「血税の無駄使い」は官僚だけに限らないのではないかと思います。


    *****
    これをきっかけに,産業界の役に立つわけではない,すぐには世の中に見返りのない基礎研究が,もっと推し進められるようになったら,とも思う。(p.5)

     たしかに,わたしたちは幸運だった。でも,あまり幸運だ,幸運だ,とばかり言われると,それはちがうだろう,と言いたくなる。幸運はみんなのところに同じように降り注いでいたではないか,それを捕まえられるか捕まえられないかは,ちゃんと準備していたかいなかったかの差ではないか,と。(p.14)

     迷惑な反響もあった。かつてブルックべヴン国立研究所の所長をやったこともあるモーリス・ゴールドハーバーは,IMBが最初に発見した,とどこかで発言したらしい。こういう大御所連中は影響力が大きいから,まちがいを放っておいたら,事情をよく知らない人にはいつまでたっても,どっちに先取権があるか,わかってもらえない。(p.21)

     わたしは,モーツァルトとアインシュタインをくらべたとき,モーツァルトのほうがほんとうの意味での天才だと思っている。なぜなら,たとえアインシュタインが相対性理論を思いつかなかったとしても,ほかの人が,論理をたどっていって同じ真理にたどりつくことは可能だ。ところが,モーツァルトがつくったあのすばらしい曲は,彼以外のほかのだれにもつくれないではないか。(p.79)

     そもそも実験は,わからないことがあるからやるのだ。答えがわかっていることを確かめるために,実験をやる必要はない。自然に対して「わからないこと」をどういうかたちで問いかけたらよいのか,とことん考え詰めると,適切な方法にたどりつける確率がよくなる。これは,わたしの実感だ。(p.101)

     予算をとってきたり,組織の面で力を尽くしても,それは物理の実験そのものに寄与したのとはちがう。だから,そういう役割分担だった者は,論文に名を連ねるべきではない,というのがわたしの考え方だ。(p.150)

  • 「物理屋になりたかったんだよ」
    小児麻痺を克服して苦学しながら一高・東大と進み、ほとんどビリに近い成績で卒業した著者が実験家として大成するまで。


    カミオカンデと「ニュートリノ」からノーベル賞へ。東大からアメリカと欧州へ。小柴昌俊氏の大好きな科学、宇宙そして物理!


    この本を読むことで「小柴昌俊氏の研究生活がどうノーベル賞に繋がったのか」を一歩一歩知ることが出来ます。私は物理好きというよりは科学好きな人には勧めたいです。複雑すぎる専門用語はあまり出てこず小柴氏の歩みとともに様々な科学が登場して、それらの科学に対し小柴氏がどう向き合ってきたのかが分かりやすく書かれています。例えば、カミオカンデ「超新星ニュートリノ」は小柴氏の研究にとって非常に大きなものになっていますが、ニュートリノとはどういうものなのかが良く分かります。


    私はやはり日本の研究分野は素晴らしいと本当に思います。大学や院での研究をさらに続けることでこのような研究や成果に繋がるのですが、小柴氏の言う「目指す成果と恐らく得られるであろう成果を考慮した研究を行う」ということは研究の厳しさを物語っていると思いました。


    特にノーベル賞クラスの発見は目指すべき研究の先になるけど、その発見だけを追い求めて実際に発見できる確率は宝くじ以上の確率らしいです。そう考えると研究はやっぱり難しく大変でそして情熱が無いとやれないと思いました(情熱があれば失敗は失敗で終わらないというジョブズ氏の発言を思いだす)。


    小柴氏の専門分野は物理ですが、物理には科学そして宇宙も絡んでいる。そんな3つの絡みを堪能できることはやっぱり楽しいです。


    少しずつ小柴氏を始めとして研究者の本を読んでいこうと思っています。

  • 小柴教授の人となりが伝わる本.自分のやりたいことをやる.そのためにどう行動するか.
    自分についても考え直させられるところがたくさんある.

  • 途中で返却期限が来てしまったので、全部は読んでない。
    半生について書かれてたなーと。
    また、改めて全部読んでみたい。

  • 売家と唐様で書く三代目 三代目は遊び人が相場

    幸運はみんなのところに同じように降り注いでいたのではないか、それを捕まえられるか捕まえられないかは、ちゃんと準備していたかいなかったの差ではないか

    カミオカンデ kamioka nucleon decay experiment 陽子崩壊を観測する実験

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著者プロフィール

物理学者、ノーベル物理学賞受賞者

「2014年 『ニュートリノと私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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