分極社会アメリカ 2020年米国大統領選を追って (朝日新書)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951106

作品紹介・あらすじ

バイデンが大統領となり、米国は融和と国際協調に転じる。しかし、トランプが退場しても「分極」化した社会の修復は困難だ。取材班が1年以上に亘り大統領選を取材し、その経緯と有権者の肉声を伝え、民主主義の試練と対峙する米国の最前線をリポート。

感想・レビュー・書評

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  • 大統領選を含めて、トランプからバイデンへと大統領が変わる状況を描いている。
    分極の軸はいくつもある
     共和党と民主党
     都市と農村
     白人と、黒人、ヒスパニック
     移民と、アメリカ国民
    2極に分かれていること自体が問題ではなく、これまで2つの極をむすびつけてきた様々な接点が失われていくことが問題である
    朝日新聞の記者が、テーマごとに記事を書いたものをまとめたものである。

    気になったのは、以下です。

    ・経済政策一つとっても都市と農村で、人々は違う捉え方をする
    ・ドル紙幣に書いてある「我々は神を信じる」の言葉が「宗教的だ」として批判が起こり、「メリークリスマス」のかわりに、「ハッピーホリデーズ」と言い換える人が増えた。
    ・赤い州(共和党)と青い州(民主党)
    ・新型コロナ禍がもたらした格差は働き方だけではない。資産の格差もさらに広がっている。(巨大IT産業と比して)
    ・学生ローン、卒業時に、約800万に膨れ上がっている。ホームレスの大学生が問題になっている。部屋を借りる費用をまかなえず、車で寝泊まりしたり、友人宅を転々としている。
    ・経済的苦境から若い世代は、大きな政府による社会保障の充実を上げる民主党を支持する傾向が強い。

    ・トランプのお粗末な新型コロナ対応。高齢者や家族の健康を重視する母親たちにとっては大きな問題だった。
    ・米国は、移民の国ではなく、「合法的な移民の国」だ。私にトッテヒスパニックというエスニシティ(民族性)よりも、米国人というナショナリティ(国籍)の方が大事だ。
    ・新しい政権でも基本的な移民政策は変わらないだろう。オバマ政権時代にも、300万人が米国から強制退去させられた。民主党だからといって、全面的に移民に優しいわけではない。
    ・ニワトリ1羽でもうけは、2,3円。世界トップクラスの生産性を誇る米農業は、巨大資本と技術をもつ「ビッグ・アグ」が支配する世界だ。ビッグ・アグがでかくなるたびに農家の取り分は減った。
    ・民主党候補のヒラリー・クリントンが選挙戦のさなかにトランプの支持者をみじめな人々と呼んだことだった。「ウェストバージニア人は、人間の中身を見定める力だけは持っているつもりだ」
    ・労働者や農民ら一般大衆の党だったはずの民主党が変質し、金融界や経営者、学識者に近いエリートの党にかわってしまったことが、労働者や農民の見方を僭称するトランプ政権を生み出したといえる。

    ・ポピュリズムにも良い点はあります。経済成長の成果を人々が共有できるようにし、競争の敗者にもまともな環境を整えなければならない。という警告を与えてくれるからです。今人々が感じているのと同じ、聞かりに基づく広義です。

    ・黒人の大統領が米国に誕生した後も、地方の警察による黒人差別に連邦政府が介入できない。連邦政府の力が弱いのが問題なのです。

    目次
    プロローグ
    第1章 二つのアメリカ
    第2章 コロナ禍
    第3章 フロイド事件
    第4章 交錯する分極線
    第5章 何が分断を広げたか
    第6章 変質する政党
    エピローグ
    あとがき
    2020年の米大統領をめぐる出来事

    ISBN:9784022951106
    出版社:朝日新聞出版
    判型:新書
    ページ数:400ページ
    定価:930円(本体)
    発売日:2021年01月30日第1刷

  • 1.この本を一言で表すと?

    大統領選挙がもたらしたアメリカ社会の分断を市民レベルで取材してまとめた本。



    2.よかった点を3~5つ

    ・交錯する分極線(p167)

    →人種とか年齢、職業など画一的な分け方では語れない複雑な分極社会があると理解した。



    ・政治化するコロナ対策(p76)

    →コロナ対策が政治化するのはどこの国も同じだということだと思う。



    ・メディアが家族を切り裂いた(p256)

    →FOXの影響力は知らなかったので面白い話と感じた。



    2.参考にならなかった所(つっこみ所)

    ・バイデンの親族の疑惑に関する記述がほとんどなかった。

    ・全体的に、バイデン支持、トランプ不支持の傾向が見られた。

    ・途中に大学教授などの専門家のインタビューが入っていたが、どれもバイデンよりだった気がする。

    ・妊娠中絶がなぜそれほど大きな社会問題、政治問題になるのか理解できなかった。

    ・新しい政治家、あらわる(p348)

    →共和党の新しい政治家は?

    ・メディアが家族を切り裂いた(p256)

    →既存メディアのCNNなどにも問題点があるのではないだろうか?既存メディアが左に偏った報道をしていたから右寄りの偏ったメディアも出てきたのではないのか?



    3.議論したいこと

    ・バイデン大統領はアメリカの分断の溝を埋めることができるのだろうか。



    5.全体の感想・その他

    ・アメリカ国内の分断状況がよくわかった。

    ・アメリカでは政治の事があまり話しできそうにない。生きにくい社会だと感じた。

    ・トランプ支持者を、単に根拠のない情報を信じている人と一括りに するのではなく、なぜ選挙に負けたにもかかわらず過去最大の得票を得るまで支持を得たのかより詳細な分析がもっと欲しかった。

  • 東2法経図・6F開架:314.8A/A82b//K

  •  新聞・ネット連載の書籍化。2020年大統領選を前にした様々な分極の姿を描く。党派の対立軸が経済政策から21世紀はアイデンティティーに取って代わられた、というフクヤマの指摘が印象的だ。アイデンティティーは経済政策以上に妥協が困難だろう。
     差別や偏見、分断を煽る言動、根拠なき情報の拡散はよくない、と思う。一方、都市郊外の大卒女性と、地方の「忘れられた」人。Amazonの物流センターで働きコロナ禍にさらされる人と、Google本社に勤め在宅勤務をする人。歴史上の人物の像撤去を巡る議論。保守系FOXと、反トランプ姿勢が鮮明なCNN(もっとも中道・左派系メディアは客観的なメディアとしての評価も維持したいとの思いもあり、FOXほど振り切れないとのこと)。自己責任とか「政治的に正しい」とかどっちもどっちとか、ばっさり割り切れないのが現実だ。
     ヒスパニックも黒人層もひとくくりにできない。共和党は「トランプ党」化する一方で、民主党内では左旋回が強まる。この分極が緩和される時代は来るのだろうか。

  • コロナ禍の中、取材制限もあったかと思うが、その中でも数多くの市井の人や識者を取材し2020年のアメリカ大統領選を描いた良書。将来読み返してみてこの大統領選によって何が変わり何が変わらなかったのか振り返るのにもいいサンプルになるかと思う。

    ただ朝日新聞という属性からか、民主党シンパに対しては幅広い層の意見を拾い出していたのに対し、共和党シンパに対してはトランプ積極支持のタカ派的意見の拾い出しに偏り、ハト派的保守がほとんど取り上げられていない様に感じた。ここをカバー出来る本を探して読んでみたい。

    ハト派的保守が極めて少数派になっているのであれば恐ろしい事だが…

    ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。

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