完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫)
- KADOKAWA/メディアファクトリー (2015年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041026144
作品紹介・あらすじ
単行本未収録連載100ページ以上! 雑誌『ダ・ヴィンチ』読者支持第一位となったオードリー若林の「社会人」シリーズ、完全版となって文庫化! 彼が抱える社会との違和感、自意識との戦いの行方は……?
感想・レビュー・書評
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わたしにとっての読書の体験というのは、一言で「趣味」と片付けるにはもったいないもの。時に、楽しい旅行や辛い現実よりも、重厚な体験として、心の中に残ることがある。その体験は、何事にも代えがたい、とても貴重で個人的なもの。
普段、わたしはそれを、小説から得る。だからこそ、それが長く続くと疲れる。
ここ最近、そういった重めの読書体験が続いていて、ちょっと疲れ気味だったので、サクッと読める作品をと思い、拝読。
エッセイは、そんなに読まない。嫌いなんじゃない。
好きな作品があって、好きな作家さんがいて、その先「もっとこの作家さんを知りたい」と、そんな風に思った時にエッセイを手に取る。だから、作品から作品を渡り歩くような読書をするわたしは、なかなかエッセイにたどり着かない。
しかしだ、ここで言うことはなかったけれど、わたしは毎週土曜日はリアタイで「オードリーのオールナイトニッポン」を聴くほどのリトルトゥースだったりする。(※リトルトゥース=オードリーのオールナイトニッポンのラジオリスナー)
特に若林が大好きで、彼のものの見方や感じ方には、首肯しまくっている。
この作品を読むなら今しかない、と思った。
読みだしたらあっという間だった。そして、爆笑した。通勤電車で読んだらダメなやつだった。マスクをしていてよかった。かといって、「笑っちゃうから家で読もう」ができないくらいに、続きを読みたくて仕方なくて。読了後、様々なエッセイを検索して、本棚登録した。
社会や人に対する見方がとにかく斜め上からで、社会や人から見られる自分自身はとにかく自意識過剰。
芸人として下積みが長かった若林が、一気に売れたことでぶち当たる、社会人との距離感。社会の中にある「どうでもいい」「めんどくさい」慣習。下積み時代に芸人仲間といるコミュニティでは意識することのなかったことが、売れることで、意識しなければならないこととなる。例えば、目上の人に対するお酌や、言葉の選び方。
ただでさえ自意識過剰でネガティブで人見知りの若林が、社会人と関わりながら、少しずつ、社会というものに慣れようと足掻いていく、その軌跡。
刺さったフレーズを少しばかり。たまに独り言が挟まります。
P142「これまでぼくは起きもしないことを想像して恐怖し、目の前の楽しさや没頭を疎かにしてきたのではないか?(中略)ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ。」
→そうそう。スーパー落ち込んでる時に松岡修造見たって、全然元気でないもんね。
P148「みんなそれぞれに自分の感覚を信じているからこそ、そのプライドに対しては慎重に接しなければいけない。」
P156「時と場合で、自分の趣味や感覚を押し引きする。好きなものは好きでいいじゃない!そうはいかない。好きなものを好きでいるために、自分の感覚に正直でいるために場を選ぶのである。」
→これはグッときた。この作品で一番の名言かもしれない。
P165「ぼくの場合は我見からスタートして結局通念に着地する。で、全部ぼくの間違いでした。と反省する。そんなことがぼくの人生にはすごく多いのだ。」
→これはわたしの人生にもすごく多い(笑)お金より愛情だとか思ってたけど、やっぱりお金は大事。
P168「散歩しながらニルヴァーナを聴いても、公園のベンチで『ヒミズ』を読んでも以前のように心がざわつかない。ざわつかない代わりにぼくの心の真ん中には『穏やか』が横たわっている。」
→わかる。わたしも桜庭一樹さんの作品を読んでも以前のように心がざわつかない。でも、代わりに吉本ばななさんの作品を読んでしっくりくるようになった。
P180「状況がダメなのではなくて、状況をダメと捉えてしまうことがダメなのだ。」
P239「ぼくらのような人間は、ネガティブで考えすぎな性格のまま楽しく生きられるようにならなきゃいけないんですよ。」
P259「自分に自信がつくと、一人で生活ができる。一人で生活ができるようになってやっと人と付き合えるんだなってことに初めて気付いた。」
→ちょっとしたマインドフルネス!
P296「愛のない他罰をする人は自分を肯定できていない。」
とまあ、いくつか独り言とともにお送りさせていただきましたが、この、若林の気付きの部分に至るまでのエピソードや言い回しも本っっっ当に最高で!笑いをこらえきれないのです。そちらにもご注目!
