問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界 (朝日新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022952233

作品紹介・あらすじ

世界の頭脳であるフランス人人口学者のエマニュエル・トッド氏と、ジャーナリストの池上彰氏が、ウクライナ戦争後の世界を読み解く。覇権国家として君臨してきたアメリカの力が弱まり、多極化、多様化する世界が訪れる──。この世界はどうなっていくのか。

感想・レビュー・書評

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  • トッドさんの受け答えが、曖昧だったり、理由を明確にしなかったりで、ちょっと?が点灯。もしかしたら「第三次世界大戦はもう始まっている」と読む順番を間違えたのかもしれない。前作にすでに具体的な理由があったのかも。内容はロシアと同じことをイラクにしたアメリカが、生産力が落ち斜陽の兆しがみえてきた覇権をなんとか繋ぎ止めるためロシアを追い詰めていったというもの。これは私も前から感じていた説だったので、ストンと腑に落ちる部分が多かった。

  • 言われればそうかな、という、納得感はありました。たしかに。
    エマニュエル・トッドが中立的な立場で書いたと冒頭にあります。
    ウクライナ戦争はプーチンのせいであるが、真の原因は、アメリカとNATOにあると暗にいっている
    第3次世界大戦はすでにはじまっている
    ウクライナ戦争はそもそも、ロシアとドイツを引き離そうと、アメリカが始めた戦争だ。
    パイプラインの爆破も、ロシアの仕業とあるが、トッドは、アメリカとイギリスがやったに違いないといっている
    ロシアにとって、ウクライナがNATOに加盟することがどれほどの脅威であるのかを西側は理解していない、いや、アメリカは理解していたからこそ、ロシアにウクライナを侵攻せしめた
    そういう意味でアメリカが望んだ戦争であり、真珠湾と同様、アメリカとは、他国を戦争に向かわせることをする国なのだ。
    ウクライナを支援しているアメリカも、グローバリゼーションとして生産能力を外にだしてしまっているので、どこまで体力がもつかはわからない。ロシアと、アメリカのがまん比べだ。
    ロシア嫌いの地域圏というのがあって、バルト3国、ウクライナ、ポーランドである。
    ポーランドが再軍備化をすすめていてフランス、ドイツなんかよりも、強い軍事国家になりつつある。そしてユダヤ人がかつて多く住んでいたところ、中流を担っていたユダヤ人が戦争によって消滅させられた

    もともと、ウクライナは破綻国家であって、国家の体をなしていない。
    戦後のウクライナは、非常に悲劇的なものになる。すべては破壊されて、復興はとても困難になる。アメリカが何か援助をするとも思えないから
    NATO加盟国の1つに対する攻撃はNATO全体への攻撃をみなす それによって、NATO軍(西側)VSロシア(+中国、インド、西側以外)という構図になっている。
    だから、ウクライナ戦は、アメリカを中心とした西側と、ロシアとの第3次世界大戦である、そして5年は続くとみている。
    また、ウクライナでアメリカが破れるのではないかという確信を中国は気が付きだした

    西側で工業力をもっているのは、実は、ドイツと日本なんです、アメリカでない。
    ドイツも日本も、家族制度や親族システムがきわめて似通っている
    ドイツも日本も、西側にいるのは、第2次世界大戦で敗れたからという理由なんです。両国とも、アメリカに占領された保護国なんです。

    この状態、リベラルの自由主義というものを作り上げたのは、フランス、イギリス、アメリカなんです。

    アメリカの外交施策の1つとして、同盟国を見放すというものがあります
    もし、台湾で対中国戦があった場合に、西側が負けそうになったら、台湾や日本をアメリカは平気で見放すでしょう。だからウクライナでも同様のことが起きないともかぎらない

    ドイツが、アメリカに従わなくなるような可能性も想定することができるのかもしれません。
    日本も、岸田首相が、アメリカによって、ウクライナにつれていかれた。いいことではないんです。

    中国がロシアをささえ、インドもロシアに親近感をもっています。

    ロシアは権威主義だけども、それぞれの国の特殊性を尊重して、自国の価値観を他の国には押しつけていません
    一方、アメリカという国は、アメリカ的な民主主義をいろんな国に押し付けています

    アメリカの崩壊ということになれば、「アメリカに従っていればいいんだ」という思考停止状態から、脱して、もう一度考えなおさなければなりません。
    アジアにおける日本、アジアの中の日本ということをもう一度考えるべきです。

