土神と狐 (日本の童話名作選)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (35ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784039636409

感想・レビュー・書評

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  • 野原の樺の木には二人の友達がいました。
    土神と狐です。
    土神は、樺の木とうまく話をしたいのですが、粗野で乱暴で樺の木を怖がらせてしまいます。
    狐は見かけは上品で口もうまいのですが、不正直だったかもしれません。
    樺の木と狐が仲良く話す様子を見た土神は、とても苦しみます。
    神である自分があんな狐のことを気にするなんて。
    しかし気持ちは抑えられません。

    それでもしばらく日を過ごすうちに、土神の心に穏やかさが戻ってきます。
    暖かな気持ちで樺の木のところに向かった土神ですが、狐の姿を見て激しく激しく嫉妬に身を焦がし…。


    宮沢賢治の童話を「組木絵」で表現した絵本。
    「組木絵」とは、数十種類の木材の色の違いを生かして絵として組み込んでゆくという手法だそうです。
    全ページで組木ですよ!
    土神の猛り狂った髪の毛の逆立つ様子、ぽつんと生える樺の木のたおやかさ、広い荒野。
    嫉妬が人の心を歪ませ、その衝動から悲劇が起きるなかなか衝撃的なお話。

    • H.Y OTさん
      土神の心に穏やかさが戻って来たまま終わってほしかった、、、、、
      土神の心に穏やかさが戻って来たまま終わってほしかった、、、、、
      2023/10/17
    • 淳水堂さん
      H.Y OTさんこんにちは

      宮沢賢治のなかでも恋愛を感じさせる珍しいおはなしですよね
      土神の嫉妬、狐の見え張り虚言…どっちもあること...
      H.Y OTさんこんにちは

      宮沢賢治のなかでも恋愛を感じさせる珍しいおはなしですよね
      土神の嫉妬、狐の見え張り虚言…どっちもあることなんだよなあ
      2023/10/18
  • 土神、樺の木、狐

    嫉妬のあまり狐を殺してしまう土神
    だけれど、狐の家はただの土の巣穴で書物なんかないことを知ってしまう。

    こんな話もあったのか。
    やりきれない。

  • 宮沢賢治作。初読。娘には難しかったと思う。私も最後、狐のカモガヤの穂2本で土神が号泣した意味が分からなかった。格好よく振舞っていた狐が実は虚言で2本の穂しか持っていなかったことで泣いたそう…。

  • この作品も深いなあ。。。
    この作品は、人間の本質をよく突いていると思う。
    土神が神でありながら、
    狐ごときに嫉妬してしまう気持ちも
    よくわかるし、
    狐が自分をよく見せたいために
    ちょっとしたうそをついてしまうのも
    よくわかる。
    人間なら、誰だってそのような気持ちは
    一度くらいは経験したことあるだろう。
    ラストシーンがよかった。

    そして、中村道雄の「組み木絵」がとてもよかった。
    木だけを使って、こんなに表情豊かな絵が生まれるんだなあ。
    土神と狐がとてもよく描かれていた。

  •  女の樺の木に想いを寄せる、粗野な土神と洗練された狐。樺の木と狐の様子に嫉妬を抑えられない土神は……?


     図書館本。
     やや漫画チックな造形を木で見事に作り出した絵本。
     樺の木の樹皮の縞を木目でしっかり描き出したり、土神の厚い唇の陰影をやはり木目で絶妙に表現したりと、細かいところにまで目配りのきいた作品。
     内容的に小さい子にはちと難しいが、絵だけでも楽しんでもらえ……ないかな? 土神が怖すぎるかな。

  • 「谷地に住む土神は、粗野で乱暴な土地の神でしたが、一本木の野原に立つ、きれいな女の樺の木に心惹かれていました。ところが樺の木にはもう一人の友達がいて、樺の木は、その気取り屋でやさしい狐のほうを好きなようなのです。土神は切なさと嫉妬に悶え、苦しみぬいた末、なんとか樺の木への執着と狐への憎しみを克服しようとしたのですが…人間の存在を修羅とみなした宮沢賢治が、その修羅性とそれによって生じた悲劇をあからさまに描いた、異色の童話。この作品のもつ独特の世界を、中村道雄が組み木絵で表現しました。」

  • 表紙・扉;装幀/岡本明

  • 嫉妬はこわい…

  •  クラスの子が首をひねりながら読んでいたので,私も読んでみました。宮沢賢治の『土神と狐』です。
     ごく乱暴にまとめてしまうと,樺の木と土神と狐の三角関係の物語です。上品で博識な狐が美しい樺の木に近づくので,土神は嫉妬の気持ちに荒れ狂います。この辺の描写は,恋したことのある人なら共感できるかと思いますが,小学5年生には無理だったようです。
     物語の最後,土神は突然激情にかられて狐を殺してしまいますが,その後にレインコートのかくし(ポケット)の中にかもがやの穂が2本入っているのを発見し,大声で泣きます。この終わり方が謎。何度も読み返しましたが,かもがやの穂に関して伏線が張られていたようなこともなく,土神が激しく泣いた理由がまったくわかりませんでした。
     帰宅してからネットであれこれ調べてみると,この作品にはいまだに様々な解釈があるということがわかりました。大人が大真面目に議論しているのですから,小学5年生が意味がわからんと首をひねるのも仕方のないことです。

     上で紹介している本は,挿絵が全て木を組み合わせてできた組み木絵で描かれていて,作品の中身だけでなく絵の美しさも楽しめます。

  • 人間の嫉妬・切なさ・苦しみの心理とそれによって生じた悲劇が迫力ある組み絵によって表現され、独特の世界を織り成し、子供達の惹きこみました。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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