カラシニコフ I (朝日文庫 ま 16-3)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022615749

作品紹介・あらすじ

内戦やクーデターが起きるたびに登場する銃、カラシニコフ。開発者カラシニコフやシエラレオネの少女兵、ソマリアのガードマン、作家フォーサイスなどへの取材を通し、銃に翻弄される国家やひとびとを描く。朝日新聞特派員として数々の紛争取材に携わった著者による迫真のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • アフリカの失敗した国々では、AKといふ鉄砲が出回ってゐて、それは大変素晴らしく、クロンボのお姉ちゃん(4キログラムくらゐは毎日運んでゐるので持てる)が持って、引き金引くと撃てるので、お姉ちゃんへ持たせて撃たせる。さらに、がっちょんがっちょんて付けるとちゃんとできる。使用に耐えうる。ソ連が生んだ技術の結晶には違ひないのだが、はー。
     M・カラシニコフへのインタビューは、なかなかないらしいので貴重らしい。へー。

  • カラシニコフが設計したAK47が「失敗国家」で人々の命を奪い続けている現状を描くルポルタージュ。考えさせられます。

  • 2010 8/20読了。ACADEMIAで購入。
    id:klovのブクログレビューを見て読みたいと思っていた本。
    AK47自動小銃、カラシニコフをめぐるルポルタージュ。
    Ⅰはシェラレオネの少女兵の話に始まり(そこで描かれている話、伊藤計劃の『The Indifference Engine』の元ネタじゃないか、ってくらい似たエピソードが出てくるのだが、それだけアフリカで一般化した事態ってことなんだろうか・・・?)、開発・設計者であるミハイル・カラシニコフとロシアの製造工場の取材を挟みつつ、主にAKが内戦・犯罪・護身に広く使われているアフリカの国々に関する話がメイン。
    収録最終章、ソマリアの中で独立を宣言したソマリランドで銃を抑え込んで治安が回復されている様子が描かれているのは、章立てとして意図したものであることはわかってるけど、どうにもできないわけじゃないんだ、という気にはなった。

  • Ⅰは主にアフリカや中南米の国家でいかにカラシニコフが流出し、市民を兵士に変えているかを描いている。また設計者、ミハエル・カラシニコフへの取材もある。彼がカラシニコフに施したモジュール化と「あそび」の設計は、「使いやすい・壊れない・壊れても直しやすい」と三拍子そろった最高の銃を生み出すことになったわけで、プロダクト・デザインの面からも優れた事例。開発から60年たった今でも基本構造を変えることなく第一線で活躍する製品と言うのも、現代ではそうそう生まれない。

  • 銃器を作る人間なんて余程の兵器オタクくらいのものだろうと思っていたが、カラシニコフ氏の人柄を見るとその偏見が薄れた。カラシニコフを作った動機も実体験から基づく切実なものだった。だからこそ、こういった人間が作ったものが世界に子供兵を生み出し、貧困を増加させ、人殺しが蔓延する国とも呼べない失敗国家を作りだしてしまった事実を思うと不憫だと感じる。カラシニコフはただの道具だ。それが人殺しを簡単にさせるとしても、カラシニコフが誘因したわけではない。元々の人間にそれをしたがる土壌があったというだけの話だ。カラシニコフにすべての原因を帰結させるのは間違いだ。
    ソマリランドの話は目から鱗だったし、良い知らせがでることなんてほとんどない国際面においては希望の持てる話だった。もし機械があれば一度足を運んでみたい場所だ。

    あとは個人的な感想として、やはり日本人の同年代の人間よりも国も環境も違うアフリカの人たちの方が共感できる。幸いにも人を疑わずに生きてこれて、他人を信じることが自然にできて当たり前だという考え方が一般的だと思っているような日本人に苦しみを味わってきた人間の何がわかるというのだろう。そんな人間が日本国内で自分の間近に存在するなんて想像もできないんだな。その態度が余計に人間を傷つけるとも知らずに。

  • カラシニコフをめぐる、さまざまな立場からのストーリー。先日のパリでの連続テロでも使われてたAK-47が知ろうとでも扱いやすいゆえに、大量破壊兵器と言われるまでになる。武器輸出が解禁された日本はこれからどう兵器産業と向き合い、利益と倫理の間でどこにポジションを取るのか重要な局面にいる。

  • 『謎の独立国家 ソマリランド』を読んで、以前から興味はあったものの未読だった『カラシニコフ』に手をつける。二巻本の一。

    旧ソ連製自動小銃 AK47 (Automatic Kalashnikova 47年式)は、アサルトライフルとして十分な威力を持つ一方で、故障し難く、安価なため、現代に至るも各国の軍隊で使われ続けている傑作だ。しかし、あまりの扱い易さから子供から犯罪者まで誰にでも使えて、特にソ連崩壊後は大量の AK47 が不正に大量輸出されたため、地域の治安を乱す要因にもなっている。

    そんな自動小銃の歴史と現在を紹介しつつ、設計者カラシニコフへのインタビューを交えたルポタージュ。ソマリアをはじめとする「失敗した国家」のルポは、出版当時はおそらく衝撃的だっただろうし、その衝撃は今読んでも十分に伝わってくるのだが、ちょっと読む時期を逸っしてしまった感じ。

  • カラシニコフ銃だけの話ではなく、それが利用されているアフリカの国々について、また武器を自主的に放棄したソマリランドについて、視点が偏ることなく、突き放すことなく、また感情が移入しすぎることなく、割と客観的に書かれていて、興味ふかく読めた。

  • 【「兵士と教師の給料」がカギ】p183
    「失敗した国家 failed state」と「そうでない国家」を分ける基準について、明確で分かりやすい基準が二つ。
    ひとつは「警官・兵士の給料をきちんと払えているか」だ。
    警官と兵士は、国民の安全な暮らしを守るという、国家の最低限の義務の直接の担当者である。その給料を遅配・欠配して平気な政府は、国家を統治する意思も能力もないとみなすべきであろう。

    11歳の少女ファトマタは、AKIRA47で三人の命を奪った。その物語から始まり、カラシニコフ銃が世界で何をしてきたか、その道筋を辿ってきた。
    設計者のミハイル・カラシニコフは84歳で健在だった。彼はAK47開発の動機について、「母国を守るためにより優れた銃をつくろうとしただけだ」と答えた。たしかにAKは故障が少なくて扱いやすく、信頼性の高い銃だ。それが第三世界に銃があふれる原因ともなった。p267

  • 「一九七六年いらい約三〇年、日本の自動小銃は、世界のどこでも、誰一人殺していない。それは武器を輸出していないからだ。一丁三十五万円という高値には代えられない貴重な事実だった」

    自衛隊の89式小銃は1丁35万円。量産効果がないため。

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