D坂の殺人事件 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037133

感想・レビュー・書評

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  • 私は地獄の道化師が好きでした

  • はじめての江戸川乱歩。明智小五郎が、最初に登場した作品ということで興味を持って読み始めた。

    「D坂の殺人事件」
    短い内容でサクッと読める作品。
    面白かった。


    「二銭銅貨」
    唯一明智小五郎がでてこない作品。
    アイデアが面白かった。


    「何者」
    最後のどんでん返しが、、、


    「心理試験」
    探偵小説っぽくない心理合戦。ハマる人にはハマるだろうが、個人的にはあまり好きではなかった。


    「地獄の道化師」
    5作品の中で一番好きだった。誰が犯人なのか予想しながら読めて面白かった。
    人間の狂気を感じる怖い作品だった。

  • 人間の心理的な描写が正確に描かれており、出てくる人々は生き生きしていた。
    推理においても犯行理由を解き明かそうとする姿勢が強いように感じた。

  • あらすじ
    9月初旬、「私」はD坂の大通りにある白梅軒という常連の喫茶店でコーヒーをすすっていた。この店の向かいの古本屋にいる美人な女性を眺めることが目的の一つになっていたのだ。ある日この店で知り合いになった青年、明智小五郎が通りかかり、彼もこちらに気づいて店内に入ってくる。そこで2人で窓の外を眺めながら会話していた。しかしその日は目当ての美人は見当たらない。2人で古本屋へと入ると店の奥の部屋に古本屋の妻の死体があった。私が見たところロープで絞殺されたように見える。警察の捜査の結果、古本屋の主人のアリバイは証明されるが、死体が発見された部屋の出入り口はすべて見張られた状態にあり、いわゆる英米の探偵小説にある密室殺人であって捜査は難航する。

    普段小説は読まないが、表紙が「文豪ストレイドッグス」だったため惹かれて読むことにした。もともとミステリー系の話は好きだったこともあり楽しく読むことができた。まず面白いと思ったのは、アイスコーヒーを冷やしコーヒーと表記していたところだ。アイスコーヒーが飲まれ始めたのは大正時代で、その頃は冷やしコーヒーと呼ばれていたらしい。このような少しの表現にも時代をかんじられ、印象に残る単語が多かった。
    次に面白いと思ったのは人間のリアルな発言である。犯人の後姿を見たという学生の証言が大事なところでかみ合わなかったり、傷について聞かれ気まずそうにする主人。よくできたミステリーでは目撃者の意見がしっかりしていたりする。しかし現実で起きた際、そんな一瞬しか見えなかったことを覚えていられるだろうか。この作品ではそういう人間味のあることが多い。そして殺人事件の推理のパートが格段に面白いと感じた。私の推理を聞いた時、その時書かれていた証言、状況すべてを回収していた名推理だと思った。しかし、明智小五郎の心理を見て行われた推理、これがとても興味深いものであった。蕎麦屋の主人がサディストであるということ。また古本屋の女房はマゾヒストであるということ。これらを知ったとき、なぜ古本屋の女房と蕎麦屋の女房が傷だらけなのか、首を絞められているのに抵抗している痕跡がない理由もすべて納得することができた。今まで合わない性癖の人と過ごしていた二人が出会ってしまったことから、「傷つけてほしい」「傷つけたい」という欲望が爆発して今回の事件が起きてしまった。明智がこの真実を警察に言いずらいのは、被害者が存在しないためであった。殺された側も絞首を望み絞める側も悪気がなかったのだ。最後は蕎麦屋の主人が自首して終わるという結末であった。
    江戸川乱歩の作品はこのような人間の隠れた性癖を扱っている、非常に人間臭いが小説のような少し現実離れしているストーリーがいくつかあるため、もっといろんな作品を読みたいと思った。

