握る男 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023105

作品紹介・あらすじ

両国の鮨店「つかさ鮨」の敷居をまたいだ小柄な少年。抜群の「握り」の才を持つ彼、徳武光一郎には、稀代の策略家という別の顔が。先輩弟子の金森は、彼の夢に惹かれ、全てを賭けることを決意するが……。

感想・レビュー・書評

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  • 2回目。1章から引き込まれる面白さ。6年前に読んだ時にも衝撃を受けたが、やはり面白い。金森視点でゲソの頭の良さと立ち回りの良さを見ながら、あまりにもしたたか過ぎる言動に不気味さを感じることができる。ゲソはとてつもない悪人だが、不思議と人間味がある人物。現実では絶対に関わりたくないが、非常に魅力的に描かれており憎めません。
    太閤記を彷彿とさせるストーリー展開で好みの作品でした。

  • 「成り上がり」って言葉が相応しい。
    寿司を握るだけでなく、人の弱点を握って、食の頂点まで駆け上がる!
    どろどろした成り上がりで、そこまでして、頂点に行かんでも…っと思ってしまう。
    まぁ、スマートなやり方では、頂点までは行かんのやろうけど。幸せか…それで…

  • 『握る男』
    これがもう、抜群に内容を表していて、話の中心を射抜いている。唸らずに居れないタイトルだ。

    昭和56年、金森信次は住み込み賄いつきに釣られて両国の鮨屋に応募し、成り行きで職人を目指し働くことになった。そしてまもなく後輩として入ってきた男こそ、後に日本の食を牛耳る事になる“ゲソ“こと徳武光一郎だった。
    6歳年下、若干16歳の少年ゲソは、人懐こさと愛嬌、鮨の握りの腕前でどんどん頭角を現していく。
    機転、策略、野心をもって、あれよあれよという間に先輩である金森を追い越すだけでなく、巧みに人に取り入り、人を動かしていく。
    人の弱みを握り、店の経営を握り、外食産業を握り、やがて…。


    爽やかめのサクセスお仕事小説かと勝手に思っていたが、もっと泥臭い成り上がり小説だった。
    小さな鮨屋の職人見習いからはじまったとは思えない男達の人生が描かれている。
    昭和後期から平成前期にかけて、時勢を読みビジネス戦略を立てて時代と共に駆け上がっていくゲソと金森の様を、この時代を知るサラリーマンなら特に楽しめるはずだ。
    逆に言えば、今聞くと古臭い会社へのマインドなんかがチラついて、社会も若干変わってきたことを感じる。

    ゲソの成功哲学や、目的のため時勢にあった戦略を立てて実行する力もさることながら、周りの人間をいいように動かしていく能力には目を見張る。
    特に、従業員数名の鮨屋の人間(しかも全員先輩、マネジメント経験などない職人)を、部門を任せ、組織がかなり拡大するまで重用できる人間に変えていく力がすごい。
    ゲソの場合は信頼関係でも人材育成でもなく、相手の弱みを握ること、いわく「キンタマを握る」ことで可能となっているので、あまり参考には出来ないが。

    成功し上り詰めた先の最後が思ったよりあっさりと終わった気がしたが、本を閉じてタイトルを見たときにふと、彼らは一体何を「握った」のかと考えてしまった。
    年の瀬に読んだので、今年を振り返ったり来年の目標を考える時にも思ってしまう。
    自分はこれまで何を握って、これからは何を握るつもりなのか。
    全力で握りにいくことも、握ってどうしたいかも分かってなければ、結局は食べるものがないのだ。

