街道をゆく(24) 近江散歩、奈良散歩 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644770

作品紹介・あらすじ

「私はどうにも近江が好きである」-「湖西のみち」(第1巻)以来の「近江散歩」。江戸時代と変わらずたたずむもぐさ店や銃砲店に驚き、一方で景観や湖水を我が物顔に侵す乱開発を憤る。「奈良散歩」では春浅い東大寺に千年以上の伝統を持つ修二会(お水取り)の行事を訪ねる。「この世には移ろわぬものがあるという安堵感」を説くくだりは、「文明」と「文化」の違いを考えさせて、深い。

感想・レビュー・書評

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  • スペインポルトガルから帰ってきた司馬さんが次に向かったのは、連載スタートの地である近江。連載も2週目に入ったことを感じます。前回の近江は琵琶湖の西、今回は東と違いはあるのですが。
    後半の奈良は東大寺を中心に。二月堂のあたりに行くと私程度でも色々と思うところがありますので、景色に促されて思索が深まるという点はあるように思えます。あと修二会は去年NHKなどで撮影したのを見ているのもあり、情景を思い出しながら読むことが出来ました。

  • 近江散歩は滋賀東部を題材に国土開発の功罪を語り、奈良散歩は多武峰や興福寺周辺を題材に古代から連面と続く世界を語る。

    姉川の戦いの描写や、興福寺の修二会の世界などなど、魅せられる章がたくさんある。

    司馬遼太郎作品を初めて読んだけど、知識の豊富さ、創造力の豊富さ、交友の広さ、どれも突き抜けててたまげる。
    そういう視点で見たこと無かった、ということが多くて面白い。

    ざっと眺めたときの雑多な感じや、急に場面展開したり話が脇道にそれるのもご愛敬といったところだろうか。一冊の本にまとまった状態じゃなくて、連載当時に読みたかったかも。

  • 奈良というまちの良さを理解するためには、
    歴史的な想像力が必要であると知った。


    とある機会に奈良を訪れることになり、
    ちょうど時間を持て余していたので少し観光していくことに。

    しかし、どこを見ても似たような寺や古墳だらけで、
    何が素晴らしいのかわからない。

    博物館に行くと幾つもの国宝や重要文化財が目の前に現れる。

    でも、それがどうして「宝」であり「文化財」なのかが理解できない。
    私はとても悔しかった。

    そんなとき、ふらっと書店によって手にしたのが本書。

    日本を代表する歴史小説家の目には、
    奈良のまちがどのように映っているのかが知りたかった。

    それから4日ほど奈良に滞在した。

    代表的な奈良の名所を訪れ、時にはなんでもない普通の道を歩いたりもした。

    しかし、そんなところですら、知らず歩いていると深い水堀に囲まれた巨大古墳に出くわすのである。


    著者の歴史的な「記憶」をたどり、今ある奈良を散歩する本書。


    「次は近江に行こうかな…」

    などと、帰路の電車に揺られながら思うわけである。

  • 「死者に戒名をつけるなどという奇習ががはじまったのはほんの近世になってからである。インド仏教にも中国仏教にもそんな形式も思想もない。江戸期になって一般化したが、おそらく寺院経営のためのもので、仏教とは無縁のものといっていい。戒名がさほどの歴史性もなく、仏教の教義にも関係がないというのは、わが国最古の過去帳をもつ修二会がそれを証明している。(『街道を行く 24〈新装版〉近江散歩、奈良散歩』p.357)

  • 近江散歩は楽しかったけど、奈良散歩は眠かった。というか、興味があまりなかったな

  • 今度、この本を持って滋賀、奈良に行こう!

    BSプレミアムで、『新街道をゆく』が始まりました。1回目は第1巻『湖西のみち』第24巻『近江散歩』です。

  • 近江はこれから行くのですが‥‥戦国時代にどうしても興味がもてないので流し読み。きっと風景の綺麗なところのようですが。
    近江人のたおやかな連帯感にも触れてみたい。

    奈良は~~~もう~~~最高でした。うん、好きな時代なんです。
    読んでいてはっとしたり、笑わせられたり。
    興福寺の五重塔が25圓で売られていたなんて驚き。私でも買うwでも、「末期の僧たちを侮辱しているのではない。私ども日本人には、大なり小なり、旧興福寺の僧たちの気質がある。」そうだよなあ‥‥と、本当に、廃仏毀釈で行われたことに関しては、いつも考えさせられます。
    奈良仏教について、叡山の諸道でもその違いを書かれていたが、続けて読むことで二つの違いや特徴についてよく理解できたと思う。シバサンですら「仏教徒とは、なにか。 と、ひとことで言えといわれれば、どういう 仏教学の碩学にとっても不可能である」と言っているくらいなので私なんかにはとってもわかり得るものではないけれど、大好きな奈良や叡山のお寺さんの成り立ちや教義を少しでも理解できるのはとても嬉しいことです
    インド出身の遷那をセンナとカタカナ表記にしたと思ったら、林邑出身の仏哲については「漢字では気分が出ないから、ここでは仮りにフッティと呼んでおく」とあからさまに書いててお茶目で笑いました。
    行基が人道的な社会事業家に描かれて、梅原武が書いてたのとは全然違う印象で、面白かった。
    華厳とは、雑貨の飾り。綺麗なような、むなしいような。

  • 「中高生から大人まで」と銘打つ、ワイドカラー版。紀行文に写真は付き物なので、その点読みやすかったが、常識レベルの用語(例えば家康など)にまで解説を付けるのはどうだろうか。

    特に琵琶湖に対する環境破壊への著者の憂慮は、自分の故郷の話だけに実感があり、その共感と、故郷のことを色々教えてくれる挿話などは、ローカルを見つめる本シリーズならではの醍醐味だとも感じた。

  • 滋賀県の記述は、司馬の小説群ですでによく知るところが多い。しかし、当時の武村知事が、田中角栄流の国土開発の流れに反し、琵琶湖保全を進めていることに司馬が共感するなど、はっとする点があった。中湖群の干拓を進めたのは滋賀の政治であったが、1970年代以降は環境保護の考え方が地歩を進めてきたのがわかる。霞ヶ浦や印旛沼の惨状を考えれば琵琶湖はまだ恵まれていた。

  • 奈良はナラ、ナラは国

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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