小説智恵子抄 (角川文庫 緑 45-5)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041045053

感想・レビュー・書評

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  • 佐藤春夫文学忌 1892.4.9-1964.5.6 春夫忌
    高村光太郎とは、肖像画も描いてもらう友人関係にあったようです。
    高村光太郎の詩集智恵子抄の詩と散文「智恵子の半生」「九十九里浜の初夏」「智恵子の切抜絵」を投影して、友人としての著者の目を通し、光太郎と智恵子の生涯を小説としたものです。
    “静寂の価” は、二人を紹介してで合わせ、やがて惹かれあい、愛しあっていく姿を丁重に追っていきます。詩では、“冬の目覚め”“人類の泉”“狂奔する牛”等が取り上げられています。
    光太郎の父親は彫刻家光雲。二人の結婚に全面的に賛成ではなかったものの、結婚の報告をして、光雲の準備した工房での生活が始まります。
    智恵子さんが、病弱とはいえ、まだ元気で、自転車に乗ったり、山に登ったり、絵を描いたりと、生き生きと動いています。
    “同棲同類”では、新生活を始めた二人ですが、生活は困窮が続きます。智恵子は自分の着物も生活費の為処分していきます。普段はセーターとズボンの様な軽装となります。そこで読まれた詩が“あなたはだんだんきれいになる”付属品を捨ててきれいになっていくという詩ですが、愛があれば装飾品は不要なんですかね。そう思うとこの詩は、悲しさがありますね。この二人の生活の困窮に加えて、智恵子の二本松の実家が火災や弟の散財等によりいよいよ駄目になります。心労が重なり智恵子さんの具合が悪くなっていきます。
    この工房は、東京の千駄木にあり、ある日智恵子が、森鷗外先生の家の前を通って東京の空を探しにいき、やはり見つからなかったという場面があり、そこに生活していたことが忍ばれます。
    最後は、精神病院に入院させての看病となりますが、二人は最後まで支え合っての生活でした。
    智恵子抄の詩を織り交ぜながら、詩だけでは理解できなかった場面を補い、最後まで二人を見守る様な小説でした。

    • おびのりさん
      異世界社畜も面白かったです。
      異世界社畜も面白かったです。
      2023/05/07
    • みんみんさん
      社畜無料分読んでみよ
      もうすぐ腰乃のオメガバース2巻が届きます
      超楽しみなの(〃ω〃)
      社畜無料分読んでみよ
      もうすぐ腰乃のオメガバース2巻が届きます
      超楽しみなの(〃ω〃)
      2023/05/07
    • おびのりさん
      最近、嫌なこと続いたので、佐々木と宮野で癒した。
      最近、嫌なこと続いたので、佐々木と宮野で癒した。
      2023/05/07
  • 2018/01/18-01/22

  • 臨川書店の全集第14巻で読んだ。

    『智恵子抄』初版に収録されている散文の、「智恵子の半生」「九十九里浜の初夏」「智恵子の切抜絵」を中編小説に書き直したような内容。折々に『智恵子抄』の詩が挟まれている。『智恵子抄』を読んだばかりだからかもしれないが、こちらよりも『智恵子抄』を読むほうが味が濃くて簡潔でいいように思った。

    ということで二人についての感想は『智恵子抄』と変わらず。本書については「春夫先生頼まれて書いたんですね」と思った。

  • 高村光太郎の詩集「智恵子抄」を小説化したもの。場面に応じて詩集の作品がいくつか引用されているので、そちらが未読でも問題なく読めた。

    光太郎と智恵子との夫婦生活が描かれている。知人の紹介による出逢いから、魂と肉体と2度の別れまでの軌跡。貧乏生活も愛の営みも一歩引いた視点から淡々と流れるように語られる。

    この作品はあくまでも詩集をもとにしたフィクションであるけれど、今は亡き仲睦まじい夫婦の残像を見ているようで少し哀しくなった。

  • (2003.02.06読了)(2003.01.16購入)
    (「MARC」データベースより)
    比類ない愛の詩集であり、痛切な人間精神のドキュメントである高村光太郎の詩集「智恵子抄」を基盤として、生涯至純の愛を貫いた光太郎と智恵子の物語が描かれる。実業之日本社1957年刊の再刊。

    ☆関連図書(既読)
    「智恵子抄」高村光太郎著、龍星閣、1941.08.20
    「智恵子抄」高村光太郎著、新潮文庫、1956.07.15

  • 先輩後輩の関係として光太郎が死ぬ昭和31年まで関係が続いていた佐藤春夫による小説。光太郎と智恵子の出会いから3年以上の恋愛期間、結婚生活と困窮する日々、智恵子の自殺未遂から精神病発病、そして7年間もの看病、昭和13年10月5日夜の智恵子の死。

    「いいえ!あれは空ではありません。ただの空間ではありませんか。空というのはあんなものではありませんの。犬吠の海よりももっと青くってきれいな底の知れないほど深いものなのです。そうね。上高地の梓川の水の深い淵になった所には、空にいくらか似たようなものがあったわ、でも空は東京にはどこにもありません。二本松の阿多多羅山の上にある澄みとおった青いものがわたしの言う空なのです」
    あれが阿多多羅山、あの光るのが阿武隈川。/
    かうやつて言葉すくなに坐つてゐると、うつとりねむるやうな頭の中に、ただ遠い世の松風ばかりが薄みどりに吹き渡ります。/この大きな冬のはじめの野山の中に、あなたと二人静かに燃えて手を組んでゐるよろこびを、下を見てゐるあの白い雲にかくすのは止しませう。 ・・・・・・ 続く ~樹下の二人

  • おれの魂をつかんでくれ
    おれの有り様を見つめてくれ
    「夜目遠目笠のうち」
    そればつかりは真平だ

    美しい夫婦愛

  • 儚い、
    もいっかい読みたいな

  • 智恵子と光太郎、あたしの理想の愛の形。

  • 多少虚構も混じっているとの作者談。
    でも、高村光太郎智恵子夫妻がこの世にいた、
    詩集の智恵子抄で見られた熱烈なまでの愛情を持った、
    そんな夫婦がいたのだとあらためて実感させられる一冊。
    この詩の背景にはこんなことがあったんだ、
    などとちょっと驚いたり。
    だもんで読むときは是非詩集の智恵子抄と一緒に。
    心臓が握りつぶされる思いがするはず。

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著者プロフィール

さとう・はるお
1892(明治25年)~ 1964(昭和39年)、日本の小説家、詩人。
中学時代から「明星」「趣味」などに歌を投稿。
中学卒業後、上京して生田長江、堀口大學と交わる。
大正2年、慶応義塾を中退、
大正6年、「西班牙犬の家」「病める薔薇」を発表し、
作家として出発。
「田園の憂鬱」「お絹とその兄弟」「都会の憂鬱」などを
発表する一方、10年には「殉情詩集」、14年「戦線詩集」を刊行。
17年「芬夷行」で菊池寛賞を受賞。23年、芸術院会員となり、
27年「佐藤春夫全詩集」で、29年「晶子曼陀羅」で
それぞれ読売文学賞を受賞し、35年には文化勲章受章。
小説、詩、評論、随筆と幅広く活躍。

「2018年 『奇妙な小話 佐藤春夫 ノンシャラン幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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