  • 16歳で鮨屋の小僧となり、成り上がっていった徳武と、兄弟子であり、徳武の番頭として動いていた金森。

    金森は、刑務所で、徳武が自殺した記事を見る。

    なぜ徳武は国を牛耳るほどまでのし上がろうとしたのだろうか。
    成り上がれば成り上がるほど、狂気に満ちていく徳武。

    彼の隠された思いと野望。
    徳武と金森の同志、戦友、嫉妬…一言では片付けられない関係。

    昭和から平成を駆け抜けたある鮨職人の物語

    初よみの作家さん。
    あまり読まないタイプの小説だったから、新鮮でした。

  • 寿司職人が凄い寿司を握って有名になっていく話と思ったら、全然違う物を握る話でした。グルメ系ではなく、ビジネス系小説。展開が速いせいか、434ページ、あっという間に読破しました。

  • 初読の原宏一作品でしたが、話がトントン進む成り上がりもの。読みやすく、成功の先や闇を考えさせられる。

  • 成り上がりものが好き。ということで購入した本作。寿司屋を題材にしており、明るいサクセスストーリーかと思いきや、陰謀や策略なども駆使して成り上がる、ダークな一面を持つ作品。
    個人的な好みより最終結末は好きになれないが、前半まではその魅力によりノンストップで読み進めることができた良い作品

  • ゾワっとする男ゲソこと徳竹光一郎と兄弟子金森。ゲソは愛嬌と卓越した技術で寿司屋を乗っ取り、巨大外食チェーンのトップにの仕上がっていく。原宏一さん独特のぞくっとするストーリー。

  • よかった。
    あっという間に読み終わった
    何より事細かに書かれていてわかりやすい

    ある程度裕福、庶民的な育ちより
    貧困さが大人になってからのハングリー精神を呼び起こさせる気がする
    なあなあで生きら得た親の背中をみて育つ子はゴールや目標のない平坦な人生をただ歩むだけだ

    (※偏見)

  • たまたま見つけた本だが当たりだった
    万人にオススメ出来る一冊

    昭和から平成までを成り上がり、駆け抜けた男をNo2から見た作品
    「男」というのが良く分かっているなと感じる
    どこまでいっても満足せず、憑りつかれたように上を目指す、ゴールは無い、という人生がどうなるかを垣間見れた

  • 単行本の帯に、全ての働く男女に読んでほしい、と書かれているから、半沢直樹的な池井戸潤的な内容かと思っていたが、どちらかと言えば逆の内容。
    上を目指す内容は池井戸潤と近しいところもあるが、方法が時には違法であり暗い。
    やられたらやり返す、殺してでも、みたいな。
    社会人が読んだらしんどくなる。
    人のキンタマを握るのは社会人として間違っていないが、圧倒的な独裁政権で誰からも嫌われているゲソを中心にストーリーを描くなら最後はどんでん返しを見たかった。
    どんどん会社が大きくなるのはサクセスストーリーとして爽快な感じだが、最後の怒涛の締めくくりが残念。
    まるで箇条書きを読んでいるような、これまでの長いストーリーを無視するような締めくくり。
    占い師とか、どうやって覚醒剤を手に入れたとか、ポケットに忍ばせたとか、ここまでの内容からすれば詳しく書いても良かったのではないかと思う。
    無駄な表現が少なく読みやすかったです。

  • 成り上がるためには黒い部分も必要なのか。
    成り上がっていく様とその後がみえ、
    ゲソやまわりの人間の心情に入り込みつつ読み終えた。この作者の佳代のキッチンも読んだけど、それとはまた別の雰囲気があって他の本への期待値があがった。

  • すし屋の小僧から一大外食産業の総帥に成り上がる男と、ナンバー2の物語です。
    昭和の末期と平成の最初のころの時代風景も、確か、そんなんやったなあ、って感じで楽しめます。
    でもなあ、最後がなー。そんな簡単に死ぬような主人公に見えんのだが。

    20160331

  • 刑務所に入っている金森が偶然目にした週刊誌の記事「徳武光一郎の死」。
    金森と徳武の出会いは鮨屋の小僧時代。
    日本一の鮨屋になるという野望を持ち、日々準備を重ねていたが、そのやり方はえげつなかった。
    そんな金森と徳武の関係が語られていく。
    徳武の死と金森の刑務所に入ることになった罪とは?
    昭和60年前後の時代背景もうまく絡まっていて、面白い。

