記憶喪失になったぼくが見た世界 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616869

感想・レビュー・書評

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  •  ある意味幸せかもしれない。
     小さな時に身につけたものを再取得するわけで、ロジカルに取得できるのは面白いかも。

  • 事故により、18年間の記憶をすっかり失ってしまった著者。失ったものは日常のさまざまなことまで及ぶ。これはなに?どうして?幼少期によくした質問がまた繰り返される。文字の読み方、チョコは包みをとってから食べる、お風呂は熱くして入る、お金の使い方・・・・ 一からの勉強、不謹慎な言い方だが、人が成長していく過程はこんな風なんだろうか。赤ちゃんがおしゃべりしたら、毎日新しいことの連続にびっくりしてるんだろうな。。彼を暖かく見守った家族には頭が下がる思い。人(脳)の生命力の強さを感じる本だ。現在は、草木染色家として活躍されているそうだ。彼の作品を見てみたいな。

  • TVで紹介された本。
    記憶喪失とそこから回復していくドキュメンタリー部分と、
    著者の感性の部分が時間経過とともに記されているのだけれど、
    もう少し分けてもよかったかも。
    もっと、記憶喪失の人から見える新鮮な描写を読みたかった気がする。
    でも、とても感動します。

  • 無垢な状態は、はかなくも力強いんだって知った。この人だからかもしれないけど、丸いのに尖ってた。

    p31〝…あまいものを、のみこむ。ああ、なんておいしんだ。〟

    p56〝記憶を失くすということは、単に過去を忘れて今を生きるということではないのです。過去を失った人間は、こんなにもろいものかと、優介を見てつくづくと思いました。〟

    p83〝…この足をつつみ込むような感じのよさは、何なのだ。ぞうりみたいにぬげそうになることもない。これだとすごく速く走れる。すごいじゃないか、スニーカー。〟

    p95〝でも結局、生きていくとはそういうことだと割り切ったのです辛くても自立させなければならない、記憶がなくても馬鹿にされても、それを受け入れてくれる人が、わずかでもいればいいではないか、と思いました。〟

    p165〝…もうあとには戻れない。すべて、自分で決めたこと。〟

    p178〝次にしゃもじを取り出して、いよいよ青いごはんだ。炊飯器の前に立ち、ゆっくりとふたを開いた。そしたら、入道雲みたいなゆげが「ぶわっ」と出てきた。その奥に青いごはんが見える。大きな入道雲の間から見える海のようだ。しゃもじですくってみると、地球にスコップを入れるような感じがしてどきどきした。〟

    p214〝…これはぼくのためのファイルだ。それまで読んだどのファイルにもなかった手応えを感じながら、近くの電話まで走った。〟

    p217〝…しびれた足で飛び跳ねるほど、嬉しかった。〟

    p223〝…「練習のための練習はいらない」と大きな声で言った。「失敗することばかり気にせずに、どのようにしたら人に伝わる着物になるかを考えろ」と続けた。〟

  • 物事の概念というものが壊れてしまったら・・・。
    すべてが未知のものになってしまう。
    事故で記憶をなくした著者が記す記録。
    「ここはどこ?わたしはだれ?」というレベルではない。
    「この口に広がる感じは好きだ」「これは甘いっていうのか」と味の表現まで忘れている。
    一人生活していけるようになるまでは想像もつかない大変さがもっとたくさんあったのでしょう。それでも親は見守っていてくれた。親の愛とは奇跡も容易に起こしてしまうのですね。
    私も親からこんなにも愛情をそそがれていたのだと気付かされました。

  • 普段なにげなくしていることがいかに大変か。いろいろなことの積み重ねか。そういったことを再認させられます。
    坪倉さんはたくましいと思った。本人だけでなく家族のたくましさというかアグレッシブさもすばらしいと思った。

  • 記憶喪失になった人が見る世界は、先入観がない無垢で詩的な世界だった!という話。「そういえば子供の時こんな発想したわー」ってなりました。(特にあとがきの俵万智のトコ)

  • すべてをリセットしてやり直したい・・と思うことがある。でもそれはとても傲慢な考えだったと、この本は教えてくれた。
    人は毎日の記憶の積み重ねで、生きていけるのだと。
    おかさんの語りも、見守る家族の思いを切実に伝えてくれた。
    人は何を支えに生きているのか、何のためにいきているのか、改めて考えた。

  • 19歳の時に記憶喪失になった青年が再生していく物語。記憶を取り戻すのではなく、新たな記憶を積み重ねることで人生を獲得してゆく。

    人間は思い出とともに行きてゆくものなのだとつくづく思う。著者の「楽しかったことや、辛かったこと。笑ったことや、泣いたこと。それらすべてを含めて、新しい過去が愛おしい。」という言葉に込められている。
    人生とは思い出の集積なんだよね。

  • 記憶喪失でここまで記憶をなくすものかとびっくりした。

    産まれたばかりの赤ちゃんが言葉をしゃべれるのならきっとこういう世界感なんだろぅなぁ〜



    母親の無償の愛のすばらしさ


    父親の海より広い心


    こどもにぜひ読んでほしい一冊です。

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