利権聖域 ロロ・ジョングランの歌声 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002339

作品紹介・あらすじ

菜々美の従兄・稔は8年前、新聞記者として赴任したインドネシアの東ティモール独立紛争に巻き込まれ死亡した。最後の便りはロロ・ジョングラン寺院の写真だった。週刊誌記者となった菜々美は、インドネシア・中部ジャワ地震の現地取材で、NGOボランティアや国際開発コンサルタントの日本人と出会い、国際協力の裏側を知る。稔の死に芽生えたある疑念とは。国際援助のあるべき姿を問う、第1回城山三郎経済小説大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 松村美香『利権聖域 ロロ・ジョングランの歌声』角川文庫。

    古本屋で眼にし、第1回城山三郎経済小説大賞受賞作に惹かれて購入。単行本は2009年の刊行。

    その後の著作が極めて少ない作家だが、女性作家とは思えない硬質な文章と慎重なストーリー展開は好み。

    変わりゆく世界情勢。微妙なバランスの上に成り立つ西と東の関係はいつ壊れてもおかしくはない。国際経済協力、海外ボランティア。巨大な資金が動くところには人間の欲望が渦巻き、必ず利権が発生し、悪が生まれる。いつの時代も、どこの国でも変わらない出来事。

    主人公の週刊誌記者・藤堂菜々美は8年前にインドネシアの東ティモール独立紛争に巻き込まれ、死亡した新聞記者だった従兄の中瀬稔の最後の便りの写真に誘われるかのように、インドネシア・中部ジャワ地震の現地取材を志願する。

    菜々美はインドネシア・中部ジャワ地震の現地取材を通してNGOボランティアや国際開発コンサルタント、フリーランスのライターらと出会い、国際協力の裏側を知るうちに稔の死に疑念を感じる。

    本体価格743円(古本100円)
    ★★★★★

  • インドネシア、東ティモール、それに関わるODAを絡めた小説。
    経済小説と思って読み始めたが、主人公が女性ということもあるからか読みやすく、難しい部分もそれほど感じなかった。途中から止まらなくてドンドン読み進んでしまった。

    激動の時代のインドネシアの様子がよくわかるし、当時のODA事情についても勉強になった。内容も理屈っぼくなく簡易な文章で理解しやすかった。

    ただ一点、強いて言うなら恋愛要素もかなり含まれており、経済小説としてはやや物足りなく感じてしまったかな。。。

  • 小説として面白いのに頭良くなったような気になれる。

  • 第1回城山三郎経済小説大賞受賞、文章は読みやすく洗練されている。経済小説にしては内容に乏しい、新しい発見は特になし、主人公周辺、家族絡みの増悪、恋愛については不要に感じた。

  • ※メモ

    【きっかけ】
    松村シリーズ第一弾

    【概要】
    インドネシアを舞台にした汚職がらみの経済小説。

    【感想】
    人物関係の設定がテンコ盛りで、援助と汚職の堅い話をストーリーのなかでおもしろく読めた。
    他の作品で著者の本業であるコンサル業界についてはかなりリアルに描かれていたが、本作では雑誌編集の現場も生き生きと描写していたので感服。
    援助用語的なものも少々あったけれど、会話をうまく使うなど、読みやすくはなっているかと思う。

    若手会社員の仕事観を書いているところは確かに・・・と思うところも。女性読者であればよりそういう部分はあるかもしれない。

  • 後輩が半年以上前に貸してくれた本。

    研修旅行でインドネシア行く前に読んどけば良かった〜。激しく後悔。

    まあそれはともかく、内容は、

    全体的にはODAについての表裏を語っているんだけど、

    小説のストーリーのなかにその内容が散りばめられているので、

    そこまで硬い内容というわけでなく、

    そしてそれ以外のストーリーがそれなりに成り立っているので

    ODAのことわかんない人でも楽しめそうな本だった。

    最も自分はODA、しかもインドネシアのODAについての話だったからフィクションだったけど非常に面白かった。

    この本を読み終えて、非常に単純な思考回路の私は、

    就活終わったら海外ボランティアに1ヶ月でも良いから行こう、

    絶対途上国に関わる仕事をしたい、と以前より増して思うようになった。

    旅行に行く際、その国の歴史背景とかをしっかり知っていくと、

    その国がまた違った色で見えるのかな。

    知らない以上に楽しくなるのかな。

    あと、『地下鉄に乗って』とちょっぴり設定が似ている…かもしれない。

  • ODAを扱ってはいるけど、それがメインではなく、すごく小説的だった。登場人物に生活感がないというか、もうちょっと魅力的だといいなあと思うけど、小説としてはおもしろい。

  • 上司に薦められて。インドネシア、東ティモールにかかるODAやそれに関わる利害関係者(商社、ゼネコン、政府、NGO等)の様々な歴史や関係をジャーナリストの視点から描くフィクション。小説としては好みが分かれるかもしれないし、個人的には感情移入しづらい部分があった(主人公が女性のため?)が、本書はODAに関わるステークホルダーの果たしてきた役割を俯瞰するのに良い教科書になると思う。(もちろんこれが詳細も含めて全て正しいかどうかは議論があると思われるが、)商社やゼネコン、政府関係者の視点を知るのに非常に勉強になった。ODAとNGOの歴史も平易に紐解いており興味深い。自身にとっては実施機関の役割、ODAと国益の関係を再考するきっかけとなった。

  • <作品紹介>
    菜々美の従兄・稔は8年前、新聞記者として赴任したインドネシアの東ティモール独立紛争に巻き込まれ死亡した。最後の便りはロロ・ジョングラン寺院の写真だった。週刊誌記者となった菜々美は、インドネシア・中部ジャワ地震の現地取材で、NGOボランティアや国際開発コンサルタントの日本人と出会い、国際協力の裏側を知る。稔の死に芽生えたある疑念とは。国際援助のあるべき姿を問う、第1回城山三郎経済小説大賞受賞作。

    <感想>
    経済小説というカテゴリ上、もう少し利権のしがらみが詳しく描かれてるかと思ったが、さわりだけだったので、若干拍子抜けした感は否めない。ま、素人にはまずはこの程度で十分なのかも。
    「さわり」という意味では、数年前まで騒がれた「ODA」が最近聞かなくなった理由、発展途上国での資金援助(円約款)の裏側は垣間見れたので、評価としては★★★★四つです。

  • 国際協力(ODA)の裏側・矛盾を浮き彫りにしつつ、主人公が従兄弟の死の真相を解明していく物語。
    過去にはODAにおける談合や裏金は暗黙の了解であり、業者側はそれを必要悪であったというスタンス語る場面があるが、それなりの説得力があった。
    「必要悪」について考えるきっかけとしたい。
    前半の様々な伏線が後半次々と明らかになっていき、一気に読み切ってしまった。

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