今週はオールナイトニッポンがスペシャルウィークで、来月はこの作品の次に出版された作品「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」が、ついに文庫化!
もっともっと、エッセイを読もう。
いつもしかめっ面で読書をしがちなわたしですが、これからはもっともっと、本を読んで笑おう。 -
『この人、とがってるなー(笑)』と楽しんで読めました。
芸人・オードリー若林さんの初エッセイ。
著者のとがった視点から見る日常の描写が読みやすくて、おもしろい。
また、おもしろいだけでなく、本質を捉えていて、共感し、勇気をもらえた。
『仕事はジェットコースターみたいなもの。
わざわざ怖い思いをするために時間をかけて並ぶ。
絶叫しながら乗る。
二度と乗りたくないと思う。
でも、充実感がある。』
という言葉が1番心に響いた。
本作は著者の若き日々のストーリー。
続編の"ナナメの夕暮れ"は、成長しておじさんとなった著者のストーリーのようだ。
早く続きが読みたいです。 -
若林さんはテレビで見かけて「本好きなのかな?」と思う程度で、ラジオは聴いていない人の感想です。
オードリーとして売れてから数年のイメージ(この本を書いていた時期)では、人見知りで気難しい方だけど芸人として頑張っている方という印象でした。
最近では当時よりも素人の方に高圧的な絡み方をしたり、少し苦手な人になってしまっていた。何故かは分かりません。
「自意識過剰」としかいいようがない。
貧乏芸人から売れっ子芸人の狭間で感じたこと、過去の自分が現在の自分を苦しめる(芸人になったら苦手な食レポとか写真撮影が増える)って思わなかったのがよくわからなかった。
読むにつれ自意識過剰な人ほど、その分人が好きで人に認めてもらいたい欲求が強く、なんらかの表現をするようになる。また、子供の頃に見た芸人達の姿に憧れを持ち夢を追うことにしたことがわかった。
時間を効率的に使う「出来る人」と比較し自身の「時間を無駄にするのが好き」の話が出てきた…こうなると自意識過剰の私は「無駄にするのもそれはそれでいいよね派」を勝手に作り上げて、その派閥にも入りたくない気持ちになったりしてしまう。
読んでる私も自意識過剰なため、よくわからない部分と共感できる部分が混在している。
読んでから少しだけ変わったのは、現在の若林さんの見方である。
後半になるにつれ、だんだん考えるけれど「どっちでもいいや」と言う方向に向かっている。自分で考えて他人のすすめたことを拒絶するも、結果的にすすめられた方法の方が良かったりする話をしていたが、それが全てを表していると思う。だんだん"大人"になってきたと言うことなのか?
他人を評価することで優越感に浸る人が増えていると言う話があり、日頃からSNSを利用しているため自覚や理解をしてたが、前の好きだった若林さんに対して私は「人付き合いが苦手そうだけど芸能界でなんとかやってる人」として共感しつつ「自分はここまででは無い」と下に見て安心していたのでは無いか?と言うことに気付かされた。
社会に出た感覚が30歳だからこそ見えた景色を書いている。はやく売れていれば早まっただけのことなのかも。
俯瞰で捉えてるからこそ冷静に書き起こしていてすごい。そのせいか連載としてまとめようとしてる要素が小賢しいと本人も感じながら書いているようにも読めた。
ファンの方が読んでる方が多い本だからだろうか?人生の教本的な意見もある。エッセイではあるが、人生を学ぶ本ではないように思う。(自身もよくこんなことを考えることがあるので)人それぞれです。
ひとまずテレビで見る若林さんは、無理せず少しは楽になって楽しく過ごせてると言うことはなんとなくわかった。 -
売れて華やかな世界に行くと嬉しいだけではないんだ、苦労の方がが多いんだね。というのがわかりました。私は見る側だからそんな事はあまり思ってもなかったです。今までとはまったく違う世界に行くわけだからそうだよね。[社会人1年生]という表現は上手いなと思いました。みんなそれぞれの社会があって色々学び、1年生2年生と成長していくんだよね。としみじみしてしまいました。
ある一文が目に止まりました。「食レポで美味しくないのに美味しいと言わなければならない。」それに関しては、よく同僚と話してます。タレントさんが食べたときに開口一番「美味しい」と言う時は本当に美味しくて、食べていまいちの時は「美味しい」を言わなくて考えてコメントをする。これは私達が言っている説なので信憑性はないんですが、やっぱりね。と思ってしまいました。
私が気になるのは「人間関係不得意」の人です。今は2021年だけど、今はどうしてるんだろか?はがき職人を続けてるんだろうか?
