娘役

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041038840

感想・レビュー・書評

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  • 宝塚の場面はとても良かったです。やくざパートは、他のやくざ小説と比べると、リアリティや迫力が足りない。
    でも、総じて、楽しめました。

  • 読み進めると結末は何となく想像がついてしまうのですが、それでも良い物語でした。

  • 宝塚の娘役のほたるとラインダンスで飛んで来た靴をきっかけに彼女のファンになった片桐のほぼ交錯しない物語に徹底した夢があって良い。男役達、娘役達のひたむきな日々と華やぎに引き込まれ、ファンとして見守る片桐やムッシュのヤクザな日常とは裏腹な無垢さも良かった。夢に生きられないヤクザの結末が悲しかった。

  •  この人の小説は、『白い薔薇の淵まで』と『感情教育』の2冊を読んだことがある。いずれも素晴らしかった。

     この最新作は、過去に読んだ2作の緊密な文体に比べると、肩の力を抜いて書いている印象だ。
     ただ、そのリラックスした感じは悪くないし、すこぶる読みやすい。

     ヒロインは、宝塚歌劇の娘役。そしてヒーローは、なんと“ヅカファンのヤクザ”というぶっ飛んだ設定である。
     その娘役・野火ほたると、彼女のファンになったヤクザ・片桐蛍太の、10年間に及ぶ物語。
     ほたるを中心とした宝塚の舞台裏と、片桐を中心としたヤクザの世界が、並行して描かれる。

     小林まことの『ホワッツマイケル』には、無類の猫好きであるヤクザの組長が、そのことを組員たちに知られまいとする様子が笑いを生むシリーズがあった。
     この小説にも、ヤクザが場違いなヅカファンの世界に入り込むことから生まれる“ギャップの笑い”が、随所にある。 

     その一方、映画『冬の華』を彷彿とさせる哀切さもある。
     あの映画で、高倉健演ずるヤクザは、自分が殺してしまったヤクザの娘(池上季実子)を、「あしながおじさん」と化して陰からそっと見守りつづける。
     同様に、片桐はヤクザとしての分を守り、女優としてのほたるをただ見守るだけで、それ以上近づこうとはしない。

     物語の中で2人が直接言葉を交わすのは、偶然からのたった一度だけ。2人は手さえ握ることなく、ほたるは最後まで片桐がヤクザだとは知らないままだ。ストイックでプラトニックなラブストーリーである。

     難を言えば、宝塚のパートにはリアリティがあるものの、ヤクザ同士の会話のやりとりなどにやや不自然さがある。作者がヤクザの世界のことを「にわか勉強」してそれ風に書いている感じで、いま一つ雰囲気が出ていないのだ(「そういうお前だって、宝塚の世界もヤクザの世界もよく知らないだろ」とツッコまれるかもしれないが、知らなくても、作者の知識レベルは行間から伝わるものなのだ)。

     とはいえ、それは全体からみれば小瑕で、なかなか面白い小説だった。

     宝塚の世界だけで通用する符牒が飛びかう会話を読んでいるだけで、門外漢の私には、そこはかとなくおかしい。
     たとえば――。

    「私は花男ひとすじ十五年、ウインクや投げキッスや腰振りに磨きをかけ、ひたすらエレガントにキザることに精魂傾けてきた人間です。(中略)男役は黙って黒燕尾、クサく、匂い立つようにクサく、黒燕尾のテールに至るまで流れるようにキザるべしと先輩方に叩き込まれて幾星霜、私はもはや花組でしか生きていけない体になりました」

     著者の宝塚シリーズ第一弾『男役』も読んでみよう。

  • 男役がより宝塚の内面を書いたなら、娘役は宝塚を支える外側を書いた話。

    なににおいても、エピソードやら芝居やらがこの話をモチーフにしてるのでは?とかもろもろ考えちゃうのは仕方ない。

    でも、今回はギリというヤクザもんが絡んできて
    まったく違ったファンタジー感激しい話に。
    こんなんあるわけない!と思いつつ、それでもなんだか一心にファンを続けるその思いに酷く心打たれる。

    そして最後は泣いてしまう。
    劇画のようなあるわけないやん!な訳だけど
    でも泣けるんです。

  • 宝塚の世界はわからないけれど、ヤクザの世界はもっとわからない。でも、こんな世界があるのかも、と思わせてくれる。それぞれの感情が鮮やかに伝わってきました。


    ラストは切なく、しかし美しく。
    映像が脳裏に浮かびあがりました。

  • 純粋に面白く読んだ。宝塚メインではなく任侠の話も多かったからかえって良かったのかも。「男役」読んだくらいで宝塚の事は無知だけど観てみたいなと思わされた。一生のうちに1度位見たいものです。
    最後やはりそうかという感じだったので、しょうがないんでしょうが…。また宝塚もの、書いていただきたいです。が、本来の中山さんのスタイルの本も読みたいなぁ。

  • 宝塚愛にあふれるいい作品でした。
    片桐さんがかっこいい!
    でも、ラストは絶対こうなる! と思った通りだったので、星は4つです。
    一番好きな場面は、片桐が泣いているほたるに寿司屋で出会って励ます場面。
    『男役』も読んだけれども、私は『娘役』の方が好き。
    実際の宝塚も結構娘役さんが好きだったりもするし。

    宝塚好きのヤクザという設定はファンタジーかもしれないが、あるとおもしろいな、と思ったりもした。
    こんなヤクザ、あったらいいな。

  • 宝塚と極道の縦社会をリンクさせている
    本物のジェンヌさんとかぶらないようにしてる為か、芸名がダサいのが面白い

  • シリーズ前作「男役」よりも、ファン目線の宝塚ファンタジー。私は前作の方が面白かった。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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