- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784036501007
感想・レビュー・書評
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ノルウェーの人類学者ハイエルダールは考えた。
南太平洋のポリネシア人はどこから来たのだろう?従来西から来たと言われているが、それとは別に南米から海を渡った南アメリカインディアンもいるのではないだろうか。彼らは何キロにも渡る太平洋をバルサの木(南アメリカ原産の軽い木で、アメリカインディアンが筏に用いた)の筏で3ヶ月掛けて渡ったに違いない。自分でそれを証明しよう。
1947年4月28日、ハイエルダールを含め6人の乗組員は、筏船に乗って太平洋に乗り出す。筏の名前「コンチキ号」は、インカ帝国の太陽神ビラコチャの別名である。
本物のコンチキ号はこちら
https://www.kon-tiki.no/expeditions/kon-tiki-expedition/?lang=ja
乗組員はこちら。
ハイエルダール:この旅を言い出した人。ノルウェーの人類学者。
ヘルマン=ワッチンガー:技師の青年。風や潮流や波についての測定をする。
エリク=ヘッセルベルク:画家。大柄でギターがうまい。
クヌート=ホウクラント:無線技師。漂流の場所や情報や天気を伝える。戦時中は無線部隊にいた。
トルシュタイン=ラービー:同じく無線技師で、戦時中は無線部隊にいた。
ベンクト=ダニエルソン:アマゾン川流域探検の経験のある探検家。コック。唯一のスウェーデン人。
いやあ面白かった!!
まずこの無茶苦茶な航海に同行した5人がすごい。
ヘルマンは話を聞いただけで「行きたいなあ」と志願。ワッチンガーとクヌートとトルシュタインは、会ったこともないハイエルダールからの「ぼくは、南太平洋の島々の人間がペルーから来た、という学説を証明するために、筏で太平洋を横断しようと思う。君も一緒に行くかい」という手紙であっさり了承。ベンクトは新聞でコンチキ号航海を知って志願。
この漂流記は本当に危険なはずなのだが、最初から最後までなんとものんびり、しかしドタバタな穏やかな時間が流れている。ペルーの軍隊や政府の後援を取り付けるあたりはすれ違いコントのようだし、出発の時などドタバタコメディのよう。
海に出てからも危険なことや貴重な経験が多く語られるのだが、どれも自然への畏敬といたずら心が垣間見える。筏の横を飛ぶトビウオに衝突されて痛かった話、記録される限り初めてヘビウオを捕まえた話、記録される限り初めてイカがロケットのように飛ぶのを見た話、おばけのような黒い影の話、サメが着いてきた話、そしてサメの尻尾を引っ張って筏に乗せてくる遊びをした話。
食料は、出発時に持ち込んだ缶詰、釣った魚、そしてプランクトンも試してみた!
水はかなり持ち込んでいたが、水だけでは喉の乾きが収まらない、そこで真水に2割から4割の海水を入れると喉の乾きは収まって気分が悪くもならないという。
コンチキ号にはボートも積んでいて、ボートからコンチキ号を見るとあまりに小さくて波の合間をひょこひょこするから笑ってしまったのだそう。
無線も役に立った。コンチキ号のことはニュースになっているので、それを知った馴染みの無線仲間ができて、無線が途絶えたら本当に心配してもらい再開したら無線仲間たちが一斉に送信してきたのだとか。うん、世界と繋がってるんだね。
命の危険も何度もあった。コンチキ号から離れたらそれは死ぬこと。何度も大波に攫われて「死ぬならこのロープを掴んだまま死のう」と思ったとか、暗礁に乗り上げコンチキ号が削られることもあった。それでもバルサの木はとても強くしなやかで柔軟性が合った。
命がけなのにユーモラス、そうだよね、命がけの冒険をするなら余裕と遊び心がないとだめなんだろう。
航海は、出港から102日後の1947年8月7日に、ツアモツ諸島のラロイア環礁に座礁したことで終わる。残念ながらハイエルダールたちの学説を完全に証明する事はできなかった。しかし島の原住民の歓迎を受け、自分たちは、みなさんの先祖のチキがペルーから来たということを証明するために来ました、と言ったら、そうだ、自分たちの先祖はチキという酋長だ、昔話が証明されたと喜んだという。外からくる白人の運んでくるものは貴重だし、巡り合った人とは友人なのだ。
コンチキ号はもう使えなかったので、フランスからきた迎えの船に乗りタヒチに渡り、さらにノルウェー船に乗りアメリカに戻った。
<青い海は、波立っていた。しかし、その波に手を差し伸べても、もう、ぼくらの手には届かなかった。白い貿易風雲が青空を流れていた。しかし、ぼくらは、もう、その雲と一緒に流れてはいなかった。P268>
こちらの翻訳は、子供向きの本をさらに短くまとめたものだそうです。
面白かったからフル版もいつか読まなければなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2021年6月7日読了。
ニューヨークの西72番街に、
<探検家クラブ>という、しんちゅうの表札を
掲げた建物がある。
P149
モアイやチチカカ湖の遺跡にあるコンチキの帯…
伝説によると太陽神の象徴
マンガレバ島の神話には
「太陽の神は、魔法の帯であるにじを体から外し、
それをつたって空から降りてきた。
そして、その子孫である白人たちを、
マンガレバ島に住まわせた」とある。
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面白いですよ!
