鹿の王 3 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.14
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本棚登録 : 3825
感想 : 201
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041055090

感想・レビュー・書評

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  • アカファ王やアカファの複数の氏族の想いが明かされて行く。
    ヴァンは、ずいぶんと複雑な事情の渦に知らぬ間に巻き込まれているようだということが、この巻で見えてきた。
    マコウカンの出身氏族と近隣氏族の歴史や暮らしが、どう変化して来たのかも明かされる。
    そして新薬開発に大きなヒントをホッサルが得る。
    非常に展開が早いが、物語の構成がしっかりしていて、細部まで手抜かりなく描かれているので、映画を観ているように映像が浮かびながら一気に読むことが出来た。面白い。
    そしてこの作者はやっぱり凄いと痛感する。

  • うおわ。
    西加奈子の解説にもミクロとマクロが使われていて、ちょっと恥ずかしい。

    さて、後半戦。

    黒狼と山犬を掛けて生まれた「キンマの犬」を使役していたのは、火馬の民であった。
    彼らは、暖かな平地でしか育たない火馬が、寒冷地に追いやられることによって痩せ衰えてゆくことに憤りを覚える。
    もう一度、東乎瑠から自分たちの故郷を取り返すために犬に襲わせる。

    一方で、アカファ王国はもはや東乎瑠なくしては成り立たないほどに「変化」していた。
    また、黒狼病はアカファ人であっても無害ではない。結局、火馬の民を一時は野放しにしておきながら、ここに来て手の平を返すことになる。

    「長い戦を経て……多くの血を流して、ようやく得た均衡ですから」

    複雑に絡み合い、変質し終えた状態を、元どおりに分離させることは、容易ではない。
    けれど、人間はそれを心で受け容れられない。
    まるで、病を治すために神意に背くことを拒絶するかのように。
    それを、古い考えだと一蹴することが出来るだろうか。
    例えば、理解を得られたとしても、事実が救いにはならないのだろう。

  •  幼いユナを追うヴァンは、ついにホッサルと出会い、謎の病の秘密が少しずつ明らかになっていく。

     1,2巻続けて読み終わり、この3巻が出てくるのがとても待ち遠しかったです。

     前巻まで追われる者ヴァンと追うものホッサルの物語がそれぞれ進んでいましたが、この巻でやっとこの二人が出会うことで、物語のスケールがさらに大きくなった感じがしました。

     独特の世界なのに、今のこの社会の矛盾を映し出しているかのようで、自分を取り巻く世界と比べながら考えさせられました。

     次巻の結末がとても気になってしょうがありません。

  • 再読。

    ついに犬たちの正体。
    犬たちを遣わした人々。
    2巻でホッサルたちが辿り着こうとしているところが明確になりました。

    追い詰められた人の狂気。
    初めは被害者であっても、意思を持って仇をなそうとすれば加害者になってしまうこと。
    科学の時代ではない(科学の思考のない)人の、宗教観・思想の偏り。
    なんだか最近聞いたような構図で浮かび上がってくる怖さ。
    この怖さをヴァンは「妄執」と呼びました。

    そう思っていても、その妄執を正義だと妄信している者の気持ちに浸かってしまえば、同調もできてしまう。

    それぞれの立場があって、いろんな国、戦、そこに生きる人、支配者、そういうものの中で、登場人物達の位置付けと動かし方に3巻目でまた深さを感じます。

    それぞれがそれぞれに、自分の立場の中で、自分にできることをするしかない。
    自分にできることに一生懸命になるしかない。
    それを感じました。

    ↓ネタバレ

    p.150
    ヴァンの言葉
    「……戦は」
    「自らの手を汚してやるものだ。おのれの身の丈で……おのれの手が届くところで」

    妄執に取り憑かれた人の気持ちを理解しつつ、共感もしつつ、またそこに近しい人がいたにも関わらず、やはりヴァンは強かった。
    身の丈に合った行動をすること。
    ヴァンは足るを知る人物だからこそ、自信を持ちすべき事を見失わないんだろうな。

  • 自分は飽き性であるが、この作品とハリーポッターは継続できる。

  • 起承転結の転に当たる3巻!
    物語が一気に動きました!!
    様々な思惑がぶつかり合い、多くの者がそれに翻弄されています。
    大国が小国を侵略すれば、恨みを募らせる者が生まれるのは仕方の無いことなのでしょう。
    しかし、恨みの矛先を罪のない市民に向けるのは間違っていると思います。
    「この国のトップが行う政治がムカつくから、この国民は全員許せない」とか言うのって、現代でも時々見られる光景ですね。
    短絡的思考は視野を狭くさせます。危険です。
    次が最終巻。
    恨みを吹き飛ばすような希望の光が降り注ぎますように。

  • 文庫版は全4巻構成なのでそれぞれちょうど起承転結の位置付けといった感じで、本巻は「転」。これまでバラバラに進んでいた登場人物たちが結び付いて一気に盛り上がって参りました。序盤で予想していたよりずっと複雑に各勢力、個々人の思惑と行動が絡んでいてものすごく面白い。

  • 物語が進み始めた感じの3巻、あっというまに読んでしまった。敵味方がはっきりしないような、微妙で複雑な登場人物同士の関わりが面白い。

  • 国や部族間の思惑、善悪が露わになってきて入り乱れる。それぞれの想いを見ると、何が悪いと一概に言えない。読みながら、思わず考えてしまった。どうすれば、平和に安心して皆が暮らせるのか?

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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