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普段お笑いを見聞きしないので、意外なほど面白くて、本心というか人に見せない部分が私と合っているのか、読み進めやすかった。
文筆家さんかと思うくらい言葉のセンスやオチが上手いと感じたけど、言葉で勝負する人だから当然か。
無表情の若林さんがチラチラ浮かびながら読んだ。
笑顔より、そっちの方が好きかもしれない。 -
日テレドラマ「だが、情熱はある」にどハマり。
髙橋海人くんの演技が素晴らしすぎて、毎回エンディングが流れてやっと現実に戻されてお芝居だという事実に鳥肌が立つ。笑
ドラマを観つつこのエッセイを読むと、どれだけ忠実に再現されているかが明白になってより一層面白いです。
若林さんの感性でしか書けないエッセイ。
今まで読んだことのない唯一無二のタイプ。
けれど共感して、感動できる部分が沢山あるから凄いんだ。
「そんなことに注意しながら生きてたら、近頃よくわかんなくなってきた。今、楽しいのか?
目の前の人が言う意見に賛成なのか?反対なのか?」
私も社会人になって、社会の渦に巻き込まれて、社会に馴染もうとして自分の足りない部分をニセモノの固定観念で埋めたり、突出した個性を削ぎ落として“万人に受ける丁度いい人間”になろうとして、自分がどんな人間で何を好きで嫌いなのかが分からなくなった時期を思い出した。
きっと私だけじゃなくて、みんな同じように同じことでもがくんだろうな、と安心した。
「“確かじゃない”日常を過ごしながらも“確か”なものに死ぬまでに数多く出会いたいものである」
そうかー。“確かじゃない”日常で良いんだ。そこに“確かなもの”を無理くり探さなくて良いんだ。若林さんの出した結論に救われた自分がいた。
「でも、今はマラソンなんだ。マラソンにペース配分は必要不可欠だ。百メートルずつの結果に、全力で反芻していたらトータルで良いタイムがでないんだよ」
出会いたかった文章に出会えた。
職場復帰したら、反芻しよう。
これを書いた紙を社員証に挟んでおこうかな?笑
「楽しむってどうやるんだろう?コントローラーの操作方法を覚えていないんだから当然だ。
ゲームの操作を覚える途中でやめてしまうようなものだ」
「高級料理がとても美味しくて、こんなもの食えなくたってどうってことなくて。仕事が楽しくて、めんどくさくて。高い車の乗り心地がよくて、ただの鉄の塊で。とても幸せで、こんな筈じゃなくて。
想いはひとつじゃなくていいんだ」
「天才は「結果が全てだ」と言えばいい。自分にはそれは関係のないものなのだ。特にすごい訳じゃなく、特にダメじゃない。そんな自分の自己ベストを更新し続けていれば、「結果」があとからやってこようがこなかろうがいいじゃないか」 -
大人にも読んでほしいけど
思春期の子達にも読んでほしい
※エピソード[牡蠣の一生]の話はすごい説得力!!
その話をしたお爺ちゃんカッコいい!!
ものすごく良い本でした -
ブクログでこの本を知ってずっと気になっていた。
面白い!!この一言に尽きる。
この本は、お笑いコンビのオードリー、若林のエッセイである。
オードリーのネタなどを知っていなくても、若林ってこんな人なんだというのが分かるし、なによりも若林の世界観を堪能できる。ひねくれているが、その分素直で、読んでいて共感というかあーそういうの分かるというのがあった。 -
お笑いコンビ、オードリーの若林さんによるエッセイ。
若林さん、山月記の世界観だったらきっと虎になっているのではと思ってしまった。自意識の塊って感じのエッセイでした。
他社に傷つけられることを恐れ、自分を曲げることを否定し、社会との違和感に納得できず、傷ついていく自尊心、自己の内面を掘り下げ、変化に向き合い……本人にそんな気はないんでしょうが、何となく純文学主人公っぽい。
言葉選びや自己の内面の表現がうまくて、思わず笑ってしまう部分も多いですが、中二病が未だ完治してない身としては刺さる内容も多かったです。
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つい連想してしまった山月記も読んでほしい。青空文庫でも読めます。
→『山月記』/中島敦
最新エッセイにも出てきてて、やはりガツンときました。
最新エッセイにも出てきてて、やはりガツンときました。