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ノルウェーの学者が、自身の仮説を証明する為に南米ペルーから、イカダでポリネシア諸島を目指して航海する話し。
・仲間を集めて、海へ出るまでの行動力。
・周りに無謀と追われても、海へ出る勇気。
・海へ出てからの、自然と戦う力強さ。
・学者としての、生物への探究心。
・同乗した、6人の友情。
・困難に立ち向かい、諦めない気持ち。
・目標達成した時の、喜び。
普通に生活していたら、絶対に味わえない体験。
本書を通じて、それが、擬似体験できた。
子供から大人までオススメ! -
2021/11/7 追記
詳細は、あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノートをごらんください。
→ http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1756.html
~ ~ ~ ~ ☆ ~ ~ ~ ~ ☆ ~ ~ ~ ~
2013/04/17〜2013/7/8 記
2013/6/29公開の映画「コン・ティキ」 おもしろそう!
映画より先に 原作を読みたい! 2冊、読みました。
ちょうど、太平洋戦争が終わってすぐの頃、
学術研究を理論だけでは受け入れてもらえなかったハイエルダールは、
古代の人がたどったのと同じルートを、同じ構造の筏で航海。
運良くいい仲間を5人得られ、冒険の末に着いた島でも現地の人に親切に助けられる。
バルサの筏コンチキ号で、ペルーからポリネシアまで辿り着いた。
その後も、更に自説を裏付ける研究を続けたとのこと。
ハイエルダールの説に反論する学者もいて、その面白い本もあるとのこと。
そっちも、読んでみたい!
本を選ぶ時、この本と少年少女向けの「コンチキ号漂流記 (少年少女世界の大探検 1) 」
どちらにするか迷った。
掲載されている図版や地図、イラストが違っていてどちらも捨てがたい。
迷った末に両方読んでしまった (^^ゞ
出だしが違うのと、少しだけ難しく書かれている。
訳者あとがきと解説もそれぞれ、2倍楽しめました。
我ながら同じような本なのに2冊も読むとは すごいことです! (^^ゞ
2013/04/17 予約 4/23 借りて読み始め。4/29 読み終わる。
内容 :
著者と5人の仲間が、筏船のコンティキ号でペルーのカヤオ港から南太平洋のツアモツ島まで4,300マイル(8千km弱)を航海する。
その航海の記録。
著者 : トール・ハイエルダール
トール・ヘイエルダール(Thor Heyerdahl, 1914年10月6日 - 2002年4月18日)は、ノルウェーの人類学者、海洋生物学者、探検家。
筏船のコンティキ号でペルーのカヤオ港から南太平洋のツアモツ島まで4,300マイル(8千km弱)の航海を行ったことで有名。 -
ポリネシア人が南米から筏で渡ってきた、と考えたノルウェーの学者ハイエルダールが実際に太平洋を筏のコンチキ号で渡り記した冒険記です。
本書は児童書のため簡単な漢字と言い回しが使われていますが、内容は原書と同じものです。
ポリネシア人の先祖は鉄器はなくとも優れた文明人で、イースター島の石像を作る石工術や、筏やカヌーを使用した航海術を既に獲得していました。
残念ながら著者の学説は証明されてはいませんが、ヨーロッパ人が大航海時代を迎えるよりも大昔にポリネシア人は壮大な冒険をして、更に島々への移住に成功していたのかもしれないのです。
著者が感じたその感動を、読了した後に感じることができた一冊。 -
子供の頃は、冒険ノンフィクションって男の子向きという感じで読んでいなかったのを、何十年ぶりにこんなのあったなと思い出して読んでみた。
ポリネシアンのルーツについては、現在ハイエルダールの説は否定されているらしいので、学術的な価値はあまりないのかもしれないが、まだ大きな謎がたくさんあって、それを解明しようと(現在の目で見ればかなり無謀な)冒険の旅に出るという当時のヨーロッパの知的階級の意気込みが伝わってくる。今はこんな旅、できないものね。
人とのふれあいより、海の生き物の描写が楽しい。クジラが息をしている音を聞いて、彼らも確かに我々と同じ哺乳類なんだと実感したり、サメをからかって遊んだり。
夏休み、頭のぼんやりした時読むと夢見心地になれてよさそう。
今どきの子供が夢中になるかどうかはわからないが。 -
まだ読んでいなかった名作。と言いますか、タイトルの響きから海をいかだで漂う珍道中だと思っていたのですが、全く違う内容でした。
太平洋ポリネシアの島々と南米の文明の共通点から、古代南米から海を渡ってポリネシアに移住した人々がいたのではないかという学説を立てたハイエルダールが自ら実際にいかだで太平洋を渡った時の記録。子ども向けの内容ということでかなり簡略化されてはいますが、疑問があり証拠を集めそれを実証しようとする科学者の目の流れが書かれているのが素敵です。それがあるからこそただの冒険譚に終わらない広がりを感じます。ここを起点に興味を持ったことを調べていくという科学の芽があります。
そしてなにより読み物としての面白さ。次から次へとやってくる障壁。それを越える時の爽快さ。まだ見ぬ世界へと繰り出す楽しさ。科学の面白さと冒険の面白さが両立しているからこそ名作として打ち立てられているのでしょう。