    トッドいわく、アメリカが崩壊したら、日本の取るべき道は3つ
     ①アメリカの傘から抜け出して、真の自立のために、核武装を行うこと
     ②中立国となること
     ③子供をつくること

    目次
    はじめに
    第1章 ウクライナ戦争の原因とジャーナリストの責任
    第2章 終わらない戦争
    第3章 無意識下の対立と「無」への恐怖
    第4章 アメリカの没落
    第5章 多様化していく世界と我々
    ロシアはもちろん悪いのだが―あとがきに代えて
    年表 ウクライナ戦争をめぐる動き

    ISBN:9784022952233
    出版社:朝日新聞出版
    判型:新書
    ページ数:200ページ
    定価:790円(本体)
    発売日:2023年06月30日第1刷

  • 歴史人口学者・家族人類学者としての
    トッドさんのお話は面白いのです。
    でも池上さんの質問に対して、少なくても私にとって
    明確な答えが返ってこない気がします。
    たとえばこんな感じ。

    〈これはもう、もはや戦争がどのように終わるのか、
    戦争自体が真実を教えてくれるということを
    待つしかないと思っています。
    歴史家の私たちはひじょうに謙虚でなければいけないというふうに思います〉

    また池上さんの「NATOの兵器供与が戦争を長引かせているのか」という質問に対し

    〈そうですね、その点に関しても分析をしようと、いろいろ試みているんです。私はこれをすべきだとか、すべきではないといったようなことを言う立場ではないと思うんですが、アメリカがなぜウクライナで戦争をこういう形で展開しているのかということを考えると、まず国政政治におけるアメリカの態度というものを一度振り返ってみる必要があると思うんですね。まず、アメリカの外交政策の特徴の一つとして、「同盟国を見放す」という点があります。たとえばですけれども、もし(長いので後略)〉

    この前に佐藤優さん小林よしのりさんの本を読んだので
    トッドさんにももっとストレートな意見を期待してしまいました。
    私にとってトッドさんの本は4冊目なんだから
    いいかげん学ばなきゃと思いました。

  • トッド氏が自由に発言できなくなる世の中は問題だ。今、日本が一番ニュートラル?

  • 読み始めて、頁を繰る手が停められなくなり、直ぐに読了に至った一冊だ。
    本書の場合、「凄く面白い小説」の「停まらない」とは少し違う意味合いで「停まらない」であったと思う。何方かと言えば「少数意見?」なのかもしれないモノの中に在る、真実のようなモノを示されるような気がする叙述が連続しているのである。
    2022年2月のウクライナでの事態は、「ロシアによる侵攻」に他ならないので「ロシアは問題」とされ、そういう報じられ方の“一色”という感じだったと思う。それは概ね1年半を経ても大きくは変わっていないと思う。そうした中で「寧ろアメリカが問題」とするのは、既に「少数意見?」というように聞こえるような気がする。が、本書のエマニュエル・トッドは少し前から既にそういう趣旨の観方を示している。
    本書はそのエマニュエル・トッドの談を、池上彰が“聞き手”として引き出す対談集のような内容である。フランスと日本とをオンラインで結ぶ対談を繰り返し、その内容を纏めている。
    エマニュエル・トッドはフランスの歴史学者で、積上げられた統計資料に依拠して国々の社会変化を論じる等、独特な研究で知られている。現在、彼は本国では「反体制的知識人」という感で、必ずしも自由に御自身の論考をメディアで発表し悪い面も否定出来ない状況下に在るのだという。他方、日本では「欧州の学識者」という、もう少しフラットな位置に在るので、御自身の論考を発表するようなことがし易いという。そのエマニュエル・トッドはウクライナでの事態を「第三次世界大戦」と評し、その論考を日本で最初に発表した。その日本で発表した内容がフランスの新聞に紹介され、他の国々でも取上げられるということが既に在ったのだそうだ。
    そういう事柄も在って、エマニュエル・トッドは日本での出版企画に少し積極的と見受けられ、本書の企画に参画したようだ。本書では、ウクライナでの事態を「第三次世界大戦」と評していることを踏まえながら、簡単に収拾し悪い様相になっている世界の危機を論じていると思う。
    国々の経済活動は、大局的に観て、何十年間かでその様相を変えて行く。今般、“制裁”の問題等で、ロシアが如何こうということに留まらず、方々の国々の様子が変容を強いられるような様子も既に見受けられることが本書の中で指摘される。そうした意味で事態は既に世界を巻き込んでいる。そして兵器の供給というような事も続くが、これは或いは“参戦”も同然であろう。結果、戦場となってしまったウクライナでの死傷者が増える一方である。
    本書の中では、第一次大戦や第二次大戦のように、足掛け5年間程度は戦争状態が続いてしまうかもしれないというようにも指摘されている。そしてそれは「勝者無き戦い」に終始してしまうのかもしれないとも指摘されている。
    こういうような「考える材料」は押さえておくべきだと思う。雑誌記事のように手軽に読める本書は御薦めである。

