宮廷神官物語 三 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.13
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本棚登録 : 591
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041067611

感想・レビュー・書評

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  • 今回の物語も、とても読みやすい内容でした。
    受け入れやすく、わかりやすい、それがこのシリーズのいいところですね。
    もっと重々しい内容が好きな方にはライトすぎる部分もあると思いますが、テーマになることには、考えさせられることがたくさんあります。


    ここからネタバレです。

    拐かされた天青が、隷民街で、民の現状を知り、自分ができることとして濾過桶を必死で作ること。
    鶏冠が隷民街の子供たちに施しをしていること。

    違う立場、違う状況で行っている行動が、とても似ているように感じ、
    2巻で、2人が「似ている」と2度言われることがあったけど、今回は行動としてそれが感じられました。

    『違う立場』であるからこそ、周りからの目線は違っていたりもして、そこに大人になることや権力や妬みなどの縮図も感じてしまいました。

    どちらも「自分ができることを」「他意なく」「心からの(本人は善意であると意識していない)善意として」行っていることです。

    読者は2人の性格を知っているし、離れた場所で見ているから、2人の行動をただ好ましく思います。

    例えばこんな2人が現実世界にいたとしたら、それを好ましく受け取れる人がどれだけいるだろう?

    鶏冠の周りの他の神官のように、陰口を叩いてしまう人はどれだけいるだろう?
    その善意が、何か裏がある行動だと捉えたり、妬ましさから穿った考えで評価したり。
    残念ながら、そういう人が世の中にはいる。

    そして、行動をする場合にも、天青や鶏冠のように、「自分ができることを」「他意なく」「心からの(本人は善意であると意識していない)善意として」行うことができる人って、どれだけいるのだろう?

    私自身でも、他意なく相手の気持ちを考えて行った行動に対して、偽善だと言われることが何度かありました。


    『偽善』と言えば、
    真心から行動した天青や鶏冠のこれらの行動に対して、
    藍昌王子が貴族に穀倉を開かせる命令を発布したことに関して…

    その中で、笙玲の父である桑慶義は『当然として受け入れるだろう』と王子自身も言っており、それは受け身での善意の行為ではあるけど、偽善ではありません。
    反対に、側室・蝶衣の祖父である景羅は、『穀倉開きの発令を試している』と見抜き行動しています。
    (描写はありませんが)、それにより景羅が穀倉を開くことは偽善でしかありません。

    困窮した民から見れば、桑慶義が穀倉開きすることも、景羅が穀倉開きすることも、同じ「穀倉開き」で優劣がつかない事実なんですよね。



    そのような『善意』に関するそれぞれの違いを感じた今作ですが、『なりすます』に関しても3つの差が楽しかったです。

    鶏冠がまたも女装を披露したのは、毎回女装ネタがあるのはちょっとチープになりすぎないか?とは思いながらも、ファン心理としてはウキウキするものがありました。
    話が進むにつれ、鶏冠は天青の姉に『なりすまし』、天青は笙玲に『なりすまし』、櫻藍は慧眼児に『なりすまし』。

    その対比が、重たいテーマの中でメリハリになってました。


    さて、そんな対比や物語のメリハリがあり、1冊もさほど長くないので分かりやすい構成で楽しく読んだ1冊ですが、ラストでまたまた分かりやすい悪者の登場。

    正体は明かされることなく登場しましたが、この1冊を読んだ人は賢母ではないかしら?と想像してしまいますよね。
    引き続きのシリーズが楽しみです。

  • 神話の世界は楽しくて何時までも浸りたい
    今度のムチャブリは「雨ごい」でした

    実朝なら
    時によりすぐれば民の嘆きなり
    八大龍王雨やめたまへ

  • 記録

  • 天青は書生たちにも溶け込んで学生を満喫。
    というか周りが感化されて腕白小僧だらけになっている。
    常に感情を表にださず神官らしい佇まいだった鶏冠も感化されて完全におかん。
    そんな不自由のない暮らしに慣れた天青は、水不足の深刻さをわかっていなかった。
    一番最下層の者たちが住む場所で見た現実。
    天青の伸びやかな成長が可愛らしく、実は感情豊かで情が深い鶏冠と、頼り甲斐のある曹鉄とのやり取りも良い。
    彼らを包囲するように悪意が忍び寄ってくるようで不穏。
    ところで蝶衣麗人は第一側室らしい。
    麗人のままなので妃の称号に身分はあっても位ではないのだな。

  • 性根の腐った高貴な方々は、いっそ雨なんか降らなきゃいいと思ってたんでしょうね。

  • 相変わらずいいすね。

  • 2.3と一気読み。天青もなんですが鶏冠の真っ直ぐさが胸に刺さる。
    本当に綺麗なのでどうか幸せになってもらいたい。
    周りの人達が皆自分の利益のためだけに生きていて、真っ直ぐな人が辛い目にあうのが苦しい。

  • 鶏冠の授業で電車の中だというのに泣きそうになるくらい感動してすぐ、あからさまに不穏な会話が。誰がなにをしようとしてるんですか気になる。
    畳み掛けるように事件がいっぱい起こって、それぞれがなんとなく良い方向に向かっているようだっただけに不意をつかれた。次巻も楽しみ。

  • 宮中の駆け引きが、めちゃめちゃ不穏に動きが本格化して来てる。伏線が結構散りばめられてる感がひしひしとする。

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著者プロフィール

東京都出身。おもにライトノベルにて活躍する気鋭。代表作は「カブキブ!」シリーズ、「魚住くん」シリーズ(角川文庫)、「妖き庵夜話」シリーズ(角川ホラー文庫)、「宮廷神官物語」シリーズ(角川書店ビーンズ文庫)など。榎田尤利名義でも著書多数。

「2023年 『妖奇庵夜話 千の波 万の波』 で使われていた紹介文から引用しています。」

榎田ユウリの作品

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