どうして僕はこんなところに (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (521ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041000298

作品紹介・あらすじ

天才紀行作家の自選短編集、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 人はなぜ旅をしようと思うのか?人を旅に向かわせるものは何か?それは、どうしても自分の目で見て、体験してみなければその渇きを癒せることのない心の動きであり、一度その思いにとらわれてしまうと、それが実現するまでは常に心のどこかで、ふとした拍子に心の表面へと浮き上がってくるものなのである。それでチャトウィンは、例えばブリテン諸島最北端のハーマネスにいるというアホウドリを見るために、アバディーン行きの夜行列車に飛び乗ったりするのである。

  • “非凡の目利き”チャトウィンの旅本。
    美術鑑定家であり考古学者でありジャーナリストであるチャトウィンが、
    なにに興味を持ちなにを求めていたのか。

    インタビューあり、後半は歴史本のようにもなって、ややまとまりにかける、
    だからこそ彼の旅の集大成といえるのかも。
    これを中仕切に新しい仕事へ向かおうとしたところでの夭折、残念。

  • チャトウィン本人が死の直前に編集したエッセイ集。旅行記、回想、ややジャーナリスティックな仕事などを含む。

    チャトウインはエキゾチックな国に深く分け入って旅する訳だが、それを日本人として読んでみたとき、題材自体のエキゾチックさと、自分の感覚とは異質なヨーロッパ人の眼差しを通してみることとの、二重のエキゾチックさを感じる。飛行機の中でボーっとなりながら読んだせいかもしれないが、夢の中にいるみたいな気がした。

    すごく魅力的なんだが、読み切れていない残尿感的なものが残っている。。。

  • 恥ずかしながら、本作を読むまでチャトウィンという作家を知らなかった。随分有名な作家さんであるらしい。

    この本は、色々なジャンルについて色々な時代に書かれた短めの文章を自選した作品集。彼の多芸多才ぶり、そして人脈の多彩さにも驚かされる。そんな文章も決して見せびらかすわけでもなく、エラぶるわけでもなく、飄々として洒脱に味わえる。

    本人は「放浪の紀行作家」などと呼ばれることを嫌ったらしいが、これだけ世界中を飛び回っているスタイル自体、並みの紀行作家では足元にも及ばないだろう。どのページを繰っても旅の匂いが漂っている。

    そういう作風であるだけに、家にこもって読むのは勿体ない。長い一人旅の旅に持って行くのがふさわしい。それが無理なら短期の旅行でも、日帰りの散歩でも、出張や通勤でも…とにかく、インドアよりはアウトドア、ルーチンから離れたところでひも解くのに最高の1冊である。

    他の作品「パタゴニア」や「ソングライン」も機会を見つけて是非読んでみたいと思った。

  • チャトウィンといえば紀行文の名著「ソングライン」、「パタゴニア」の著者だ・・・といっても両方大昔に読んだので、覚えていない。ただ「良かった」という記憶だけが残っているのでソングラインの新訳まで買った(未読)。40代の若さで亡くなったことも今回知った。
    彼のエッセイ集があったこと、それが文庫になっていることを知って購入。非常に博識な人で、歴史、美術、社会・文化と、驚くほど多岐にわたる内容について、プロフェッショナルな観点で語り尽くす。旅ライターの類ではまったくないが、あてどのない旅の空気に包まれている。文章は余分なサービス精神はなくミニマルにして、硬質で簡素だ。この文章を読んでいると、内容の面白さはあるのだがそれ以上にチャトウィンという人物が浮かび上がってくるようだ。
    その人物像を端的に表現するのが表紙の写真。こんなすばらしい遺影を残してみたいものだ。彼の父親の目はこのうえなく美しい青だった、という一文があるが、彼の瞳もまたとない青、旅で出会う海の青空の青ではなかったかと想像する。

  • 大崎Lib

  • "信じる神を聞かれて、「僕の神様は歩く人の神様なんです。」と答えた旅人チャトウィンの自選作品集です。有能な美術鑑定士として活躍するも旅への情熱を抑えきれず退職、考古学を学びなおした後は、『パタゴニア』『ソングライン』といた紀行文学で名を挙げ、48歳で夭折してしまう・・・いろんなものの間を歩き続けた歩く人の代表選手です。
    恐怖の映画監督ヘルツォークを「歩くことの持つ神聖な面について、まともな会話のできる唯一の相手であった」とする一編「ヴェルナー・ヘルツォーク・イン・ガーナ」など、事実に即した架空の物語の中で、楽しく歩き回りましょう。
    "

  • すごく昔にパタゴニアを読んで以来のチャトウィン。とても美しい紀行文といった印象だった。が、今作の自選短編集を読んで、ただ美しいばかりでなく歴史を熟知した思想性に満ちた文章であることに驚いている。深い造詣があるからこそ、旅先での景色や人物の描写に煌めきと憂いが深く、静かに美しく響いてくるのだろう。文明の行きつく先に何も見えなくなってしまった今だからこそ心に訴えかけてくるものも大きい。幸いパタゴニアは私の手許に残っている。もう一度読んでみよう。

  • 【選書者コメント】どうしてでしょうね。

  • 子どもの頃の僕の夢は、冒険家になることだった。
    スティーブンソンの『宝島』やマーク・トゥエインの『トムソーヤの冒険』はテレビアニメも本も好きだった。
    日本の作品では、斎藤惇夫の『冒険者たち』を何度も読んだ。
    街のネズミのガンバが大冒険をする物語。
    こんなことしたいなあ。
    いや、 海賊やイタチと闘いたかったわけじやない。
    どこか遠くへ行きたかったのだ。

    ブルース・チャトウィンの『どうして僕はこんなところに』は、イギリス人の紀行作家の自選作品集だ。
    旅をして書いた文章だが、普通の紀行文ではない。
    エッセイ、コラム、ルポルタージュ。様々な方法で様々な旅や人を書き分けている。
    アフリカでのクーデター、ソビエト時代のヴォルガ川の船旅、インドでガンデイー夫人の選挙遊説など、取材というか興味の対象が広く、よって書き方も多用。
    才能のある人なんだ。文章も行動も。
    経歴がまた非凡。
    「英国シェフィールド生まれ。モールバラ・カレッジ卒業後、サザビーズに就職。有能な美術鑑定士として8年間勤務するが、旅への情熱を抑えきれず退職。エジンバラ大学で考古学を学んだ後、3年間「サンデー・タイムズ」の記者を務める」
    徒手空拳で世界を渡り歩き、美術の鑑定のプロフェッショナル。まるで『ギャラリーフェイク』のフジタのよう。いや、画家の藤田嗣治のよう?
    恰好いいなあ。
    残念ながら、48歳でなくなっている。
    私はその彼の歳を過ぎ、生まれた所と同じ所に今も住み、旅、冒険とは縁遠い生活をしている。
    「どうして僕はこんなふうに」
    読み終わったあと、そう思わずにはいられない、感情を波立たせる秀作。

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著者プロフィール

1940年イングランド生まれ。美術品鑑定や記者として働いたのち、77年本書を発表し、20世紀後半の新しい紀行文として高い評価を得る。ほかに『ソングライン』『ウィダの総督』『ウッツ男爵』など。

「2017年 『パタゴニア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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