- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022643759
感想・レビュー・書評
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人と鬼、血縁関係、此の世と黄泉。
大きな隔たりを越えるのは、それぞれの強く、一途な想いのみ。
そのきっかけとなるのもまた、几帳や御簾などの物理的な隔たり。
一途であることは、時に辛く、苦しい。
それ故に、人は鬼にもなれ、鬼をも受け入れることができるのではないか。
染殿の后物語の、語り手の美しい言葉。
紀長谷雄物語の、喪失感の中で哀しく溢れる才能。
篁物語の、距離を計る歌のやり取り。
繊細で上品な描写に、妖艶さが相まって、それぞれの物語がもつ魅力に強く惹きつけられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平安時代の鬼と人の物語。天野喜孝の挿画も含めて、淫靡で妖艶です。男女の機微と鬼の関係となると女性が鬼と化す物語が多い中、ここでは男の方が鬼と化し、鬼と勝負し、鬼の側へと入っていきます。人の器から溢れ出すばかりの才能や情念が鬼を呼び起こすのかも。
作中人物がつくる歌や詩が挿入されるのですが、それを完全に理解することの出来ない自分がもどかしい。でも文字の連なり言葉の並びに、ほうと心動かされることもあったり。恋しい気持ちを表わすのみばかりでなく、愛しい人を喪ったときも、身を裂くばかりの悲しみや苦しみに襲われたときも、口に詩を詠ずる心持ちが荒々しいまでに響きます。 -
陰陽師外伝(出てこないけど)とでも言うべき鬼とエロスの話。
紀長谷雄の話はこの間読んだ鬼譚に載っていたので・・特に
小野篁の話が面白かった。
「オルフェウスとエウリュディケ」や「デイモスの花嫁」と言ったような・・激しい愛です。
あ、そういえば「イザナギとイザナミ」の話にも?
そしてこの本の見どころはやはり天野さんのイラストですねー。もう溜息。氏の筆にかかると女性だけでなく鬼も素敵。