  • ●レーニンの言葉を借りれば、この戦争は、グローバル化が極端に到達したところで起きている。グローバル化の原則、生産拠点を移転すること。中国や東ヨーロッパなどに移転することで、より安い人材を使う。西側諸国が軍事の人材もアウトソーシングしてウクライナの兵士を使いながら、ロシアと代理戦争をしているような所がある。

  • p19 トッド この戦争は、ウクライナ中立化という当初からのロシアの要請を西側が受け入れてくれれば、容易に防げた」と指摘。
    つまり、ウクライナとアメリカが、ウクライナがNATOに加盟することが、いかにロシアにとって脅威なことだったかという点を理解していなかったかどうかになる

    p27 ロシアフォビアに動かされている自立した地域圏
     バルト3国、ウクライナ、ポーランド 非常にロシアへの恨みをもっている

    p67 ウクライナの西部(ガリツィア地方)はかつてポーランドが支配していた
    将来ウクライナがこの西部はポーランド、東部はロシア、そして真ん中のキーウ、ドニプロ川のあたりがウクライナと、要するにウクライナが3分割されてしまうという、そういう未来も見えてくる気がする

    p118 ウクライナの中流階級の人々が大量におそらく流出しただろうと言われている。中流階級がないという国は成立しない。中流階級があってこそ、国家というものは成立する。

    p173 私は、いまよくこう言います。いまの人類が直面している問題は2つあり。地球温暖化とアメリカだと

    p176 わたしは5年だと思いますね。人口動態でみるとロシアの人口が最も減り始めるのが5年後であること、また第一次世界大戦、第2次世界大戦ともに5年ほどで終わったということもあります。

    p177 それで結果的に、どこにも勝者がいないという戦争がいま展開されているんだということを、これも残念ながら私達は認識なければいけないのかなと思っています

  • 家族や共同体としてのあり方、文化的背景から分析するウクライナ戦争の各国の考え方の違いや、アメリカの“これから”がとても興味深かったです。

  • ベース情報が既に1年前ではあるが、書かれている内容は古くなっておらず、新鮮な状態で拝読(つまりウクライナ戦争が膠着状態であるということだが)。タイトルの通り、ウクライナ戦争に至る過程は、まさにアメリカ中心世界の終わりの始まりで、アメリカの生産力低下・エリート層の劣化・民度の劣化等、総合的劣化が根本にある。分断が進む世界=不安定化ではない、という言説を信じたくはなるが、これは誰にもわからない。プーチン独裁のロシアが世界の覇権を握る未来像は想像もしたくないが、世界が行き過ぎたグローバリズムから緩やかな分断に移行していくことは間違いないように感じる。本書は池上氏の質問にエマニュエル・トッド氏が回答する形式での対談本になっているが、池上氏の質問力の高さにも目を見張るものがあり、奥深さを改めて感じた。

  • ロシアと西側の代理戦争としてのウクライナ戦争に関する報道は、その量と内容についてジャーナリストが持つ信仰のようなものが影響しているという指摘は報道内容に対して自分の軸をちゃんと持たなければいけない、という気持ちを強くさせる。単なる戦争、軍事的な分析だけでこの争いを語るのではなく、多面的側面から読み解くからこそエマニュエル・トッドは先を見通すことができるのだろう。ジャーナリストとして中立的立場である池上彰も自身の軸を持って語っているので大変参考になる。
    いずれにしても問題だらけだな、世界は。その問題を上手く利用してやろう、という国々の利己的な思惑は恐らくなくならないけど、勝ち負けだけじゃなく、もう少し穏やかになって欲しいと思う。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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