    2017.1.3

  • 時代は昭和56年。舞台は東京 両国の鮨屋。主役はその鮨屋に見習いに入った22歳の不器用な金森と16歳にして悪魔的頭脳を持つ通称ゲソのふたり。

    野心と策略の成否は「忠実に任務を実行するパートナーが不可欠」と知悉しているゲソは金森に接近を図る。金森の窮地を幾度となく救い、兄弟子弟弟子の関係は完全に逆転し、手なづけされてしまう。そう、ゲソの人心掌握術は「キンタマを握る=弱みを突く」こと。手下となった金森はゲソの張り巡らした智謀・策略のシナリオに抗いながらも稀代の策略家の放射する熱に惹かれ、ゲソに全てを賭ける。世話になった鮨屋の乗っ取りに始まり、黒い手法で外食チェーンを次々と吸収合併し、やがて食の一大帝国を築くに至る…。

    男同士の歪んだ絆物語でありながら人脈構築・起業・広報・販促のビジネス書の要素に振る舞いや所作論についての考察も一読の価値ある痛快悪漢小説。

  • 冒頭が気になって最後まで一気に読んでしまった感じ。
    ずーっと心の中で「なぜ?」という疑問を持ちながら読んでいました。上手いなあ。

    登場人物に対しては理解に苦しむところもあったけど、面白かったです。
    濃度の濃い小説でした。
    最後に原点に、冒頭に戻ったときはちょっとジーンとしてしまいました…

  • 何を握るのか⁉ いやぁー、面白かった。
    本の帯に、全ての働く男女に読んで欲しい、と。僕もそう思います。
    ゲソみたいなタイプは好きじゃないので最初は嫌な感じで読んでたんだけど、どんどん引き込まれてしまい、最後の最後は少し泣けた。
    この本を手にするとき全く意識してなかったんだけど、この作者は床下仙人書いた人だった。あれも変わってたけどこれも変わってる。
    面白かったです。お薦めします。

  • これは面白かった。ゲソと金森という2人の男の立身出世から凋落までをドラマチックに描いてある。決してスマートじゃないやり方で相手の弱みを握りながら人身掌握し、成り上がっていくゲソの人生にハラハラドキドキしながら読み進められた。寿司の握り方や食に関する薀蓄、飲食チェーンの経営のやり方などがリアルにかかれていてよかった。
    ただ、独裁者は孤独で宗教的なものに傾注していかざるを得ない悲しさ。社長って大変だなと改めて思った。

  • 如何に人の弱みを上手く握り、自分の思うように動かすか。ただ、その先に待ち受ける、人を信じられなくなる状態も描かれている。どのように自分に取り入れるかは、それぞれの人が考える必要があるだろう。

  • こんなに装丁から受けた印象とズレることも珍しい。とはいえつまらなかったわけでもない。
    仕事柄いろんな企業のトップに会ってきたけど、そういった人たちの凄いと思う面や苦手に感じる面(主にこっちが多い)が思い出されて、中盤は物語を追うのも心情を読むのにも少々疲れた。
    この本、結局のところ何が書きたかったのかな…ちょっとわからない。
    スピード感はあって退屈せず読めたので星3つ。

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著者プロフィール

1954年、長野県生まれ。早稲田大学卒。97年に作家デビュー。2007年『床下仙人』が第1回啓文堂書店おすすめ文庫大賞に選ばれるなどベストセラーに。他の著書に「佳代のキッチン」シリーズ、『天下り酒場』『ダイナマイト・ツアーズ』『東京箱庭鉄道』『ねじれびと』(以上、祥伝社文庫)、「ヤッさん」シリーズなど多数。最新作は『間借り鮨まさよ』。

「2023年 『うたかた姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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