男に生まれて 江戸鰹節商い始末 (朝日文庫 あ 27-2)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644107

感想・レビュー・書評

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  • 戊辰戦争に関する本というと、多くは西郷隆盛や勝海舟らの歴史の立役者となった者たちの視点で描かれるが、本作は歴史上脇役ではあったかもしれないが確かに当事者であった江戸の町民たちが主人公だ。

    今も続く老舗のにんべんや越後屋が登場し、当時の江戸の市民の暮らしや産業がどのようなものであったか、そして歴史の転換期に彼らはどのようなことを考えて世の中の変化に対応しようとしていたのかがわかる。

    また歴史ものの特徴として、歴史上のヒーローを逆の立場から見るとある種の悪役のように思える多面的な部分も持ち合わせている。

  • 5/24は削り節の日
    鰹節商八代目・伊勢屋伊兵衛をはじめ日本橋の商人と
    幕末の動乱期を生き生きを描く作品を。

  • 本書は二〇〇四年九月、朝日新聞社より発行されました。

  •  副題が「江戸鰹節商い始末」であの「にんべん」の八代目が主人公。幕末の日本橋界隈の町人気質、べらんめぇ調と気風の良さ、涙と笑い、そして主人公が老舗とあって交際メンバーも一流どころ。幕末エンターテーメントとなんじゃない、って言えるほど個性派ぞろいで楽しい。
     江戸城明け渡しの重要な話の為に、石岡鉄太郎が勝海舟のお使いみたいに西郷隆盛に会いに出向くのは???むしろ石岡自身も交渉人だろう、、、で実話からはそれるのだが、当時商品券、為替があったり、株式の話や兌換性による紙幣発行など、明治生まれの「経済」という言葉は、むしろ現象の後から出てきた概念だったんだと思う。
     啖呵をきったら止まらない男ども。「こんどは男に生まれて」という女将さんがた、いやいや腹が据わった女将さんあってからこそ。女が強いね。

  • はてこれまた珍しい素材を択んだものだ.時は幕末の日本橋,江戸っ子商人たちが明治維新の激動に立ち会ってどのように生き抜いたか.という話なのだが,死んだ元女房が憑依でもしたか,キャラクタ造形が杉浦 日向子の初期の漫画みたいなのである.
    大店の主人のくせにやたらに威勢良く若々しいカツブシ屋の「にんべん」伊勢屋伊兵衛が主人公で,ワキを固めるのが「榮太樓」本舗の初代やら,三井の番頭やら,山本海苔,上から読んでも下から読んでも山本山などなど,日本の近代黎明期に財界で活躍するキーマンたちが市井の江戸商人として次々と登場,果ては小栗上野介忠順やら山岡鉄舟やら,変な彩りとして女装趣味の歌坊という年齢不詳の少年が出て来るのも杉浦漫画を思わせる.

    序でに言うと西伊豆田子でのカツブシ作りの件りは,私が子供だった頃を思い出させて懐かしかった.1960年代までの伊東は,田子に匹敵する伊豆節の産地だったのだ.どうやら我が先祖の一族らしい人も出て来るし.

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著者プロフィール

作家・翻訳家・博物学者。京都国際マンガミュージアム館長。
平井呈一に師事、平井から紹介された紀田順一郎とともに、怪奇幻想文学の日本での翻訳紹介に尽力。のち活動の幅を広げ、博物学をはじめとして多ジャンルにわたって活躍。
主な著書に『妖怪少年の日々』、『帝都物語』シリーズ(ともにKADOKAWA)、『世界大博物図鑑』(平凡社)、『サイエンス異人伝』(講談社)、『江戸の幽明』(朝日新書)など。『怪奇文学大山脈』Ⅰ~Ⅲ(東京創元社)を編纂。

「2021年 『平井呈一 生涯とその作品』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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