  • この作品は、1925年(大正14年)に発表された江戸川乱歩の短編探偵小説である。また、江戸川乱歩が創作した代表的人物である名探偵明智小五郎が初登場した作品でもある。実際読んでみて、私が特に印象に残ったところは3つある。
    一つ目は、言葉だけで事件の様子が詳しく書かれていることで自分の中でイメージしやすかったため印象に残りやすかった。例えば、「女は荒い中形模様の湯衣を着て、殆ど仰向きに倒れている。併し、着物が膝の上の方までまくれて股がむき出しになっている位で、別に抵抗した様子はない。首の所は、よくは分らぬが、どうやら、絞められた跡が紫色になっているらしい」、「絞殺ですね。手でやられたのです。これ御覧なさい。この紫色になっているのが指の跡です。それから、この出血しているのは爪が当った箇所ですよ。拇指の痕が頸の右側についているのを見ると、右手でやったものですね。そうですね。恐らく死後一時間以上はたっていないでしょう。併し、無論もう蘇生の見込はありません」といった部分だ。
    二つ目は、この事件を一緒に解けるように読者に投げかけるところだ。本文でいうと、「この二人の学生の不思議な陳述は何を意味するか、鋭敏な読者は恐らくあることに気づかれたであろう。実は、私もそれに気附いたのだ。併し、裁判所や警察の人達は、この点について、余りに深く考えない様子だった」と述べている部分だ。この問いかけによって読者はどこに答えがあるのかをまた前のページに戻って探すきっかけになる。ただ読むだけでなく、このような問いかけがあることでまた同じ作品を二度楽しむことができると思った。
    三つ目は、他の作品を引用している所だ。例で挙げると、明智小五郎が江戸川乱歩に「君、これを読んだことがありますか、ミュンスターベルヒの『心理学と犯罪』という本ですが、この『錯覚』という章の冒頭を十行許り読んで御覧なさい」と言った場面にあったものだ。その『錯覚』の一部として、“嘗つて一つの自動車犯罪事件があった。法廷に於て、真実を申立てる旨宣誓した証人の一人は、問題の道路は全然乾燥してほこり立っていたと主張し、今一人の証人は、雨降りの挙句で、道路はぬかるんでいたと誓言した。一人は、問題の自動車は徐行していたともいい、他の一人は、あの様に早く走っている自動車を見たことがないと述べた。又前者は、その村道には二三人しか居なかったといい、後者は、男や女や子供の通行人が沢山あったと陳述した。この両人の証人は、共に尊敬すべき紳士で、事実を曲弁したとて、何の利益がある筈もない人々だった”と述べられていた。私は推理小説で他の作品を引用しているものを読んだことがなかったためすごく新鮮に感じたため印象に残りやすかった。

  • カドフェスの対象本のため購入。D坂の殺人事件を含む5編からなる短編集。江戸川乱歩の作品は読んでみたかったが、古典ミステリーということで手を出しづらかった。しかし、なぜ早く読まなかったのかと思うような作品だった。明智小五郎による推理は面白い視点から行われており、想像していたより緻密で引き込まれた。個人的には何者と地獄の道化師が好きだった。

  • 何者が1番好き

  • 2019.10.03

  • 「D坂の殺人事件」
    明智小五郎の初出。喫茶店にいた「私」と探偵小説好きの明智小五郎が話していると、向かいの古本屋で殺人事件が…
    「二銭銅貨」
    工場から大金が盗まれた。しかし捕まった泥棒は金の在りかを吐かない。
    世間が泥棒ネタでもちきりのところ、二人の若者が泥棒が残したと思われる暗号を見つけて…
    「何者」
    ある邸宅で発砲事件が発生。家の息子が足を打たれたが命は助かった。
    犯人探しが始まるが、犯人が侵入した窓の外の足跡は途中で不自然な位置で消えていた。
    「心理試験」
    秀才の学生が金目当てに老婆を殺した。
    犯人と探偵明智との頭脳・心理戦が面白い。
    「地獄の道化師」
    石膏像と殺人事件。そして背後に忍び寄る道化師。薄ら寒くて、狂人的な犯行に気味が悪いが、最後はなんとも言えない気持ちになった。

    二銭銅貨以外は明智小五郎が出てきて、少しずつ出世(笑)
    二銭銅貨と何者の終わり方が好きな感じ。
    二銭銅貨は読者に対してもいたずら心があり洒落てるな。
    江戸川乱歩はじめて読みましたが、自分は推理ものでもすかっとするものが好きなんだなとわかった。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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